2023年個人的ベスト10選【後編】
皆様おはようございます、こんにちは、こんばんは!
2023年のベスト10選の最後の3本を書けずスランプのまま10月に入り、流石に激しく焦り始めた18toyaこと冬夜です 笑
いや、2023のベスト10選を2024年の10月まで引っ張るとか…w って失笑されちゃいそうな話なんですけど、正直ここまで遅れた理由ってスランプもありながら「レビューを書けるほどにやり込めてはいない」っていう自覚があったのも大きかったんです。
ただまぁ、ちゃんと遊べてないゲームなのに何故10選に入るの?と言われると「直感的に」というか、「感触的に」と言うしかない部分があって。できればもう少し紐解いてから…と書くのを先延ばしして…
気付いたらこんな時期に、というのが正直なところ^^;
とはいえ、一度始めたものはきちんと丸く収めたいので。
前々回の軽量、軽中量、前回の中量級に続き、ラストの重量級に行きたいと思います!
ちなみに、前回の中量級でも同様のことを書きましたが、今回のレビューも十分な試行回数をこなせていないことを前提として、それでもなおベストに入ったのは何故か?と言う観点で記事を書きたいと思っています。
もっと試行回数を重ねている方からは違う見方や違う意見があるかもしれません。その場合はご意見やご指摘をいただけると幸いです。
重量級:3本
ルールはある程度複雑でプレイにはボードゲームへの慣れがかなり必要。インストは短くて30分、プレイは2時間超。だがボードゲームの楽しさが濃厚に味わえる大作がこのクラスだ。
2023わたしベストは以下のとおり。
・トワイライトストラグル
・アルルの丘
・オラニエンブルガー運河
なお、このクラスを十分にレビューするには圧倒的にプレイ回数が足りていないので、今までにも増してプレイ感中心の内容となるがご理解をお願いしたい。
トワイライトストラグル
インスト1時間〜1.5時間、プレイ4時間程度。慣れればもう少し早いとは思うが、いずれにせよ2人専用では結構な重量級に分類されるゲームであろう。遊べるシチュエーションは相当限られることは間違いない。
私も上記の理由により購入後2年以上積みゲーになっていたが、有難いことに昨年プレイをする機会に恵まれた。感想としては「流石の名作っ…!」これに尽きる。
本作は冷戦時代のソ連とアメリカの闘争をゲームに落とし込んだもので、1945年〜1989年までの世界を舞台に、世界各国への影響力を互いに競い合う。直接的に戦争をするのではなく、自勢力の影響を受けた国を増やしていこうとするシステムはまさしく冷戦世界だ。
タイトルもジョン・F・ケネディの就任演説で世界の情勢が「黄昏の闘争(twiright struggle)に備えなければならない」と訴えた言葉に端を発しており、非常にシビアな展開を予想させる。
本作のゲームシステムは手札から1枚ずつ場に出したカードで行えるアクションが決まる「カードドリブン」と呼ばれるもの。最近で言うと主計将校やウォーターゲートなどもこのシステムを採用している。
本作がユニークなのはアメリカもソ連も個別のデッキ山というものはなく、全てが混ざり合った1つの山札からお互いカードを引き、手札とする点。つまり手札は自分に有利なカードばかりではなく相手に有利なカードも混ざることが往々にしてある。
もちろん、誰しも自分に有利なカードをプレイしたいし不利なカードは1枚だってプレイしたくない。だが、本作では不利なカードをプレイせずに逃れることはなかなか難しい。
この仕組みにより、手札をどの順番でカードをプレイするか、大いに悩むこととなる。当時の情勢を考えれば国内の事ですら完全に制御することはできず、世界のいろいろな場所で起こる様々な出来事が、あるものは自陣営に有利に働いたり、また別のものは不利に働くこともあっただろう。こうした時代の波に翻弄される当時の世界情勢を彷彿とさせるプレイ感と言える。
また、互いの点数は絶対的な点数を取っていく方式ではなく、例えば「相手より5点多く取ったら5点分、マーカーを自分の方に引き寄せる」という綱引き方式になっている。まさに冷戦時代の政治の駆け引きと綱引きの如きパワーゲームを体現した得点システムだ。大の大人2人が向かい合ってどちらも苦悩に満ちた顔をしてプレイをしている姿はまさしく現代に甦った冷戦であり、テーマもゲーム内容も渋いが味わい深い大人のゲームである。
リリースは2005年だが2023年に遊んでも十分に面白かった。BGGでも2024年10月現在ですら13位という好位置に付けており、2人専用でこの順位は賞賛に値する。
最後にマイナス点にも触れておこう。本作はゲームシステムが非常に良くできておりスリリングな展開を楽しめる良作なのだが、いかんせんルールブックが読みづらい、と私は感じた。戦略級ウォーゲームという側面も持つ本作はルール記載もウォーゲームの流れを汲んでいると思われ、一般的なボードゲームのルルブに慣れ親しんだ身としては読み進めるのがなかなか辛かった。
処理例の記載や図・絵・写真等も少なく、ひたすら文章を読む感じになるのは覚悟しておいた方が良いだろう。Youtubeなどの動画も極めて少なく全体像をイメージで掴むのもやや難しいかもしれない。
ただし、こうした苦しみを乗り越えれば、その先には今でも十分楽しめる重厚な2人戦が待っている。一緒に遊べるお相手に心当たりがある方は、ぜひ一度本作を試してみて欲しい。
アルルの丘ビッグボックス
残り2作品は私は対人で遊ぶことが出来ていないため、ソロプレイのみの所感となることをまずは断っておく。残り2作ともウヴェ=ローゼンベルク氏の作品だが、プレイ感は全く異なっており気分によって遊び分けることが可能だ。
まずはアルルの丘を紹介したい。本作は2014年リリースの作品で、かつては日本語版も販売されていたものの長いこと再販が無かったため国内でプレ値となっていた。しかし昨年、テンデイズゲームズさんが拡張込みのビッグボックスを発売してくれたおかげで格段に入手性が向上した。これにより、噂は聞いていたものの手に入らない!と嘆いていた層も購入することができた。私もその一人という訳だ。
農村で自分の農園を発展させていくゲーム、というと比較対象は同じウヴェ氏のアグリコラがすぐに思い浮かぶだろう。確かに家畜も飼うし農場も広げる。しかし言葉だけだと一見似ているようで、その実アグリコラとアルルでは随分プレイ感が異なると感じる。
まずアグリコラはラウンドごとにアクションが増えていく、逆を言えば最初は極端にアクションが制限されているが、アルルではアクションは最初から最後までフルオープンである。このプレイ感は(プレイヤーボードの扱いは全く違うにしても)アグリコラというより、むしろオーディンの祝祭を彷彿とさせた。
食料の扱いもアグリコラとは異なり、こちらは要求数が比較的凌ぎやすいものとなっている。これはもしかすると、「アルルの丘」の舞台である北フリジア(フリースラント)地方に領主制が根付かなかったということに起因するのかも知れない。
領主制が根付かないということは年貢・租税を取られないということであり、住民はすべて自由身分の農民というヨーロッパでも他に例を見ない希少的な土地であった。そのため彼の地は時に「領主なきフリースラント」と呼ばれたという。それゆえ、食料は家族が食べる分だけ足りればいいという発想が食料支払いの緩さに繋がっているのかもしれない。
こうした舞台背景の影響があるのかは分からないが、アルルではゲーム内で「追い立てられる空気」を感じることはほぼなく、むしろ牧歌的と感じる。中世の農家を体験したいというリアルさで言うとフリジア、すなわちアルルは例外的な土地のため、もしかすると適合しないのかもしれない。アグリコラの厳しさこそが、中世の一般的な農家なのかもしれない。
が、しかし、この牧歌感が何とも心地よいのだ。
ただし、牧歌的であることが「低難易度」と結びつく訳ではない。高得点を取るためには緻密な計算が必要であることは一言添えておこう。
一方で、一応欠点と思われる箇所にも触れておく。まず遊ぶのにとにかく場所を食う。メインとなるゲームボード自体の大きさもそうだが、プレイヤーボードもホームボードと旅の目的地/納屋ボード、また全体のサプライボードもあって盤面の面積としてはオーディンクラス、またはそれ以上かもしれない。このゲームを遊ぶためにはまず広い盤面が収まるスペースが必要という点に注意が必要だ。
また、アクションスペースが夏・冬ともに15箇所程度あり、これらにはもちろん共通しているものもあるが夏のみのアクション・冬のみのアクションというものもあり、一見すると非常に全体把握が難しい。これらのアクションは上手い事相互に関連づけられているし、抽象的なアクションではなく具体的な行動が記されていてイメージすることが容易なため、何度か遊んで慣れてくると「最初に思ってたほど複雑じゃないかもな」と思ってくると感じるが、本作をボードゲーム初心者に勧めるには相当の勇気がいる。私であれば、いくつか別の作品を遊んでよほど天性の才能があると思わなければ本作を出すのを控える。
アクション数も4アクション×(夏5回+冬4回(つまり4年半))=36アクションと決して少ない上に、上記した「要求される食事の緩やかさ」によって食事を用意するアクションの比率が低下し、相対的に自由に打てるアクション数が結構な数ある。
絶対に打たなければならない強制アクションが少ないため、逆に思考回路を巡らす回数・時間を増加させる一因となり「結構重い」という感触を残す理由ではないかと思う。私が本作を重量級に入れたのもこのためだ。これは欠点というよりも特徴というべき点ではあるだろうが、自由度が結構高いため選択負荷がある程度かかることは肝に銘じておいた方が良いと思われる。
以上、本格的なレビューには程遠い、インプレッション記事ではあるがアルルの寸評となる。最後に、しっかりレビューを書けるほどの試行回数ではないにも関わらずベストに入った理由だが懐の深さにある。筆者は本作をソロでしか遊べていないが、2人用ゲームとして本作が成り立っているということは勝ち筋が複数あるということだ。その底がまだ見えていない。同梱の紅茶拡張はまだルールブックを読むことにすら至っていない。その時点ですら、既に多様な在り方で楽しめるのだ。
恐らく本作は「流行りなので今、遊んでおかないと」という類のゲームではなく、今後も引き続き長い付き合いができるゲームだと直感的に感じている。その「直感的確信」による、ベスト入選とご理解いただけると幸いだ。
オラニエンブルガー運河
さて、2023年ベスト10選最後の選出となるが、これもウヴェ=ローゼンベルク氏の作品であるオラニエンブルガー運河だ。
本作もFデッキまであるが未だBデッキまでしか遊べてはいない。かつ、ソロプレイのみ。しかし、これもベストの1本として選出させていただいた。
理由としてはシンプルで、建造物の使い方が新し面白い!というプレイ感に尽きる。
本作のプレイヤーボードは明らかに建造物を建設するスペースがあり、一見すると「ああ、建物建てて効果を発動するいつものやつね!」と思われそうだ。がしかし実態はこの想定を裏切り、建造物の効果を発動するには四方を経路で囲むか、その建造物に橋を架けるかの2択しかない。建てた瞬間には何も起こらないのだ。この感覚がまず面白かった!
建物の効果を発動するために必要となる「経路」には小道・道路・線路・運河の4種があり、建造物によっては囲む経路の種類や数によって得られるものや点数が変わることが結構ある。
できれば同じ経路が必要な建造物は近いところに建てたい。ただ、経路もそれぞれ資源が必要なのでそうポンポン作れる訳でもないし、最安値の小道が良い効果を生む建造物は基本的には無いのでなかなか苦しい。しかも、最終的に空いている経路はスペースごとにマイナス1点を喰らってしまうので経路は何とか埋めないとならない。
建造物の効果を発動するもう一つの方法、橋の方も一筋縄では行かない。橋というのは、経路を跨ぐ形で架けることができる形状となっているが、建造物同士を結ぶ橋を2つ架けた直後に建造物の効果が発動する。従って、橋で建造物の効果を発動する時は最低でも建造物3つを配置している必要があるということだ。
しかも、経路の場合は1つの経路を置いたときに同時に2つの建造物が四方囲まれた場合、どちらの建造物の効果も使用することができ、その効果発動の順番も好きに決められる。しかし橋の場合は2つの建造物に同時に2つ目の橋がかかった場合であっても片方の建造物の効果しか発動できない。
以上から、何の建造物をどこに建て、どの経路で囲み、どこから順に橋を架けて言って、かつ橋の2重発動を避けるか、という「位置取り」が非常に重要となる。これが良い意味で非常に悩ましい。
ソロゲームでは7ラウンド×4アクション=28手番、そして基本的に考えることは建造物の建築・経路の敷設・架橋・資源獲得という大まかに言えば4種の内容だけであり、一見シンプルなように見える。
しかし、どの建造物をどこから建て始めるか、どの種類の経路で囲うか、隣接させる建造物は何にするか、2重架橋にならないようにどこから橋を架け始めるかなどを一旦考え始めると本当にグルグル考えてしまい、あっという間に2時間経っていた…というのが大体お決まりの展開だ。そのため重量級に入れさせていただいた。
ただし、準備がかなり迅速な事は伝えておきたい!ソロで遊ぶ上でこれは非常に重要な情報だからだ。なんなら準備自体はヌースフィヨルドより早く済むかもしれないレベルである事は非常にプラスである。
ちなみに本作のもう一つの特徴であるホイール式資源管理だが、これは「祈り働け」や「グラスロード」でも使われている。
ただ、「祈り働け」の方は未プレイなので分からないが、グラスロードの資源管理とはいささか異なる。というのも、グラスロードでは基本資源と製造資源の動きは「基本資源が揃い次第、自動的にホイールが回転し製造資源が必ず作られる」というものだった。これがグラスロードの悩まさでもあり醍醐味でもあって「この基本資源が欲しいけど、それを増やした瞬間に製造資源が作られちゃう!結局増やした基本資源を消費されちゃうので無くなっちゃうぞ、さぁ困った!」的なジレンマがあった。
しかし本作では基本資源が揃っても製造資源(ゲーム内では「重要資源」と呼ばれます)が自動的に作られる訳ではなく、ラウンド中にお金を支払って回すか、またはラウンド終了時にボーナスで1段階、回すことができる。このため製造資源が作りづらく、お金を支払ってでも作るべきかどうか、と頭を悩ませることとなり、一見して似ているグラスロードとは明確に面白ポイントが異なっている。
私自身の感想だが、どちらかといえば本作はグラスロードというよりヌースフィヨルドの系統にあるゲームと感じている。しかし、ノルウェーの漁村を舞台として魚駒を使ったり長老が登場したりと牧歌的な雰囲気があったヌースフィヨルドに対し、割と機械的に見える本作はテーマが「工業発展」であることを考えれば良くマッチした作品であり、ここにもディテールに拘るウヴェ氏の技が光っている。
ただし、ウヴェ氏のゲームというと代表作のアグリコラやアルル、オーディン、ヌースフィヨルド等のイメージから「自然」「緑」「海」「動物」などを連想をする方が結構いるのではないかと思う。本作はこうしたイメージとはかなり乖離しており、「冷たく」「機械的」と感じる人が結構居るのではないだろうか。テーマを考えればむしろそれがマッチしている訳だが、「期待と違う」と感じてしまう方もいるかも知れない。これが弱点と言えば弱点だろう。
イメージが根付いている、という事にも難しさはあるのだなぁ、と感じた。
ちなみに本作もアルル同様、焦って遊ぶ必要のない、ゆっくり長く付き合えるゲームと感じている。私自身が悩みすぎるせいもあるかも知れないが、1プレイが結構重いため軽々しく遊べてないのが申し訳ないが、これからゆっくり色々なデッキを試していきたい。
最後に
以上です。2023年のベストをこの時期まで引っ張ってしまい、楽しみにしてくれていた方がいらっしゃったら本当に申し訳なかったです。伏してお詫びします。
ただ、中途半端な状態では書けない、と思って執筆が止まってしまったのですが、さらに時間が経てば経つほど自分の中でのハードルが上がってしまい、むしろどんどん書きづらくなっていったというのが正直な心中です。こうなるくらいならサラッと書いてしまえば良かった…と反省することしきりです。何とぞご容赦くだされば幸いです。
さて、自ら背負い込んだ荷物をようやく下ろしたようで、少しホッとしました。今後はnote記事はもう少し気楽に、もう少し高い頻度で書いていきたいと思ってます。そこら辺は次の記事ででも。
では今回はこれにて失礼します。長文をお読みいただき、ありがとうございました!皆様のボドゲライフに幸多からんことを。
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