NIWAのはなし(VII)〜SDGs的堆肥のこと〜
去年は小道を作った。NIWAのはなしで何度かお話ししたが、雑草に占拠されている庭を救うべく考え出したのが、大事な植物を点在させそれを中心に草抜きをしてゆくという方法だ。私はそのころ、「雑草という名前の草はない」という考えになやまされていて、大事な草もいらない草もどちらもケアしている状態だった。おかげで緩やかな円形の大事な草と笹竹の尖った直線が混在するという散らかった状態になっていた。結局のところ、「庭をする」ということは植物全体の命を守ることじゃなく、自分の思い描く世界を庭の中に実現するということであってそのために不要な草は抜かねばならない。
ここで、やりたいこととできることの駆け引きが始まるわけだ。簡単で、目につきやすく、効果も出やすい。そして長続きするたのしい庭管理。それは、「第一段階=草抜き、第二段階=土管理、第三段階=植栽」と明確に分断するものではなく、全部が同時進行するやり方がいい。隣家に挟まれた庭はす三方を建物に囲まれているため、日当たりの仕方が極端なのも欠点の一つだった。立木が多く道路に面した輪郭と、庭をセクションに分けた4箇所にそれぞれテーマ的な木がうわっている。それが日陰を作っている。
そこで、これまで植栽の場所は大きな一帯が二つあったのだが、そこに小道をつくり、木立の根元から離れるにつれてシェードガーデンから日向の植物へと植える種類を変えた。
西洋苧環は今ブームなのか、2月の早い時期から店舗に見かけた。きっと温室育ちだろうと早々に地面に下ろしたが、2回ほど盛りが来て青、黄、紫、ピンクの四種類が今は種をつけている。綿帽子の根元が気に入ったらしい。ほかに冬に休眠中だったセダムも旺盛に伸びているし、マツムシソウは昨年に植えてから今も小さなブルーの花を咲かせている。ハリーポッターにでてきたニワトコも同じ木下にある。エルダーフラワーの樹液が目的ですが、これがまだ先になりそうだ。
この綿帽子の小道は梅の木の根元まで伸びていて、おわりにはルバーブとレモンバームの茂みがある。そして、その先にフェルトでできた直径一メートルほどの円形状の堆肥場をつくった。昨年末のこと、それまでは黒ビニール袋に落ち葉をあつめていたが、思いのほか土になるのが遅かったので思い切って地上の空いた隙間に作ったのだ。
結果からいうと、これがとても良かった。落ち葉に加え、今年二月ごろから出始めた雑草を土と共に放り込んでいたら、四月はじめの雨が上がった頃には多少荒い繊維は残っていたもののすっかり土になっていた。
同じように昨年から使い始めたのは、ぼかしという微生物をつかい残飯などを発酵させるバケツだ。ドイツ在住の中国人のVlogで、日本のBokashiという肥料というふうに紹介されているのをみて知ったのだ。小さなアパートのベランダで始めた菜園がまるで空中楽園のごとく茂り、鳥や虫たちがあつまった。
つくり方は簡単で、野菜クズや残飯などで水分のないものをバケツにいれぼかしで発酵させるのだ。開始した11月ごろは熱心に毎食の残飯をバケツにいれて肥料作りに勤しんだが、いつの間にか忘れていた。ようやく思い出し液肥を抽出したのは、四月に入ってからだ。発酵まえはほぼいっぱいだったバケツは五ヶ月たって半分に減っていた。蛇口をまわしても水のように出るわけでなく、半日かかって500ミリのペットボトルにいっぱいの液肥がとれた。
この液肥は、おそらく竹墨より効果があると思う。有機物の発酵液のうえ、チュウレンバチに葉を食われたバラも回復して花を咲かせた。エディブルフラワーもバラも、花びらからエッセンスを抽出して使うことを目論んでいるからぼかしは強い味方だ。
そして液肥を絞ったあとのカスもまた、堆肥作りにとてもやくだってくれた。早々に土色になった堆肥に、漬物ににた甘酸っぱい香りの搾りかすをまぜたが、一月も経たずにいい土ができた。
当初、去年の経験から落葉からつくる堆肥は熟成時間がかかるため一年後に一回しか使えないと思っていたが、このぶんでいくと覆い土すればもう庭の起伏をつくるのに使えそうな勢いで土になっていっている。シャベルを一掬いすれば二、三匹のみみずが出てくる。これをたっぷり山にしたところに、栄養価のすくない覆い土を被せれば秋の草も植えられる。平らな庭に起伏もでき、雑草が土になる。
ほんの少しの忍耐と気配りで、永遠につづく庭のサイクルが回り出した。ただしとても繊細な変化から目を離してはいけない。
そんなことをしていたら、隣のお宅から生まれたての赤ちゃんの泣き声がきこえたり、近所からカレーの匂いがしたり、土曜らしくのんびりとした平和な空気に触れられて、庭仕事もぼかしとおなじく副産物がたくさんだ。
繊維が強い笹竹は堆肥には向かないけれど、草を生やしたくない隙間のカバーに切って敷いたら使えるとやはりYouTubeの園芸家が紹介していた。
天気がゆるせばあしたは梅の枝をおとそう。
あー忙しい。
プーチン大統領も農作業をすればいいのに。
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