「夏に中華まんを売る意味はあるのだろうか?」
中華まん。
コンビニのレジ横に鎮座する冬の代名詞。
最近では、ピザまん、カレーまん、期間限定の変わり種まで
幅広く種類が展開される。
が、やはり、肉まん、あんまんがダントツの存在感が感じられる。
当店は、肉まんとあんまんだけは年中無休で売っている
数少ない店舗。
近くの競合は行っていない、当店だけの特典である。
そんな中華まんだが、1年、特に夏に売る意味はあるのか?
1日の行方を当店のパターンを紹介して実態を紹介する。
早速スタートと言いたいところだが、
本題に入る前に商売の基本を押さえておきたい。
①商売の基本。
単価を上げるか、買い上げ点数を上げるか?
今回はその基本に以下の要素を加える。
常連のお客様という要素を加えることで、このストーリーが分かりやすくなるので、ぜひ、頭の片隅に置いていただけれ場と思う。
早速、具体例を交え中華まんの行方を追っていくことにしよう。
ちなみに、フィクションだ。
毎朝5時3分にやってくるボス
毎朝、外国人労働者の3人組。
1人はボス(通称)
もう二人は、雇われている感じの
男性1人と、女性1人。
年は、おそらく40代後半から50代後半といったところか。
国籍は、アジア系?。
必ず、5時3分にバンでやってくる。
1分たがわず、平日毎朝5時3分。
まるで、日本の電車ダイヤみたいに。
なので、こちらも準備がしやすい。
✅女性のお客さんは「ラッキーストライク9ミリ」を必ず2個。
✅ボスは「マルボロメンソール」と肉まん1個。
✅もう1人の男性は、パン2から3個と缶コーヒー、おにぎり2から3個。
この3人は、もう1年以上も平日来てくれる。
真夏のくそ暑い時期も、中華まんだけは買っていく。
夏でもまだ涼しい時間帯過に、肉まんの存在は大きいのだろう。
そして、さっそうと現場に向かう。
中華まんを5時3分に売れるようにするには?
ちょっとここで、準備について触れておきたい。
中華まんは売れるようになるまで、約30分の蒸しがいる。
そのため、ボスが来る前に4時30分には
肉まん6個、あんまん2個什器に投入する。
逆算して、実質4時から準備をしておかないといけない。
①什器に水を入れ、スイッチオン。
②朝4時30分、中華まん投入。
③5時にはちょうどいいころ合いになる。
中華まんのうんちくばかり語ってもしたかないのが、
こういった、ある意味緻密な?準備もいる。
毎朝アンマンを二個買うアンパンマンに似た常連さん。
マイアサアンマンヲニコカウアンパンマン二二タジョウレンサン
まるで早口言葉だ。
さて、朝6時30分を過ぎてくると、ちょっと忙しくなる。
職人さんや、トラック運転手さんなど
朝早い系のお客さんラッシュが始まる。
その中に混じり、必ずと言っていいほど、
あんまんを2個買う「アンパンマン」に似た常連さんがいる。
ここで、あんまんを2個仕込んでおく意味があるというわけだ。
最近、私は仕込みタイミングをミスってしまい、
「あんまんごめんなさい!まだ仕込み中なんです!」
とアンパンマン(仮称)に伝えると、
すたすたコーヒーだけ買って店を出ていき、
なんと30分後にまたやってきたのだ!
どんだけあんまん好きやねん!と思いつつ、
無事にあんまんを提供できることになる。
まさにアンパンマンのような華麗なお客様だ。
他の従業員さんに聞くと、どうやら、
ほぼ平日、あんまん2個を6時30分~7時の間に買いに来るとのこと。
こういう常連さんはありがたい。
派遣の介護職をやっているアジア系の常連さん(通称春巻きおばさん)
必ず8時10分~15分の間に
「おはッよう・ござますー!」と入ってきて、
「ハ・る・マ・き~~とにく・まんいこ」
とやや片言の日本で注文してから売り場に行く。
この時点で、春巻きもレジ横の揚げ物什器に準備しておく。
そして、肉まんも買ってくれる。
ここまでのまとめだ。
あんまんは正直ハードルが高いため、
アンパンマンが買えば、暑い時期は当日売り切れ対応する。
肉まんがあと4個什器に鎮座していることになる。
ありがたいことに、どさくさに紛れて職人さんが
2個から3個くらい買ってくれる。
なので、残り肉まんは2個から3個になる。
ここから正念場だ。
9時になると夜勤メンバーと昼のパート従業員さんとの交代。
ここから、レジ前の商品の売れ行きが鈍る。
お店も納品も落ち着き、
品だし、
納金、
宅急便の回収などを
しつつ昼を迎える。
冬ならまだしも、この時間の肉まんにはお客さんの反応も薄い。
やっぱり、なんだかんだ、中華まん=冬。
夏に売ってる肉まんを見つけたお客様には、たまにビックリされる。
そうこうしてえいるうちに、
肉まんの廃棄タイムが刻々迫る
10時、11時、12時、13時。
昼のピークタイムが過ぎていく。
横の揚げ物は売れるのだが、冬の肉まんは売れない…
だんだん、什器の中の肉まんはシワが多くなっていく。
早く買ってくれよ!と言わんばかりに訴えるが、
昼には受けが悪い肉まん。
残念ながら、このまま廃棄処分するしかないのか??
しょうがないので?割引販売。
ここで、15時くらいに、肉まんが残っていれば割引販売に踏み切る。
もちろん、担当本部社員の了承済みだ。
15時というと早いかもしれないが、早朝4時30分から什器に
入っていることを考えると、この時点で約10時間経過。
もはや、しわも増え、什器も汗をかいてきている。
なんとか売り切りたい。
そこで、この策に出る。
なぜ、15時か?
この時間は近所の小学生がやって来る時間。
レジ前フードに目がない。
でも、ナナチキ、あげどりなどは最近は300円近くする。
となると、横にある割引された肉まんに目が行く。
買ってくれることも多い。
運よく、ここで売り切れることもある。
ちなみに、3割引き。
ここで無事に売れるといいのだが、現実はそう甘くはない。
この時間の肉まんは疲れ果て、もはや弾力はなく、噛み応えもない。
廃棄時間が迫ってくる。
タイムリミットは18時だ。
なぜ、1年中売るのか?やめればいいのに?
なぜ1年中やるのか?以下の3つに集約される。
①レジ横の商品は利益率が半端ない。
細かい数字は言えないが、多少廃棄を見込んでも利益が出やすい。
②出来立てのマジックで、お客様を誘惑しやすい。
③放り投げで調理が可能。
まとめると、上記の公式が成り立つ。
ただ、何度もいうが、商売はこんな1+1では成り立たない。
こんなことで売れれば、簡単で誰でもマネをするはずだ。
だからこそ、商売の難しさもあるし、完売した時のうれしさもある。
そう、この体験を従業員全体に共有することが目的である。
売れないからこそ、商売にはロマンがある。
中華まんにはロマンがある。
べつに洒落をいったわけではない。
売れないかもしれないからこそ、商売にはロマンがある。
もちろん、廃棄の問題などもある。
が、こういうチャレンジングなことをするからこそ
廃棄の問題も全従業員さんが考えるきっかけになる。
どうしたら、売れるか?
割引をするタイミング、どんなお客さんにススメるか?
こういったこと考えられる癖がつく。
これができると、無駄に揚げ物を作ったりしなくなり
1人1人が考えていく。
1人1人が商売人になっていく。
そんな要素が肉まんを夏に売る最大の意味がある。
そして、売れなくて廃棄になった肉まんには、健闘をたたえたい。
商品に対する愛情もまし、そして、一人ひとりが商売人になる。
たかが、中華まんを夏に売るだけでこれだけのストーリーがある。
最後まで読んでいたあなたには、
夏に肉まんを売っているのを見かけたら
ぜひ、買ってもらいたい。
このストーリーは年中無休で公開することにする。