うつわのおはなし ~有田焼・乃利陶窯で過ごす至福のとき~
唐突ではありますけれど、
この狸さん。。
オチャメではありませんか?
頭にキュッと手ぬぐい巻いて、そろばんを弾いているこちらの狸さんとは、昨年11月に佐賀県有田町を訪ねた際に、「乃利陶窯」さんの敷地内で出会いました。樹々の茂みの中、すっとんきょうな表情で(失礼)佇んでいるこの姿が視界に入ったときには、思わず二度見をしてしまった私です。
でも近寄って眺めているうちに、じわじわと愛着が湧いてきて... 一風変わった森の精のようにも思えてきました。
こんな精霊がいれば、商売繁盛間違いなし。そんなことを思いながら、和やかな空気に包まれたひとときでした。
*
乃利陶窯さんで過ごした豊かな時のことは、昨年のうつわ旅の中でも 強く印象に残っています。このnoteにも そのうち記録したいと思ってはいたのですけれど、のんびりしているうちに時が経ってしまいました。
遅ればせながら、今日はそのひとときを振り返ってみます。
(以後「乃利陶窯」。)
有田のまち
❏ わたしの有田旅行
昨年11月。
恒例の有田旅行に赴いた際に、私は初めて乃利陶窯を訪ねました。
そう。これまで何度も有田を旅している私が、“初めて”お邪魔したのです。
乃利陶窯がある有田町南山は、柿右衛門窯や井上萬二窯などが存在するエリア。
JR佐世保線沿いに位置する “やきもの通り” のような場所(赤絵町界隈)とは、ちょっぴり離れています。
有田には、広い範囲にたくさんの窯元が点在していますので、多くの窯をめぐりたいと思ったら、かなりの時間を要します。
ましてや美術館や神社なども観てみたいし、せっかくだから美味しいものも ゆっくり頂かなくっちゃとなれば、いったい何泊すれば見尽くせるのかわかりません。
しかも、私には「毎回訪ねたい窯元」が 複数あるものですから、それだけでタイムリミットを迎えてしまうことだってしばしば。。
このような状況ですので、まだ見ぬ窯元がたくさんあるのです。
それでも昨年は、3軒ほど “お初” に伺ったところがありました。
その中でも乃利陶窯は、それまで訪ねなかったことを後悔するほど、心安らぐ素敵な空間でした。
新たなパラダイスを発見してしまったようです。
❏ 個性と思い
有田のまちは百花斉放。
有田焼と一口にいっても、様々なタイプがあります。
柿右衛門様式や 色鍋島などの色鮮やかな「赤絵(色絵)」もあれば、人間国宝 井上萬二様の作品に代表されるように真っ白な「白磁」もあり、そしてもちろん、古伊万里から続く藍色の「染付」などもあります。
その絵付けや成形などについても、脈々と受け継がれる伝統を守り抜くものから、その伝統の上に立ち現代的な要素を革新的に取り入れられたものまでさまざま。
窯元によって、あるいは つくる人によって、それぞれの個性や思いが輝きあふれているのです。
町中に、さまざまな魅力がちりばめられているのが有田だと思っています。
乃利陶窯の魅力
乃利陶窯の作品は、白磁や染付が中心のようにお見受けしました。
乃利陶窯のそれには、どこか懐かしさや安らぎを覚え、他とは違うぬくもりを感じます。
うつわが纏う釉薬の色合いは、まるで手漉き和紙のよう。シンプルでぽってりとしていて、1600年代の古伊万里のようにも見えてくるのです。(私には。)
ホームページを覗いてみると、ご当主 樋口憲人さまのお言葉から、その特徴に納得します。
その作品たちをご覧に入れたいのですけれど、私がせっかくカメラに収めた何枚かの写真は、ほとんどがピンボケでした…。
かろうじて、見出し画像にしたものと、こちらはセーフでしょうか…?
いえ、アウトかもしれません。。
ちゃんとご覧いただけないのは残念なので、ホームページから何枚かのお写真をお借りします。
いかがでしょう。あたたかですよね。
そして、何より私がここでおはなししたかったことは。。
乃利陶窯では、ご当主が打つ美味しいお蕎麦を頂くことができるということです!
このご当主のお言葉で、おわかり頂けるかと思います。
お蕎麦は、その日の朝に、皮殻付きのまま石臼でゆっくりとひく十割蕎麦というだけあって、本当に風味豊かなのです。
もちろん使われているうつわも、ご当主こだわりのうつわです。
うつわ好きにはたまりません。
実は、この乃利陶窯のお蕎麦のことは、ある別の窯元のご当主から教えて頂いて知ったのですが、なんと、当日は、その方とご一緒に伺うことができました。
私はさらにスペシャルな時間を過ごすことができたというわけです。
室内には、乃利陶窯のご当主が現地で発掘された1600年代の陶片も展示されていました。
それにわくわくした私が、陶片について、双方のご当主に興味津々でおはなしを伺っていると、そのうちにご当主同士のおはなしとなり。。
「我々が子どもの頃には、川上から よく陶片が流れてきましたよねぇ。
1616年から100年の有田は・・・」
と、目の前で繰り広げられたうつわのおはなしに、私は極上のアンサンブルでも聴いているかのように夢見心地になったのでした。
あたたかな作品に囲まれて
お蕎麦によろこび
有田の歴史に思いを馳せて
季節のしつらえを愛でる至福のとき。
その うっとりするような時間を思い起こした今、
また一日も早く有田へ、そして乃利陶窯さんへ伺いたいと、うずうずしています。
今年も、うつわ旅が楽しみです!
*
お読みくださいまして、ありがとうございました。
こよみの上ではこれから小暑を迎えるというのに、早くも猛暑の日々。。
どうぞご自愛ください。
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