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さっきの話

恋愛映画を見るたびに思い出す人がいる。それは元彼…ではなく、元何だかイイ感じの人だ。よく連絡を取り合っていた頃、映画を見ては感想を送りあっていたからか、場内の照明が戻ると彼のことを考える体質になっている。数年が経ってもパブロフの犬のごとく、厄介な癖は治らない。

松居監督の『ちょっと思い出しただけ』を見た。
今回はエンドロールを迎えずして、彼のことを考えた。照生くんと葉ちゃんは付き合っていたけれど、私たちは付き合っていない。でも、思い出せば恥ずかしくなることばかりで早送りしたくなる眩しい時間は確かにあった、と月並みに思った。

私たちのイイ感じはだらだらと続き、次第にすれ違いが増え、他のイイ感じを見つけた頃にあっさりと終了した。終了もなにも始まっていないけれど、それでもだらだらを打ち切るためだけに、心の看板にデカデカとこれにて終了と書いた。

無理やり打ち切った恋はそこかしこに足跡を残しまくって、ちょっとどころか今でもしょっちゅう思い出してしまう。むしろ忘れる暇もないから思い出すにも至らない。一時期はやたらとインスタのおすすめ欄に出てくる暫定彼の恋人に悩まされた。インスタやらない女が好きって言ったのに、今の彼女、自撮りあげまくってるじゃん。イイ感じの人基準で生きていた恋する私はインスタを控えてたのに。まったくもう、本当に愚かで愛おしくて笑ってしまう。判断基準を他人に委ねるなんて、普段は絶対しないのに。本当に好きだったんだな。恋は盲目とはよく言ったものだ。

こうやって文字に起こしていると、また思い出すきっかけを増やしてしまう。でも今日はなんだか余計なことまで話したい気持ちだ。劇中、突然大好きな曲が聴こえてきた時には驚いた。過去に遡るほど未練を感じる曲が流れることが印象的で、擦り切れるほど聴いてきた曲にも新たな魅力を感じた。

今はね、それなりにね、幸せに暮らしてるの。
これは葉ちゃんの言葉であり、照生くんの言葉であり、そして私から彼に伝えたい言葉でもある。

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