〜摂食・嚥下障害は、高齢者以外にも起こる〜
摂食・嚥下障害は、加齢によるさまざまな機能低下が複合して影響するという説明をしてきた。
しかし、実は子どもや年齢が若い人でも、発達障害(先天性の脳機能の障害により、乳幼児期に精神面、知能面などで発達の遅れや障害がみられること。主なものに、自開症やアスペルガー症候群などがある)がある場合や疾病の手術後などに起こることがある。
さらに、脳血管に関わる障害や、神経や筋肉に関わる障害、消化器、口腔・咽頭に関わる病気で手術や放射線治療を行なった人も起こりやすくなる。
特に呼吸機能が低下し、のどを切開してチューブを入れる気管切開を行なった場合や、肺炎、慢性呼吸不全の人は、自力で痰を吐き出す力が衰えてしまうため、重度の摂食・嚥下障害を患ってしまうことがある。
また、人は使わない機能は衰えるしくみになっています。長期の入院や寝たきりなどの生活から起こる廃用症候群(長期療養や入院などで、過度に安静にすることで活動が低下し、結果として「起きられない」「歩けない」といった状態になってしまうこと)や精神障害によっても、摂食・嚥下障害は引き起こされる。
いずれの原因もひとつではなく重複して起こることがあるため、原因を判断するには、生活背景や病歴などさまざまな情報が必要である。
■低栄養や脱水、誤嚥などのリスクをもたらす
摂食・嚥下障害によって、“口から食べる”ことが困難になると、健康にさまざまな問題が生じる。まず、食事をとれなくなると、低栄養や脱水といった栄養面の問題と、生きる意欲の低下という精神面の問題が起こす。低栄養に陥ると、口腔内や咽頭、食道などの筋力がさらに衰えて誤嚥を引き起こしやすくなり、免疫力も低下してくることから誤嚥性肺炎なども関わる病気につながることもある。いったん肺炎を起こすとさらに摂食・嚥下機能が低下してしまい回復しづらく、ますます経口摂取に戻すことができないといった悪循環に陥る。
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