ドールお迎え録前日譚――ドールは現実を拡張する
趣味人の中にはドールさんやぬいぐるみさんと暮らしている方がいますよね。
SNSにはドールさんとの生活、あるいはドールさんたち自身の生活を写真に撮ってアップしている方々も多く見かけます。
私もそういうドールさん・ぬいぐるみさんのストーリーを感じる写真を観て楽しんでいる人間です。
一方で、私自身はこれまで対象年齢が高いドールさんをお迎えしたことがありませんでした。
動物やファンシーキャラを象ったぬいぐるみさんは幼少時から沢山家におり、今も稀に増えています。
でもその子たちは愛らしさによる目の保養、ふわもこさによる手の保養の役割こそ担っていますが、どこまでもインテリアとして存在しており『生活を共にしている』付き合い方はしていない、と自分では思っています。
ドールさんのいる生活に興味は持ちつつも、実際にお迎えするほどの動機はない。
私は長らくそんなスタンスでしたが、つい先日、大人の趣味の一環として造られたドールさんをお迎えする決意をしました。
今回はその経緯についてお話します。
また、今回はお迎えしなかった製品、主題ではないけれど実名を挙げた製品も含め、どの製品も見下げる意図はないことを始めに宣言しておきます。
一人目のドールお迎えに至る切っ掛け
幼少時に与えられたリカちゃんやバービーさんの人形とは違い(彼女らも大人のユーザーに向けた作品を備えていることは存じていますが、ここではあくまで子供の着せ替え人形の代名詞として挙げています)、大人に向けた高級な着せ替え人形がある。
そのジャンルの存在と共に知ったのは『スーパードルフィー』でした。
三次元の人間から美しさだけを抽出して結晶化させたかのような、あるいは少女漫画の美学を三次元に投影したかのような精巧な人造の美。
目を奪われました。
彼らの存在を知った時からほのかな興味を持ち、時折彼らをお迎えした方々のレポートを読むなどしていました。
そしてスーパードルフィーには『フルチョイス』というサービスがあることを知りました。
理想のパーツを組み合わせた、自分が自分に送る、世界でただ一つのお人形。
これは惹かれる。いつか高級ドールさんをお迎えすることがあるならフルチョイスのスーパードルフィーが良い。
そう、ただうっすらと思っているだけの状態が何年も続きました。
状況が変わる切っ掛けはとある方からの頼みでした。
その方は新潟県外在住なのですが、これから発売されるあるドールさんを求めているとのことでした。
具体的にはこちらの『ショコラ―ラ』ちゃん(シュガーカップス)です。以下、ショップ様がご紹介している記事を貼り付けます。
何だこの可愛さ!?
彼女の存在をこの時初めて知りましたが、その名に相応しい甘やかな純真さ。愛おしさという概念がそのまま少女の形として顕現したかのよう。
ぎゅっと抱きしめたいような、私如きが抱きしめてはいけないような。触れれば崩れてしまうのではないかというような繊細な姿、誰が触れようが決して侵せないと思わせられる清らかさ。
こんなに可愛いドールさんたちがこの世界には沢山いるんだ。これまでもドールさんたちは私の認識世界の外側で生まれ続け、愛され続けていたんだ。
それを意識した時、多分私は初めて心からドールに興味を向けることができたのです。
そんな彼女をお迎えする権利を巡る抽選会が新潟県内のドールショップで実施されるので、そこに参加してほしい……というのがお願いの内容でした。
この方には多大な恩があります。具体的には新潟県で放送していないアニメをビデオに録画してもらったりなど(そう、ビデオ。つまりだいぶ年季の入った恩ということ)。というかこれまで付き合いを続けていてくれたこと自体が恩です。
その方に『新潟に住んでるからこそ返せる恩がある』だなんて、これまで想像もしませんでした。これは絶対に受けなければならない、是非請け負いたいお願いです。
抽選を行うというお店はこちら、『るちゃどぉる』様。
こちらのお店、足を運んだことこそないものの、実は存在自体は少し前から知っていました。
というのも、noteのお勧め記事にこのるちゃどぉる様のアカウントの記事が表示されたことがあるからです。
その時は記事を興味深く読みこそしましたが、何しろその時はドールさんのお迎えを現実的に検討はしてはいませんでした。なので「新潟にも専門店があるんだ」と驚くのみで、そこから深掘りはしていませんでした。
サイトにもアクセスしたことがなかったのですが……この依頼を切っ掛けに、初めてこちらのお店の通販サイトにアクセスしてみることに。
当時は2024年2月の初め。ショコラ―ラちゃん以外にも(彼女はネットショップ上では売り切れになっていましたが)複数のドールさんの予約を受け付けている時期でした。
そこで私は彼女に出会ってしまったのです……。
こちらの『ふるる』ちゃん(アイリスコレクトプチ)です。
何だこの可愛さ!?
猫耳・尻尾とお顔の愛らしさは当然ながら清楚かつ幻想的な、なおかつ高級感あるお召し物。
そこに惹かれたのは大前提として、もう一段強く心を掴まれた決定的な要素が『神官見習い』という設定でした。
同じ姿でも、これで学生とかアーティストなどというような設定文が添えられていたならばまた印象は異なっていただろうと感じます。
聖職者は現実世界にもいらっしゃいますが、神官、と表現すると一段と幻想世界の住人感が増します(個人の感想です)。
猫耳で神官。二重の幻想要素。猫の愛らしさ、神官としての聖性、それらを包摂する清らかな気高さと無垢さ。……すっかり参ってしまいました。
しろねことくろねこの二つの姿がありましたが、私はしろねこバージョンにより強く惹かれました。清純さがより一層感じられたんですね。くろねこバージョンもコク深くリッチでとても魅力的なのですが!
……お迎えしようかな、という念が湧くのに時間は全然かかりませんでした。
ですが即決でポチりはしませんでした。それは金額が云々以前に、他の魅力的な子との間で迷ったためです。流石に一気に複数お迎えはどうなんだろう……と思って。
こちらの『ゆずは』ちゃんと迷った挙句、数日自分の感情を様子見しました。
そして私は決断的にしろねこふるるちゃんの予約を申し込んだのです。
決め手……どちらの子により惹かれるか? という命題以前の条件的な面での決め手はサイズ感と体の作りです。本格的なドールさんをお迎えするにあたり、ある程度の存在感、要するに大きさを備えた子をお迎えしたいという希望があったこと。髪型(ウィッグ)や瞳を入れ替えてイメチェンできる余地があること。これらがふるるちゃんを選んだ決め手です。
ふるるちゃんは色合い・髪型含めたトータルコーディネートに惚れたので、髪型や瞳をいじらなくても別にいいかなぁとも思いはするのですが、こういうドールさんをお迎えするならそういったイメチェン遊びも試せる体の子がいいなとの思いが元々あったんですよね。
ここまでが抽選会前の話です。
初めてのドール専門店での幸せな遭遇
抽選会の当日、初めてのるちゃどぉる様実店舗への訪問。お店の方にショコラ―ラちゃんの抽選会に参加したいと申し出ます。
でも……私はショコラ―ラちゃんを私自身の家族に迎えるために志願したのではありません。転売で利益を得ることは誓ってしませんが、それでも横流しと言ってしまえばその通りです。その負い目があったので、人に頼まれて参加したという旨を抽選前にお店の方に伝えました。それでも快く抽選参加を許可していただけ、その上で公平に抽選をしていただけました。
結果は落選。繰り返しますが、非常に公平な条件の下での抽選の結果です。依頼者さんの恩に報えなかったのは残念ですが、ショコラ―ラちゃんが彼女に相応しい環境でたっぷり愛されますように。
抽選会終了後、お店の方に白いふるるちゃんを予約したと伝えたら、ふるるちゃんに丁度良い服やウィッグ、手のパーツなどについてや、ドール本体の扱い方や保管の注意事項などなど……スタッフ様のみならず、いらしていた他のお客様からも色々と、詳しく、優しく教えていただけました!! これが本当に嬉しく、ありがたかったです。温かい場所だなぁ。
そんな感じで長く話し込んだ末、ふるるちゃんのためのセカンド衣装セット(巫女さん服)、小物などいくつかをお買い上げしました。この時はちょうどくじ引きも開催されていたので、それによってアクセサリーもゲットすることができました。
こうして幸福なドール界隈とのファーストコンタクトを済ませた私。あとはふるるちゃんのお迎え日(7月下旬)を待つだけ……。
だけ…………。
……待てなかったんだなぁ。
そして二人目へ……
るちゃどぉる様のnote記事や通販サイトを眺めていたら、第一のお迎え候補には入れていなかったものの、可愛いなぁとはひしひしと感じていた、とあるドールさんへの注目度が私の中でぐんぐん上がってきちゃいまして。
その子がこちら『チピィ』ちゃん(ミミ―ガーデン博物誌)です。
ケモ耳系では猫などに比べると少しレアなネズミ耳。複数ある表情パーツのどれもが可愛く、1/12スケールのサイズ感はお花と並ぶと文句なく妖精のよう。
そしてホイッスルや懐中時計などの小物まで精巧なファンタジー鉄道員服!! スチームパンク風というのか、近代風というのか。かちっと感と両立したガーリーさ。トロッコ鉄道の車掌さんという設定だそうですね。
……あれ、私、ファンタジー制服フェチなのかな?
とにかく、要約すると何だこの可愛さ!? ということですね。
小さいドールもいいなぁ。ってかチピィちゃんいいなぁ。という思いは日に日に増していきました。
ですが私はもうふるるちゃんをお迎えすると決断しお支払いもしたのです。お迎えしたとて、ふるるちゃんを迎えるまでの『つなぎ』扱いになりはしないか? 両ドールさんへの敬意を末永く持ち続け、平等に愛し続けられるのか?
そう自問自答し、一旦は見送ると決めました。そして何事もなく予約受付期間は終了していきました。
しかし締め切りの数日後、何気なくるちゃどぉる様の通販サイトを覗くと……何故かチピィちゃんの購入枠が1枠残っている!?
見送るという決意はいとも簡単に揺らぎました。こういうドールさんは発売時の機会を逃すともう出会えない子も多いと聞いています。
これが最後のご縁のチャンスだ!
そう信じて、半ば衝動的に申し込みました。もしかしたらネットショップからの下げ忘れでページが残っていたのかもしれない。予約期間は過ぎているし、受付不可と言われたらすっぱり諦めよう。
このようにも思っていましたが、ありがたいことに、快く申し込みは受理していただけたので、ウッキウキで入金しました。
お迎え予定は2月末です。一緒にお花を観に行こうね。スイカゲームもしようね。
チピィちゃんがどんどん気になっていったのは(素敵なサンプル写真を目にしたという大きな要因を除くと)一人目としてふるるちゃんをお迎えすると決めたからこその心の動きだと自分では思っています。
前述の通り、私は本格的なドールさんをお迎えするならある程度大きく、髪や瞳も着せ替えできる体の子がいいと考えていました。チピィちゃんはこの条件から外れています。
ですが、この条件を満たすふるるちゃんのお迎えを決めた以上――もうこの条件は、ドール選びの絶対条件ではなくなりました。むしろサイズが全然違う、小さい子だからこそ、1/3スケール(50cm程度?)のふるるちゃんとは全く異なる構図や世界観でセッティングを楽しめます。ふるるちゃんのお膝に乗せるなども素敵ですね。お洋服が共有できないのは痛い所ですが……。
二人のドールさんの絡みを妄想する、二次創作的な空想の広げ方も含めて末永く楽しめそうだなぁと今の私は思っています。
ドールの拡張現実としての作用
ここで話をいくらかずらします。
私は物心ついた時から二次元オタクで在り続けていましたが、版権キャラクターさんを象ったフィギュアやドールには手を出していませんでした。
それは私には明確な『推し』がいないためです。
好きなキャラクターは居ます。応援したい、もっと観ていたいと思う子も。でもそれはどこまでも相対的なもので「この子のためにこの作品を観ている!!」という情熱が一人のキャラクター(コンビ、グループ)に対して湧き出てくることはないんです。
欲求の形が物欲というより情報欲として表れている、などの理由はありますが、自分がこれまでフィギュア類を手にしてこなかった理由として『生活空間に居てほしいと思える推しがいなかったこと』は大きい、と自分では考えています。
私は元々オリキャラ製造派遣という業を背負っていまして、それもあってどうしても愛着度がオリキャラ(夢主、TRPGのPCなど含む)>版権キャラになってしまうタチです。
自分自身しか存在を知らないようなオリキャラでも立体化はできますよね? 今の世の中、推しぬいの作り方についても色々な形で説かれています。
でも……オリキャラにも推しはいないんだなぁ。皆大切な存在ではありますよ。でも、自力で立体化して側に置くならこの子! と思えるような『圧倒的なイチ推し』がいないんです。箱推しならしてるつもりなんですがね……。
そんな私が綺麗な既製品ドールさんに興味を持てたのは、それがファンアイテムではないから、という理由が一つあると思っています。
版権キャラのフィギュアをお迎えするにしろ、自キャラを立体化するにしろ、先に「この子が好き!」という思いがあり、その発露としてフィギュアが欲しくなる、という段階を踏むのが多数派なんじゃないかなと考えています。
でもドールそのものが原作であるメーカーオリジナルのドールさんは「(初めて出会ったけど)この子可愛い!」の思いだけで十分にお迎えの動機になる(※版権フィギュアをこういうノリでお迎えするのも当然ながら全然アリだというのは大前提で)。
ドール、フィギュアなどは豊かな拡張現実を構築できるツールとして扱えると考えています。
例えば自室で、一人ぼっちで飲食している時。そこにドールさんを添えると、そのドールさんは今目の前にある飲食物にどういう反応を示すかな、という空想が膨らませやすくなる。さらにその空想の図を写真を通して他人と共有することができる。
版権フィギュアさんなら「自分の好きなこのキャラは、この食べ物をどう思うかな」という空想を、既に提示された彼(彼女)自身の物語や設定を基にして広げることになるでしょう。それもとても豊かな精神活動です。
元々背負う物語や設定がない、もしくは漫画などのキャラなどに比べれば濃く絡められてはいないオリジナルドールさんの場合、その空想の自由度は更に広くなると思います。
今回お迎えを決めたふるるちゃんやチピィちゃんの場合、設定はあります。特にミミ―ガーデン博物誌の背景設定はとても魅力的に感じ、この世界を舞台にした具体的な物語を観たいと思わされました。
彼女たちの設定は想像を巡らせる最初の切っ掛けとして丁度良い塩梅の濃さである、と個人的には感じました。ふるるちゃんに関して言えば、何の神様の神官なのか、何故神官をやっているのかといった、これが小説なりゲームなりの登場人物なら語られていたであろう部分までは明言されていません。
一から自分で作ったオリキャラではないにしろ、一次創作に近い楽しみ方の余地がある。
それがオリジナルドールの魅力の一つだなと感じました。良し悪しではなく、好みの問題で。
ドールとのこれから
そうそう、最初に語った『スーパードルフィーのフルチョイス』。これも私は諦めていません。
ふるるちゃんやチピィちゃんを選んだことからお察しのように、画風だけでいうならドルフィードリームの方が癖にフィットしているのかもしれません。こちらにもドリームチョイスというサービスがあるということは承知しています。
でもスーパードルフィーの『三次元だからこその美しさ』に最初惹かれたのは事実なので、やはりいずれスーパードルフィーはお迎えしたい。それならばオリキャラと同じように『自分だけの子』を具現化できるフルチョイスを試したい。それも既にいるオリキャラの具現化ではなく、スーパードルフィーとして美しい(愛らしい)と思える子をオーダーしたい(※自己流設定は盛る気満々)……という思いが根強くあります。
その『何が私自身にとって理想の造形の人形か』が掴めないからオーダーに踏み切れないんですけどね! 普通に直営店が遠くて気軽に行けないというのも大きいですが。
値段は……理想の子を身請けできるとなれば高くついても仕方ない、そこは一番の問題じゃない……。しかしそこに少なくとも一往復の交通費が必須となると……。
元より、数打ちゃ当たる! はできない、フルチョイスするなら熟考した結果の精鋭を一人お迎えしたい、と考えています。お値段の問題もありますが、お迎えしたはいいけど多すぎて・あるいは出来栄えに納得できなくて愛を振り分けられない……というような状況になったらドールさんにもメーカー様にも失礼なので、それは避けたい。
ドールさんのお迎えを決めたことで連鎖的に実行したくなったこともあります。それは魔法のアイテム作り。具体的にはレジンや金属パーツを組み合わせた魔法の杖や魔法道具のようなものを作ってドールさんに持たせたいな、という願望です。特にふるるちゃんは神官という基本設定がありますし、魔法の杖、似合うと思うんですよ。神聖魔法に相応しい聖杖が。納得のいくクオリティで自作できるかは別の話ですが、こうやってやってみたいことが見つかることそのものに価値を感じています。
後は自己満足用の写真集ですかねぇ。魔法のレジン製品に限らず、植物や天然石、スイーツなどと一緒に撮ったドールさんの写真を、設定文や会話文などを添えて並べるの。
夢が広がりますね!
ドールさんお迎え前の雑記はここでひとまず筆を置きます。実際にお迎えしたらSNSで写真を公開しますね!
==追記==
3月21日、チピィちゃんお迎え後の雑感についてまとめました。