読書ノート 「プラトン ティマイオス/クリティアス」 岸見一郎訳
プラトン後期の幻の三部作「ティマイオス」「クリティアス」「ヘルモクラテス」。「ティマイオス」は書かれたものの、「クリティアス」は未完、「ヘルモクラテス」に至っては書かれることがなかった。アリストテレスが特に重要視した「クリティアス」は、宇宙・自然・自然科学についてプラトンの思想の核を描き出す。幻のアトランティス島についての記述が書かれた「クリティアス」も、古代を知る大きなヒントとなる。
では断片・フラグメントを集めていこう。
「構築者は宇宙に、それにふさわしいもの、同類の形を与えた。構築者は、それを中心から端までの距離があらゆる方向に等しく球形に丸く仕上げた。これはあらゆる形の中でもっとも完結し、自分に最も似ているのだが、似ている方が似ていないのよりもはるかに美しいと考えて、丸く仕上げたのである」
「神は、分割できず常に同一を保つ『有』と、他方、身体(物質)において生じる分割できる『有』の間に、その両者を混ぜ合わせて第三の種類の『有』を作り、さらに『同』と『異』の本性についても同様に、それらのうちの不可分なものと物体において生じる分割可能なものとの中間に(第三種の混合物を)構築した。そして、この三つ(第三種の有、同、異)を取り上げると混ぜ合わせて、すべてを一つのもの(魂)とした。
不可分の有(イデア)
「神は、永遠を写す何か動く似像を作ろうと考えて、宇宙を秩序づけるのと同時に、一つのうちに静止している永遠を写す、数に即して動く不滅のその似像を作った。この似像を我々は『時間』と名づけたのである」
いつもあり滅びることのない「コーラ」(場)
四元素…火・土・水・空気
(『クリティアス』アトランティス島について)「ポセイドンの本性が、十分力のあるものであった間は、彼らはもろもろの掟に従い、神に縁あるものに対して好意的な態度をとってきた。彼らは思慮深く穏やかであったからである。徳以外のあらゆるものを軽視し、富ゆえの贅沢に酔って自制心を失い、躓くというようなことはなかった。富を熱心に追求すると、かえって財そのものを減らすばかりか、それとともに徳までも滅ぼしてしまうことを鋭く見抜いていたのである。
しかし彼らに宿る神の性の割合が、死すべきものとの多くの度重なる混交によって減り始め、人間の性が優位を占めてくると、ふるまいは見苦しくなり、貴重なもののなかから最も大切なもの(徳)を失ってしまったので、彼らは恥ずべきものに映るようになってしまった。これを見てゼウスは、彼らに罰を与えようとした…」
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