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13.ホットケーキは幸福の食べもの
息抜きに喫茶店にやってきた。
(昔からずっと家にいると息苦しくなり、あてもなく出掛けたり散策する癖がある)電車で20分、駅近のよくあるチェーン店の喫茶店。ここはホットケーキが有名で美味しく、以前、朝食に二段重ねのものを食べたことがあり、昔ながらのシンプルで上品な「THE ホットケーキ」といった素晴らしいものだった。
数年前、ハワイ風のパンケーキといい、生クリームやチョコレートソースがもりもりにトッピングされたものが流行った。元々、私は生クリームがあまり得意でなかったので自ら足を運ぶことはなかったが、パンケーキ専門店というのが増えたことを覚えている。それらに分類されるパンケーキは、激しいトッピングやフルーツで彩りも華やかで、カロリー&ボリュームも爆弾級、いかにも甘党女性やスイーツ好きな人の"ご褒美"といった印象。テレビでもよく取り上げられ、画面越しでも甘さが伝わってきそうな力を持っていた。
同時期、天邪鬼な私はその反動か、古風で控えめな昔ながらのホットケーキに惹かれた。パンケーキが脚光を浴びているその影で、自己主張をせず、いつも通りの暮らしを営むようなホットケーキが愛らしく感じたものだった。
お店によりホットケーキの種類も様々。私はやっぱり四角のバターにはちみつかメープルシロップをとろん、とかけて頂くものが大好き。たまにプレートの端にサワークリームが添えてあれば、ナイフでそっと塗って口に運ぶのもよい。
なによりホットケーキの匂いが好きで、幼い頃に母がホットケーキミックスを使って焼いてくれたことを思い出す。フライパンでの焼き加減は難しく、お店のように均一で綺麗なこんがり感は出ない。ムラのある焼き加減、厚さも満足な程ではないが、焼き上がった生地からふわっと昇る匂いを嗅ぐと、堪らなく幸福な気持ちになった。
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こんな記事を書いていたらホットケーキが食べたくなってきた。せっかく今、喫茶店にいるのに今日はカフェオレしか注文せず、後悔。隣の大学生風な男性はサンドイッチを食べてる。ちょっとの間の息抜きでした。さ、帰ろう。
おわり
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