小短歌集「キャスター」
甘さとは、時を忘れ快楽のドブに身を沈めることだ。過去も未来もいったん放棄し、ただ、退廃的な甘さを貪る。タバコという娯楽もまた、その一つだ。バニラ味の甘いキャスターは、どこか、娼婦の様に着飾った、ブロンドの少女を連想させる。タバコを吸う少女のいたいけさと、バニラ味の甘さを歌に込めた。タバコ吸う人、やっぱ、かっこいい。
バニラ味の 憂鬱掃き出し 永遠を貪る 1ldkの日々
名もなき 日々 送り朽ちゆく勇気も無く 吐き出すキャスターただ甘くって
身を壊す労働を終え眠りにつく数分前に吐き出すキャスター
ネオンの光久方ぶり見てため息つくそれから吐き出すキャスター甘くて
泣く子を見て見下し見る我吐出ししキャスターの煙見て黙る子ら
身を裂きて口銭得る度胸無き我吐き出すキャスターただ甘くって
朽ち老い行く我を心に描きて吐くキャスターの甘さただ甘くって
優しき友柔らかき肉を抱き眠る彼女の吸いたるキャスター咥えて
臆病者演じる我は臆病で一人吸うたばこ甘きキャスター
僕の手で叩けば壊れる脆き君吐くキャスターの煙は苦い
甘たるいジャズの音色と僕が知らぬ君が吐く甘きキャスターの甘さ
バニラ味のキャスターの甘い煙吐く唇の赤は毒を含みて
夜明けごろ薄闇の下君が吐く甘いキャスターも僕には苦い
愛情と感じたよママ僕に吐くバニラ味する甘いキャスター
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