和菓子とわたしと、和菓子のおはなし
私は、幼いころから和菓子が大好きでした。
とくに こしあんをよく好み、お饅頭やおはぎはもちろんのこと、夏には水ようかんに、冬にはお汁粉に、いつもほっぺたが落ちそうになりました。
カステラや「シベリア」も昔から好きです。
シベリアって、ご存じでしょうか。カステラ生地に羊羹をはさんだ懐かしいお菓子です。
幼いころ、母と一緒に家の近所のパン屋さんに行くと、いつもおねだりしていたことを思い出します。よく手をつないで歩道橋をわたり買いに行ったなぁ。
シベリアは、今でもよく製パン会社から販売されていますし、何より近代になってからできたもののようですので、きっと分類するとしたら「パン」(または「菓子」)なのでしょう。でも私の中では 、とびきりおいしい「和菓子」なのです。だって、シベリアを構成するカステラも羊羹も、和菓子なのですから。
そんな和菓子好きの私が、いちばん熱狂したのが、和菓子の中でも上等な上菓子! 上生菓子と呼ばれるものです。
子どもの頃からそのようなものが好きだったなんて、なんてナマイキな。と思われてしまうかもしれません。
けれど、日常的に触れる機会がそんなに無かったからこそ、そのスペシャル感が “スキ” に輪をかけたのです。
美しい上菓子と初めて出会ったときのことを、最近よく思い出します。
幼稚園の年中か年長の頃だったでしょうか。確かな年齢は覚えていませんし、それがお盆だったのかお彼岸だったのかもわかりませんけれど、祖父母の家に私の家族と叔父夫婦が集まった時のことです。
大好きな叔父夫婦が、お土産に上菓子の詰め合わせを持ってきてくれたのです。
子どもがいなかったせいか、私をとても可愛がってくれた叔父は、その箱を私に手渡しました。
「きれいなお菓子だよ。蓋をあけてごらん。」
そう言われて蓋を開けた途端・・・
さまざまな淡い色合いの、いろいろなお花が目にとびこんできて、私はその美しさに ひっくり返って驚き、狂喜乱舞したのでした。
その姿が相当におかしかったらしく、家じゅうが笑いに包まれたことを覚えています。
さらに、手渡された箱の中には、それぞれの “菓銘”と原料などの説明が書かれた紙が入っていて。「読んで!読んで!」と母にせがんでは、その説明を聞いて、また飛んで喜んだ私。
そんな出会いでした。
それにしてもあの時の私は、何をどこまで理解して、何を感じて喜んだのでしょう。
この国には 季節ごとに咲く色とりどりの花々があるということ、
それをこんなにも美しい和菓子に表現する文化があるということ、
表現するための繊細な技術があり、そこには四季を慈しむ あたたかな心が宿っているということ……
お菓子にはそれぞれに素敵な名前がついているのだということ、
わたしが知っている茶色いあんこだけではなく、ゆずとかさくらとか みどりのお豆とか、いろんなもので彩られて、個が生まれてゆくこと、
どれもこれも、「1番」美しかったこと……。
そのようなことは、今だから思うのでしょう。幼い日の私は、ただきれいなお菓子にびっくりしただけ。
けれど、あの時の、なごやかな空気の中に咲いた 淡い桜色の、柔らかな若菜色の、とろけるような蜂蜜色の甘い花々は、今の私の “スキ” のアンテナを動かしているようにも思うのです。(※2)
ちなみにその出来事を機に、叔父の上菓子のお土産はその後 何年も続くことになりました。そのたびに私は(年相応に)狂喜乱舞し、ひとまずその箱をひとりで抱え、愛おしく愛でてから、家族に「分配」するのでした。
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私にこんなにすてきな世界をみせてくれたその叔父は、病気で若くして天国へ逝ってしまいました。
もし今も元気でいたならば、今度は私が美しい上菓子を手土産に叔父のもとを訪ね、懐かしい思い出話をしたかったなぁと思います。もちろん和菓子のおはなしも。
和菓子っておいしいね、和菓子ってきれいね、和菓子ってやさしいね、和菓子ってなんだか儚いねって。
これが幼い日の わたしと和菓子のおはなしでした。
内容に関連して3つほど補足(脱線?)したいことがあります。最後にその3つのことと、今日の写真について触れたいと思います。
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■その1(※1)
村岡総本舗さんのシベリアは、ふわふわとやわらかくて、でも とてもしっとりして… 最高です! 羊羹の上下にはあんこが挟まっているためか、舌触りが滑らかなのです。
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■その2(※2)
和菓子のおはなしからは逸れるようですけれど、私の思い出に関連して。
私は先日、向後千春先生の「早期回想ワークショップ」に参加させて頂きました。
その際、改めて思ったことは、私の上菓子初対面の記憶には、やっぱり “今の私” が投影されているということです。現在の私が、星の数ほどある思い出の中からこのエピソードを選び思い出しているのですね。
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■その3
なぜか昨年くらいから、「和菓子を知りたい!」という衝動にかられ、少しずつ、私なりに知ることを意識していました。
そして知ったことについては、これまでに何回か(そっと?) アウトプットにチャレンジしています。
❍ こよみだより*十五夜*・・月見団子について
❍ こよみだより*秋分*・・・おはぎについて
❍ こよみだより*立冬*・・・亥の子餅について
❍ こよみだより*大暑*・・・かき氷について
一方で、インプット・アウトプットともできていないことは山ほどあります。今後も ゆるりゆるりと続けてみたいと思い、今日の記事を記しました。
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■今日の写真たち
すべて最近購入した単焦点レンズで撮影しています。これも ちいさなチャレンジです。
❍ ぷるん!とした『水まんじゅう』。
有田焼・今右衛門窯のお皿にのせて。
❍「森八」さんの生菓子
菓銘『秋海棠』
❍ 同じく「森八」さん
菓銘『初嵐』
❍ キャプションに「✽」をつけた2枚の写真は、『BRUTUS 』2022年2月1日号の p14を撮って、使用させて頂きました。
・・・ああ。またしても長文になってしまいました。。 おゆるしを。
最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
現在のわたしは、干菓子もあいしています。
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