督促OL 修行日記(読書メモ)
ストレス社会で戦う人達を勇気づける1冊です。
本書は、人見知りで話しベタで気弱なOLの著者が、新卒入社の信販会社で最終的に年間2000億円の債権を回収するようになるまでの、苦労や困難をコミカルに纏められています。
自分は元々インサイドセールス職だったこともあり、興味本位で購入しましたが、まず読み物として十分に面白いです。また所々で債権回収するためのノウハウも書かれているため、インサイドセールスのスキル面で参考になる点も多いです。
では、いつも通り印象に残った内容をピックアップします。
約束日時は相手に言わせる
「相手に約束させる」はコールセンター業務に限らず全ての営業における鉄則ですね。
入金の約束をしたお客さまが 、その約束を守ってくれる確率は約 6割 。 4割は約束を破る 、だから約束を破られた時のために 、あらかじめ交渉の材料を用意しておくことはとても重要だ 。
約束を破った直後に電話をすると 、まだお客さまの心の中に 「約束を破ってしまって悪いな 」という負い目がある 。そこで交渉にその 「罪悪感 」を利用する 。
「言質を取る 」という言葉がある 。質には人質や抵当という意味があるらしい 。そう思うとなかなか恐ろしい響きを持つ言葉だけど 、約束は相手の口から言わせることで 、よりいっそうその責任を重くすることができる 。人と約束をする場合は 、日時と場所を相手の口から言ってもらうことが重要なのだ 。
自信を持つ
本書のようなクレーマー相手だと、自信無さげな新人感が伝わった瞬間になめられるため、声のみで対応する仕事では特に大事だと感じます。
「自信 」──これを持つか持たないかで 、交渉というのは出来不出来が全く違ってきてしまう 。例えば私が督促で 、
「あのぅ … … 、お客さま 、ご入金をお願いしたいのですが … … 」
とおどおどと自信なさげに電話をかけたらどうだろう ?なんか払わなくても良さそうな気がしてしまう 。交渉は自信を持たなきゃ勝てないのだ 。
この 「ゆっくり =自信 」という法則は 、電話だけじゃなくて行動にも当てはまる 。せかせかと早口でしゃべる人 、きょろきょろと挙動不審にあたりを見回す人 、こういった人々はあまり自信があるようには見えない 。逆に落ち着いた声でゆっくりとしゃべる人や慌てず余裕のある動作で動いている人はとっても優雅で自信がありそうに見える 。
謝罪とお礼の黄金比
あまり比率まで意識したことなかったですが、言われてみるとこのくらいがちょうど良い気がします。謝罪ばかりは逆効果、には激しく同意です。
「謝罪は何度も繰り返すと誠意が薄まるので 、黄金比は 、謝罪 2に対しお礼 1です 。 『申し訳ございません 』が 3回続くとくどいと考えてください 。 『申し訳ございません 』を 3回使っていいのは 、クレ ーム対応を締めくくる時だけです 」
確かに「仏の顔も三度まで」「三度目の正直」という諺がある。何事も3回までが許される限度のようだ。ただしラストはくどいくらいの謝罪のほうが余韻が残るので、あえて3回連続の謝罪で締めくくるのである。
声色を意識する
これはすぐに実践できて効果も大きいです。インサイドセールスの管理職時代に、成果に伸び悩んでた後輩がコールセンター経験者のアドバイスで口角を上げて営業したところ、売上が急増し当時のギネス記録を更新したことを思い出しました。
電話口で聞き惚れるほどいい声で話す人って、なんだかぞんざいに扱えない。あいさつの時やクレーム対応の時でも「声が美人やイケメン」なら絶対有利だ。
声を綺麗に出すように心がけること、それに話す内容や言葉遣いに加えて、声を高くするか低くするか、柔らかくするか硬くするかを意図的に変えるだけでも、相手の反応はかなり違ってくる。
人は見た目が9割かもしれないけれど、電話は声が10割なのだ。
辛い経験を武器と盾に変える
この著者の考え方には痺れました。こういうマインドセットができる大人になりたいと素直に思いました。
古戦場のようなコ ールセンタ ーで働くうちに 、いつの間にか自分の体にはたくさんの言葉の刃が突き刺さっていた 。でも 、その一本を引き抜くと 、それは自分を傷つける凶器ではなく剣になった 。その剣を振り回すと 、また私を突き刺そうと飛んでくるお客さまの言葉の矢を今度は撥ね返すことができた 。それから 、仲間を狙って振り下ろされる刃からも仲間を守ることができるようになった 。そうか 、武器は私の身の中に刺さっていたのだ 。仕事をする中で誰かから傷つけられることはたくさんあったけど 、そのおかげでできるようになったこともたくさんある 。今まで私が先輩やお客さまからもらってきたのは 、これからより強く生きていくための武器と盾だったのだ 。
まとめ
過去に人材紹介業のインサイドセールスを行っていましたが、本書のような支払延滞者へ延々と督促するコールセンター業務は過酷さのレベルが違いました。だからこそ、このようなストレスフルな環境の中で、逞しく成長する著者の精神力にはただただ脱帽でした。
もちろん環境によっては必ずしも残ることが正解ではないため断定的な話はできませんが、もし仕事に悩んでいる方がいれば、本書を読んで損はないと思います。