「ミッション」と「行動」をセットで考える
取引先で「ミッション」の話になると、ほぼ間違いなく、難しそうだなという雰囲気が社員の間に漂います。社長が「我が社のミッションは・・・」と語っても反応は冷ややかです。これまで何度もこんな場面を見てきました。
社長の思いとは裏腹に、多くの社員はミッションを教訓的、あるいは精神論と受け止めることが少なくありません。「また、社長がどこかの本で読んだか、セミナーで聞いてきたんだろう」、概ねこんな反応ですね。
結果的には、「ミッションを社員にわかってもらいたい」という社長の思いは空回りすることが少なくありません。それが「ミッションを社員の頭の中に叩き込むような感じ」になると益々うまくいきません。
「わかる」と「できる」は別物です。いくら覚えても、自分自身の腑に落ちないと人は本気で動き出しません。大事なのは、社員が「ミッションと行動」をセットで考えられようにすることです。
例えば、お年寄りが大きな荷物を持って横断歩道を渡ろうとしているとします。それを見たときに、いくら親切心があったとしても、「お持ちします」と言って、実際に荷物を持たなければ親切な行いにはなりませんよね。
出来栄えの明確化と現実とのギャップに気づく瞬間
人は習慣の動物という言葉があるように、普段やっているからことにそれほど疑問を覚えません。でもね、「ミッションに照らし合わせたら、どうなのか?」、こう感じてもらえるようにするのがミッションの浸透ですよ。
頭に叩き込むのと同じように、ミッションの浸透で失敗するパターンがもう一つあります。それは「出来ていないことを指摘する」ことです。誰でもそうですが、「出来ていないよね」と言われるとちょっとムッとします。
これが繰り返されると「ミッション=叱られる」という構図が出来上がってしまいます。出来ていないところは目をつむり、それよりも「これはミッションに基づく行動だね」という「出来ていること」の確認の方が大事です。
「出来ているよね」の確認により、「ミッションに合っていないのは何だろう」という疑問が反対に湧いてきます。この疑問が「ミッション」を自分の側に引き寄せ、「ミッション」とは何かを考えるきっかけとなります。
ミッションと行動をセットにして考える、これってすごく大事です。出来栄えの明確化と現実とのギャップ、これに気づき始めると人は動き出し、「ミッション」を実現しようという次のステージに入ることができます。