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キューバ魂の再燃、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』を観る
1984年に公開されたヴィム・ヴェンダース監督の『パリ、テキサス』という映画がある。ロードムービーの名作だ。音楽を担当したのは「ライ・クーダー」、彼が演奏するスライドギターが映像を引き立てている。実に良い。
15年後の1999年に二人は音楽ドキュメンタリー映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」を制作する。ライ・クーダーとキューバの老ミュージシャンたちとの演奏を中心に、彼らの来歴やキューバの日常を描いた作品だ。
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は、1940年代にキューバに実在した会員制音楽クラブだ。作品に登場する歌手やミュージシャンたちの大半がこのクラブの会員だったので、映画のタイトルになったのだ。
作品では、ライ・クーダーによって結成された「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」のワールドツアーの様子が描かれ、最後はカーネギーホール公演のシーンで終わる。それ以外のほとんどはキューバで撮影・収録された。
中心人物として登場する歌い手の「イブライム・フェレール」は、再結成されるまでは、音楽を辞め、靴磨きで生計を立てていた。しかし、その歌声は年齢を感じさせない。何よりも音楽を楽しんでいるのがよくわかる。
ドラマチックなストーリーが展開されるわけではない。全編を通じて流れている独特のリズムのキューバ音楽と年老いた歌手やミュージシャンたちの表情そのものがストーリーだ。そんなわけで、お勧めの一作です。