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鈍い音。

 突然、予想だにしない出来事が自身の身に起きた時、常にたじろがず冷静に対応できる人間になりたいと思うことはありますか。私はいつどんな時もそう思います。その為常にシュミレーションの多い人生でもあります。
今、自分が置かれている状況や仕事の内容において、考えうる最悪の状況を真っ先に考えそれらを事前に潰していかなかれば気が休まりません。実際に最悪な事態になった時、想定内であれば素早く動くことができます。がしかし、そこまで考えていたとて、想定外のことが起こることは人生の時々にあります。その時々をふと思い出す度、大人になった今でも名前をつけることができないでいる心情の話です。

 あれは小学校3年生の春休みでした。友人に「巨大迷路が出来たんだって!お父さんに連れていってもらうから麻衣も一緒に行こう」と誘われた私はついて行くことにしました。地元に出来た大きなバイパス道の両側は当時まだ未開拓地で、試しになのかなんなのか、アミューズメントパークが突如現れたりしていたのです。巨大迷路のある敷地には戦隊ショウなども開催されており、家族連れやカップルなどでそれはそれは賑やかでした。初めて巨大迷路に挑んだ私は開始早々友人と逸れ、歩けど歩けど行き止まりの中、半分泣きべそをかいていました。「一生出られなかったらどうしよう……」そんなことはあるわけがないのですが、九州の片田舎、狭い世界しか知らない9歳の私には巨大迷路はこの世の果てに等しく、心の底から湧いてくる不安をなんとか振り払おうと一旦立ち止まり、身体がやっと通るか通らないかの地面との隙間を見つけ、匍匐(ほふく)前進で一直線に進み出口まで辿り着きました。
それを見ていたスタッフのお姉さんに「今まで、叫んだり壁を登ったり色んな人がいたけどあなたみたいな子、初めてよ」と言われ、褒められたと勘違いした私は少しばかり鼻高々な素振りを見せ、「二度ときません」と言ったことを覚えています。

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