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書庫冷凍 (ショートショート)

ルカは多作で起きている時間は全て創作にあてていた。昔はありとあらゆる文学賞に応募していたが今はもうできない。ルカが電子版の上で次々と生み出し、そして紡ぎ出す文字なるものはこの宇宙上で解読できるものは誰もいない。また解読しようとする人も、ルカの思考に寄り添おうとする人もいなかった。

ただ1人生き残った地球人として、また狂わないようにそして地球で育ったものとして残しておきたい文化を死ぬまで記録しようと決めていた。作風は地球への慈愛と追慕だ。

ルカは一冊書き上げるごとに電子版の上で本の体裁にしてそれを電子版の奥深くに凍結させていく。いつか誰かにこの思いを届けてもらうために。

ルカは文字でできたお人形を自ら造り電子版の待ち受けにして慰めていた。その姿もルカが吐き出す文字もオブジェの1つとして宇宙往来のポスターに描かれるがとうの昔に自らの地球民同士の諍いで水爆でもって滅んだ地球民を誰も見返らなかったし研究対象にもしなかった。

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ふじたごうらこ
ありがとうございます。