やがて死ぬ けしきは見えず 蝉の聲
今年は9月に中秋がありますが、日の出と日没の気温は27度から29度で、昼間は約35度と地域によって差がありますが、依然として暑い日が続いています。我が家の庭でも異変が起きており、今年は蝉が昼の12時頃から4時頃まで鳴かない時間があります。クマゼミやアブラゼミが鳴かない時間帯はありますが、今年は例年に比べて蝉の声が静かです。庭には成虫になった蝉の死骸が多く見られます。何が起こっているのでしょうか。
気になりセミの生態調べると?
蝉に関する情報を検索し、多くの資料を読み進めるうちに、「蝉の声」というキーワードで検索したところ、珍しい俳句に出会いました。私の突発的な知的好奇心が、その魅力に深く引き込まれ始めています。
『無常迅速』
『やがて死ぬ
けしきは見えず
蝉の聲』
https://www2.yamanashi-ken.ac.jp/~itoyo/basho/haikusyu/semi.htm#ku
この珍しい俳句に心を惹かれました。
芭蕉が四十五歳頃に詠んだとされる俳句です。
この俳句には、間もなく訪れる死を予感させる悲壮感は感じられず、むしろセミが生命を全うする熱意と孤独な姿が表現されていると広く解釈されています。「無常迅速」という言葉は、時間の流れは速いため、修行者は散漫に時間を過ごしてはいけないと戒める意味があるそうです。
無常迅速
松尾芭蕉が「無常迅速」という言葉を用いた背景には、彼の詩や俳句に見られる深い哲学的洞察が反映されています。
無常迅速の意味
無常とは、全ての存在が常に変化しており、永遠に同じではないという意味です。これは仏教の根本的な教義であり、人生のはかなさや移り変わりを教えているそうです。
迅速とは、物事が非常に速い速度で変化することを指します。時間が急速に進み、一瞬にして状況が変わる様子を表しているそうです。
やがて死ぬ
けしきは見えず
蝉の聲
芭蕉は自然の無常を詠み、生と死、人生のはかなさを伝えました。彼の俳句は季節の変わり目や自然の美しさを捉えていますが、それらは無常の概念に根ざしています。
「やがて死ぬ けしきは見えず 蝉の聲」という句は、蝉の命の短さを通して無常を象徴しています。蝉の声の中で死の気配がない対比は、人生のはかなさを際立たせます。
この俳句は、蝉の声を通じて、人生のはかなさと無常を象徴しています。
解説
やがて死ぬ・・・ 死がいつか来ることを示していますが、その兆しは見えません。
けしきは見えず・・・死の予兆が見えないことを意味し、人生が突然終わる可能性を表します。
蝉の聲・・・ 蝉の声は夏の終わりを告げ、命の短さを象徴します。その声の中で死の気配がないことが、句の核心です。
この俳句は、人生の無常とはかなさを感じさせますね。蝉の声は一時的で、夏の終わりを告げますが、その中で死の気配がないことは、人生の不確かさを示しています。
芭蕉はこの句で、自然の無常を表し、生と死について考えさせるメッセージを伝えています。蝉の声の中で、私たちは自分の人生をどう生きるかを考えさせられます。この句から、芭蕉の深い洞察と自然観が感じられます。
あなたはこの俳句をどのように感じましたか?
❓ 私はこのように考察してみました。
芭蕉に多くの生態的情報があれば、この俳句は違う視点になるのではと
このような感覚を持ちました。
蝉の生態についての理解が深まると、芭蕉は俳句に対する解釈も変わるのではないでしょうか。
(笑い)
おこがましいですが、ここで少し遊んでみたいと思います。
蝉は数年間地中で生活し、地上に現れた後は短い一生を終えます。これらの行動は自然の循環と生命の儚さを表していますね。
蝉の一生を調べてみると、交尾が終わったメスは枯れ木に産卵し、翌年の梅雨の時期に孵化をするそうです。地表にでた幼虫は幾度か脱皮をして地中に潜りほとんど動かずに5から6年ほど過ごします。そしていよいよ地表に再び登場し羽化をして数週間ほど鳴き続けるそうです。いずれ生命が尽き土に戻ります。そう考えるとセミが一匹で鳴いているのではなく、自然観を感じますね。
芭蕉が蝉の生態に対する興味や洞察を持っていたとしたら、彼の俳句は次のようなテーマを含むかもしれません。
例えば、次のような視点も考えられますね。
自然のサイクル・・・蝉の一生を通じて、自然のサイクルや生命の循環を感じることができます。
繁殖の重要性・・・地上に出てからの短い期間に全力を尽くして繁殖を行うことは、生命の目的や使命感を表現しています。
地中での準備期間・・・ 蝉が地中で長い時間をかけて成長し、地上に出る準備をすることは、人生の中での努力や準備の重要性を象徴しています。
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テーマ1・・・自然の循環
地中より
命繋ぎし
蝉の声
解説・・・地中から地上に命を伝える蝉の姿を描き出し、自然のサイクルと生命の継続性を表しています。
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テーマ2・・・短き命
夏の夜
蝉の声響く
命短し
解説・・・夏の夜に響く蝉の声を通じて、蝉の短い地上生活を表現しました。短い命の中で全力を尽くす姿を表現。
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テーマ3・・地中の夢
地中にて
七年待ちし
蝉の夢(声)
解説・・・地中で長い時間を過ごし、地上に出る準備をする蝉の姿を描きだし、地中での待機期間が、蝉の夢や希望を表現。
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視点の考察
地中での長い待機期間・・・蝉が地中で何年も過ごすことに焦点を当て、地上に出るまでの忍耐や準備の期間を表現する。
短い地上生活・・・ 地上に出てからの短い命を強調し、その中で全力を尽くす姿を描く。
自然のサイクル・・・蝉の生態を通じて、自然のサイクルや生命の循環を表現する。
などなどです。
次のような俳句も考えられるかもしれませんね。
地中にて
待ちし蝉の声
夏の儚さ
このように、蝉の生態に対する理解が深まることで、芭蕉の俳句に新たな視点やテーマが加わる可能性があります。
確かに、蝉の生態を考えると、地中での長い幼虫時代が人生の大部分を占めており、地上に出てからの短い期間は繁殖のための重要な時期です。この視点から見ると、蝉の一生は非常に目的志向であり、儚さというよりも、自然のサイクルの一部としての充実感を感じることができます。
芭蕉の俳句「やがて死ぬ けしきは見えず 蝉の聲」は、蝉の短い地上生活に焦点を当てているため、儚さを強調していますが、蝉の全体の生態を考慮すると、異なる解釈も可能ですね。
完