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自転車業界未経験の人間が集まって埼玉の大宮に自転車屋をオープンするまでの悪戦苦闘
※長いです。ちゃんと読むと10分前後かかります。
オープンして1ヶ月で見えてきた課題
初めましての方もいらっしゃるかと思います。私たちは「自転車を楽しみ続けられる世界を創る」というミッションを達成するために171WORKSという自転車屋を昨年末にさいたま市大宮区にオープンしました。ありがたいことに早速メンテナンスの依頼をいただいたり、自転車やパーツをご購入いただいたりしております。
ただ、ご来店頂いた方達の中でも以下のような反応の方もいらっしゃいました。
チリンチリン〜扉を開ける音〜
「ん?あれ?ここ違うのか?あれ?すいません間違えましたー!」
チリンチリン〜出ていく音〜
お客様「こんにちは〜」
私「こんにちは〜」
お客様「(自信無げに)ここって自転車屋さんですよね?」
お客様「お値段いくらくらいですか?値札とかないんですね、、、」
お分かりいただける通り、店舗として認識いただくことにかなりのリテラシーを要することに加えて入店する勇気を必要とするお店になってしまっていたのです。
「いや、店舗作るなら最初に考えるところでしょ。○鹿か。」と言うド直球な意見が飛んできそうなくらい基本的なことができていないことは重々承知しているのですが、こうなったのも私たちの創業から店舗化までの経緯が深く関わっています。
これは「整理整頓」という大きな難問と私たちがどのように格闘しているかの歴史であり、171WORKS悪戦苦闘の歴史が動く瞬間をまさにご覧いただいているというわけです。
この記事ではその歴史と、一旦現時点でどのような着地になっているかをお話しできればと思います。
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なんでそんなことになったか
はじまりは国道171号線(関西)沿いで
創業の源流まで遡りますと、店長の大学時代の小遣い稼ぎが始まりとなります。大学生の頃に大阪で自転車に乗り始めた店長が悟ったのです。
あれ?自転車いじるついでにいらないパーツ売ったらちょっとした小遣いくらいになるんちゃう?(店長は福岡出身のためエセ関西弁)
元々機械系のものをいじるのが好きだった店長はこうして自転車を買ってはバラしたり組んだり売って小銭にしたりと言う遊びにハマっていったのでした。そして好きなことにとことんのめり込める店長は数々のバイクを扱うことでメカニックとしての腕をぐんぐん上げていきます。
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しかし、そんな店長には致命的な欠点がありました。お片付けができないのです。これはもう逆に才能があるレベルで片付けができません。店長の大学時代の友人で店長の部屋に入ったことがある人はこう言っていました。
「あれは到底人間的生活が送れる環境ではない。」
しかしこの欠点が後々ポジティブな方向に作用することになるので一概に欠点とも言えないのが人生の面白いところです。
上京〜行田時代
就職を機に上京した店長は東京のサラリーマンをしつつ細々とではありますが副業の自転車業は続けていました。
ディスク化が進み、新車価格が高騰してだんだんと新車を買って自転車という趣味を始めるハードルが上がり始めた頃です。
店長の周りでも「自転車やってみたいけど高くて買えないよぉ」とか「買ったはいいけど続けられないなぁ」と言って自転車という趣味を始めれない、継続できない人もいました。
しかしその中でも店長が中古のバイクを提案することで、「それなら始められる、続けられる」という人たちも出てきました。
自分の趣味を楽しみつつ、ちょっとした人助けにもなるということで、本業のサラリーマンをしつつ店長はこの副業を継続しました。
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その頃、店長はお父上と同棲しており”港区タワマン男子”でありました。そのタワマンの部屋はとても綺麗で整然としていましたが、それはひとえにお父上が掃除と整理整頓をきちんとされていたからです。しかし、それもあくまで店長の部屋以外のスペースの話であります。
その当時の店長の部屋を拝見させていただいたことがあるのですが、部屋だと認識することに幾らかの時間が必要でした。100人が見て、それを一人の成人男性が生活する空間だと認識できる人は間違いなくいないと断言できます。これは過言ではありません。
コロナ禍を経て店長は埼玉の行田に移住します。ここでもその傍若無人な”お片付けキャンセルスキル”を発揮します。
同棲していた彼女さんと「自転車に使うのは5部屋中2部屋」という約束がなされていたらしいのですが、この約束はベルサイユ条約と同じ運命を辿ることになります。。。
この頃の部屋も私は知っているのですが、とてもここに掲載することはできません。食事中の方がいらっしゃったら気分を害される可能性があるので。
長野チャリ旅での転機
そんなお片付けキャンセルスキル全振りキャラの店長にも転機が訪れます。
長野でチャリ旅をしていた際に、パンクのためチューブが必要になり、とある街角の自転車店を訪ねます。
ここで店長は雷に打たれました。
その自転車屋は看板があるから自転車店とわかるものの、商品(?)なのかもわからない自転車パーツが人の背丈以上に積み上げられ、それが店の奥(もはや踏み入ることができないので”奥”と言う概念がない)まで続いているのです。
「ご、ごめんくださ〜い」
恐る恐る声をかけますが返事はありません。
「すいませ〜ん!どなたかいらっしゃいますか〜?」
「は〜い」
奥から自転車パーツの山をかき分けながら店主のご老人が出てきました。まるで俗世から離れて暮らす仙人です。
「25cか28cのチューブってありますか?」
「あぁ、確かこの辺に、、、」
そう言いながら仙人はドラえもんが四次元ポケットの道具を探すようにあれでもないこれでもないとタイヤを探します。そこには秩序という概念がない混沌とした光景が広がっていました。
ガシャガシャと音を立てる混沌を見つめながら店長はこう思いました。
このまま自転車業一人で続けてたら将来俺も仙人になるんじゃないか、、、
この時の経験もあって店長は一人で細々と自転車業を続けるのではなく、法人化して自分のできないところを補ってくれる仲間を探そうとなりました。
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そして大学時代の後輩である私が大宮に住んでいて、「大宮ええっすわ〜、ここ住まな損しまっせ〜(生粋のネイティブ関西弁)」と宣伝し続けていたこともあってか、古代蓮が咲き誇る街から、人口が多く東京へのアクセスもいい大宮に移住することを決めました。余談ですがこの辺りから私も本格的に事業に関わることになりました。
EC専業で法人化 大宮区 浅間町時代
さいたま市大宮区の浅間町のマンションの一室に腰を落ち着け、これまで感覚的に事業を続けてきた理由というものを言語化し、「自転車を楽しみ続けられる世界を創る」というミッションを明示してビジネスを拡大していくことになります。
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私やバイトの方達がその事務所兼倉庫に出入りするようになったわけですが、予想通り問題が多発します。
多くのパターンでは商品管理やピッキングの効率、発送オペレーションの改善などが課題になってくるかと思います。それらも確かに解決していくべき課題ではあったのですが、より根深い問題がありました。
この事務所、普通に店長の家でもあったのです。
先ほどの行田時代に起こったベルサイユ条約の一方的破棄はあくまで店長と彼女さんの家庭内問題だったのでどうでもいいと言えばどうでもいい話だったのですが、人を雇って事業を回していく上で整理整頓ができないというのは致命的な問題になります。
具体的にどのような問題が発生したのか見ていきましょう。
以下に代表的な課題だったもの三つを並べてみました。
文房具や工具などの備品が消える
在庫が管理しきれない
店長の私物が多いので謎の気遣いが必要
とても外部の人を入れれない
まず、備品について、所定の位置という概念が存在せず、基本的に数日でなくなります。使ったものを元に戻すことができません。元の場所という概念は存在しません。失くしたくないものは自分で責任を持って管理しなければ夜のうちに足が生えてスタコラサッサと逃げてしまいます。
在庫管理は目も当てられない状況でした。お客様からたくさんお叱りの言葉を頂戴いたしました。100%私たちが悪いです。ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんでした。
中には在庫として置いている間に破損したり傷が入ったなんてこともよくありました。
そして店長と彼女さんのパーソナルスペースですのでめちゃくちゃ気を遣います。社長の自宅に招かれているという状況です。何を触ってよくて何を触ってはいけないのか都度確認が必要になります。また、必要な道具の所在も都度確認しなくてはなりません。作業効率が非常に悪かったです。
これらのこともあり、とても外部の人を事務所に入れることができません。EC専業でやっているとはいえ実物を確認したいという方もいらっしゃいましたが、とてもお見せできるような様ではありません。普通に恥ずかしいです。パンツ一丁で電車に乗るくらい恥ずかしいです。
お引越しという最強のソリューション
これらの問題を解決するために、まず手書きでやっていたもののシステム化を進めることで在庫管理や発送時のミスが大幅に減りました。
そして店長の家を別の場所にお引越しすることで公私を分けるという試みを行いました。しかしこの試みは残念ながらあまり成果を挙げてくれませんでした。元々棲家だった場所なので部屋が増えたくらいの感じにしかなりませんでした。
しかし大きな転換点が訪れます。事務所の移転です。マンションだけでは在庫を抱えきれず、また、部屋を二室借りていたのでそれなりに家賃もかかっていました。SUUMOサーフィンを趣味としている店長の彼女さんが今の171WORKSのお店がある場所を見つけてくれました。ここへの引越しによりようやく公私も分けることができ、備品に足が生えてどこかへ逃げていくことも無くなりました。
つまりどういうことかというと
このような経緯で今の場所に移転してきました。そして店長はここまでほぼ自己資金のやりくりで成長させてきました。
普通は融資を得てそのお金でデザイナーや業者を入れてお店を作ってもらうというのがよくある流れなのでしょう。しかし私たちは自己資金ですので動かせる金額はそこまでありません。さらに店長を含め従業員全員が自転車店で勤務したこともなければ実店舗の経営などやったこともない上にそもそも自転車業界にはいませんでした。
お店を開店するノウハウも経験もありません。自由に使えるお金も大してありません。あるのは前の事業者が出て行ったままの状態の何もない空間だけ。
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店内のものは大体が素人のDIYです。壁紙と巾木を自分たちで剥がして張り替え、床を清掃し、新しい壁を設置し、陳列棚を作り、看板を作り、、、
その結果、入店に勇気のいるお店が出来上がってしまったというわけです。
どんな改善を進めているか
それでも良くなったこともたくさんあります。失敗したことを見てきたようにうまくいき始めたことも見ていただきましょう。
在庫管理ミス、発送ミスがほぼなくなった。
お店として人を招き入れることができようになった。
備品が消えることがなくなった。
入荷から出荷まで効率よく動けるようになった。
全部お店としてはできて当然と思われることばかりです。
「ヤンキーが改心して普通の人間になっただけで褒められるのはおかしい。」「マイナスがゼロになっただけ。」
まさにその通りです。
でも自分達だけでやってみるとこれらの当然のことはとても難しいことだと身を持って理解できました。街でお店をやってる方達への敬意の念が毎分9000リットル(秋田の玉川温泉の一箇所からの源泉湧出量)くらい湧き出してきます。
そして今行っている改善をご紹介します。
値札ポップをつける。
陳列を整理して見やすくする。
バックヤードの在庫も見たり買ったりしてもらえるようにする。
まず値札がありませんでした。オンライン専業でやっていたので値札がいるということすら見落としていました。バイトさんが可愛いポップを作ってくれています。
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陳列も「フレームとホイールと完成車全部店頭に出す!」という方針から一部のものだけ出してお客様に見てもらいやすいようにするという方向に方針転換しました。
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さらに、バックヤードにある在庫も見て買ってもらえるようにオンラインショップを鋭意製作中です。これはほぼできているのですが細かいところでまだボロがあるので、それらの修正を進めています。
店頭で在庫商品をざっと確認してもらう分には問題なくご利用いただけるので、もしバックヤードの在庫も見たいというご要望があればお申し付けください。
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引き続きよろしくお願いします。
長々と読み進めてくださりありがとうございました。このような形で私たちはまさに成長の途上にあるというわけです。
プロショップを経験したわけでもなければ、業界にいたわけでもない。ましてや小売店などやったこともない私たちですが、だからこそお客様にとって親しみやすいお店になれるのではないかと思います。
普通ならしないような転び方をするかもしれませんが(もちろん失敗しないよう最善は尽くします)、どうか温かい目と寛容な心で見守っていただけると幸いです。是非、お店に遊びにも来てください。皆様のご来店心よりお待ちしております。
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