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こんな舞台を観てきた(2023年12月)

毎年12月は気になる舞台が多い気がする。
2023年も例に漏れず、気になる作品がたくさん上演されていて、その中から6作品を観劇。(うち一つはミュージカルコンサート)

↑これまでの観劇記録はこちら↑


海をゆく者

とてもいいお芝居だった…!

2009年が日本初演で、今回が再々演。
私は今回が初鑑賞。

物語について

アイルランドの劇作家、コナー・マクファーソンさんの作品。
簡単に言うと、5人のおじさんが、お酒を飲んだり、ポーカーをしたりしている物語なのだけれど、そこから色々なドラマが見えてきて、とても面白い。

前半は怒鳴ったり叫ぶシーンが多くて、少し苦手かもと思ったけれど、小日向さん演じるロックハートが出てきてから、物語のテイストがグッと変わり、一気に引き込まれた。
最初はまともそうに見えたシャーキーが、実は一番ヤバい人だとわかってくる展開もゾクゾクした。

といった感じで、観ているうちにグイグイ引き込まれる戯曲だった。
私の知識不足もあり、アイルランドの文化や歴史的背景など分からない部分もあったが、基本的には家族愛・隣人愛といった万国共通の普遍的なテーマが描かれている作品だと思う。そういったところが受けて、再演を繰り返しているのではないだろうか。

演出・スタッフ

演出は栗山民也さん。今回も細部まで行き届いた、安心感のある演出。
栗山さんの演出作品を見ると、いつも照明が素敵だなと思う。
(照明=小笠原純さん・木下尚己さん)

美術は松井るみさん。
かなりセットが作り込まれていて、思わずオペラグラスでセットを鑑賞したほど。
年季の入った家の雰囲気がとても素敵だった。

小田島恒志さんの翻訳も、いい意味で翻訳劇っぽくなくて良かった。

キャスト

ロックハート役の小日向文世さん。
これまでご縁がなく、舞台で拝見するのは今回が初めて。
囁くように喋っても、しっかりと台詞が聞こえるベテランの技に痺れた。

リチャード役の高橋克実さん。
ラストの弟に対して優しい眼差しを向けるお芝居がすごくハマっていた。
これまでリチャード役は吉田鋼太郎さんが演じていたそうだけれど、確かに鋼太郎さんが演じてそうなキャラクターだなと思った笑
(特に一幕前半とかはノリノリで叫びながら演じてそう)

シャーキー役は平田満さん。
最初はまともそうなキャラクターに見えるだけに、後半のアルコールに完全に呑まれてしまう落差が大きく、衝撃的だった。

アイヴァン役の浅野和之さんは、いつかの三谷作品でも観たような味のあるキャラクター。(額からメガネをずり落とすテクニックが何気にすごかった笑)
高橋克実さんと二人で身体を張るシーンが多かったので、「どうかお身体に気をつけて…!」という気持ちになった。

ニッキー役の大谷亮介さんは、「マジ?」というちょっと若めの口癖が絶妙にハマっていた。

来年もこういうお芝居が観たいなと思うような素晴らしいお芝居だった。


東京ローズ

新国立の主催公演では珍しいミュージカル作品。
元々チケットは取っていなかったものの、ネット上での評判が良かったので観劇。

Z席について

今回は久しぶりにZ席を確保。
Z席は公演当日1,650円で販売されるリーズナブルな席種。
Z席で観劇するのは2019年の「夢の裂け目」以来。
当時は、朝劇場に並んでチケットを買ったが、コロナ禍でWebサイトにて簡単に買えるようになったみたい。

小劇場のZ席は、2階のバルコニー席の一部座席が該当。
前回の観劇時は、あまり見切れた記憶がなかったけれど、今回は多少見切れがあった。(この辺りは舞台セットによるかも)
ただそれを踏まえても、Z席は破格の安さだなと思う。

作品について

アイバ・トグリ(戸栗郁子)という実在する日系二世の方の半生を描いた作品。

正直、作品としてはまだまだブラッシュアップの余地がありそう。
ストーリーは少し焦点がぼやけている印象を受けた。楽曲もいいなと思うものをあったけれど、あまり耳には残らない。

また、今回のプロダクションでは、出演者6名が主人公のアイバ・トグリを順番に演じていた。
意外と違和感はなかったが、この演出の効果はあまり感じられなかった。

キャストはフルオーディションということで、全員申し分ない歌唱力だった。
一方でお芝居のレベルには少し個人差がある印象。
女性6人だけのお芝居なので、男性の役柄も演じるのだが、この辺りは力量がはっきりと別れるなと思った。

多少辛辣な意見も書いたけれど、この作品の上演もフルオーディション企画も新国立だから実現できたのだと思う。
観客として、今後もこういった意欲的な取り組みは続けて欲しいし、できる限り足を運んで応援したいと思う。
ミュージカル作品の上演もコンスタントに続けて欲しい。


萎れた花の弁明

ずっと気になっていた城山羊の会の公演を初めて観劇。
色々と新鮮で面白かった。

三鷹市芸術文化センター 星のホールについて

会場の「三鷹市芸術文化センター 星のホール」を訪れたのも今回が初めて。
市のホールでありながら、どこかアットホームな雰囲気がした。

今回の公演では、星のホールの元々の座席を取っ払い、テレビの観覧席のような階段状の仮設の座席を作っていた。
しかも全席自由席なので、スタッフの方が「ここ空いてますよ」などと声がけをしてくれ、小劇場のような雰囲気だった。

三鷹市芸術文化センターで勤務されている森元さんという職員の方が、前口上をされているのも斬新だった。

作品について

コメディタッチで描かれる、あけすけとした性の話だった。
国民性なのか、こういった作品は客席が引いてしてしまうケースもある印象だけれど、この作品は笑い声が絶えなかった。
(あまりいやらしい感じがしないカラッとした下ネタなのもいいんだと思う)
客席の客層は結構幅広く、若い方も結構多かった。

基本的にはコメディだが、信仰にまつわる物語でもあり、所々ハッとさせられるような台詞もあって、それがまた良かった。

物語のオチがあまりにも馬鹿馬鹿しくて、「私は三鷹に何を観に来たのだろう」と思ったが、こういった肩肘張らない演劇も面白いなと思った。

私はあまり観たことのないジャンルだったので、少し面食らった部分もあったが、新しい観劇体験ができた気がする。
来年の冬にも公演があるみたいなので、ぜひ観てみたい。


ジョン&ジェン

オフブロードウェイ発の二人ミュージカルで、今回が日本初演。
私は、森崎ウィンさんと濱田めぐみさんが出演の回を観劇。

二人ミュージカルということもあり、物語も比較的シンプル。
(脚本が弱いとも言える…)
もう少し小さめの劇場の方が作品に合っていそうだなと思った。

家族の話ではあるが、9.11など実際の事件も物語の中では取り上げられており、戦争の愚かさを説いている一面もあった。
この辺りはアメリカ発のミュージカルだなと思った。

演出

演出は市川洋二郎さん。
市川さんの演出作品では2016年に「Tell Me on a Sunday~サヨナラは日曜日に~」を観劇したことがある。(ちなみにこの作品は一人芝居で、今回と同じく濱田めぐみさんが出演されていた)
同じ少人数のミュージカルということもあってか、何となく演出のテイストが似ているところがあり、懐かしい気持ちになった。

前述した通り、作品的にはもう少しキャパを抑えた劇場で上演される作品な気もするが、会場の規模感に合わせた空間づくりがなされていた。

今回の「ジョン&ジェン」では、役者があまり袖にはけない形式が取られており、舞台上で着替えをしたり、水を飲んで一息ついたりするのが特徴的だった。
普段見れない裏側が見られる楽しさはあったものの、演出の意図はよく分からなかった。

キャスト

ジョン役の森崎ウィンさんは、自然体の演技が好印象。
クラシカルなミュージカルより、こういった現代的なミュージカルの方が合ってそうだなと思った。

ジェン役は濱田めぐみさん。
ここまで歌う役柄は久しぶりに観た気がする。
感情ほとばしる歌唱なだけに、印象に残る曲が少ないのが勿体無い。
一幕ラストで、聞こえるはずがないジョンの声を聞いて、ハッと天を仰ぐ表情が素晴らしかった。


ジャズ大名

舞台作品としてはこれが観劇納め。
年末にふさわしく?カオスで祝祭感のある作品だった。

一応物語はあるものの、後半になるにつれて、筋書きはほとんど意味をなさない。
私が観たことがある作品だと、「ロッキーホラーショー」が一番似たような雰囲気かなと思う。
よくわからないけれど、熱量が高いものを全身で浴びている感じ。
このテイストを受け入れられるか・受け入れられないかで、作品の評価は大きく変わりそう。(私は割と肯定的に受け止めた)

ハイライトは、終盤の20-30分。延々と続くジャズのセッションのシーン。
演者もミュージシャンも一体となり、舞台上で音楽を奏で、飛び跳ね、踊り狂っている様子は圧巻だった。
加えて、「水曜日のダウンタウン」のOP映像みたいな、独特の色使いの謎の映像が流れているし、一応江戸時代の話なのに、鯉のぼりやタイの仏像みたいな謎のセットも出てくるし、ひたすらにカオスな状況だった。

キャストでは、特に富田望生さんが圧巻。ストーリーテラーとしての立ち回りも良かったし、何より音楽に身を委ねる生き生きとした表情が印象的だった。

「萎れた花の弁明」や「ジャズ大名」といった作品が、公共の劇場で上演されているのは何だか嬉しい。
KAATは都内から少し遠いのは難点だけれど、意欲的なラインナップが多いので、来年以降も積極的に足を運びたい。


カウントダウンミュージカルコンサート2023-2024

ミュージカルのカウントダウンコンサートは何だか珍しい気がする。
私個人としても人生初のカウントダウンコンサートだった。

コンサートについて

上田一豪さんの構成・演出が良かった。
正直、ミュージカルコンサートは、披露される楽曲がある程度固定されているように感じる。
しかし今回のコンサートでは、出演者の持ち歌や2023年上演作品のナンバーを中心に構成されていたため、従来のコンサートとはひと味違うナンバーが聴けて、個人的には満足度の高い内容だった。

加藤敬二さんの「これぞ加藤敬二!」という振り付けも、劇団四季を約15年観てきた身としてはテンションが上がった。
"Oh, what a night"で足を高く上げているアンサンブルの方達を見て、「これこれこれ!」とオタク心がくすぐられた。)

ここからは各キャストについて一言ずつ。

甲斐翔真さん

実際に観るのは今回が初めて。

歌唱曲では、デビュー作の「デスノート」のタイトル曲が印象的。特に、最後の「新世界の神だから」の部分をシャウト気味に歌っていたことに、実際に演じていた説得力を感じた。

”School of Rock”はキャラクター的に演じることはないだろうけれど、ロック歌唱がとても似合っていて、コンサートならではの貴重なものを見られた感じ。
貴重と言えば、”Lady Marmalade”(ムーラン・ルージュ)では、ベイビードールのパートを歌っている姿がインパクト大だった。

堂々たる歌唱の一方で、木下晴香さんと二人のトークコーナでは、初対面で会話が弾まずワタワタされている様子が可笑しかった笑

木下晴香さん

久しぶりに拝見したけれど、やはり安定感がすごい。

屋比久知奈さんとのデュエットで「あなたは忘れない」(ウィキッド)が聴けたのが嬉しかった。声質も似ているのか、ハモリがすごく綺麗で、これまで聴いてきた中でも上位に来る素晴らしさだった。
また、「ダンスはやめられない」(モーツァルト!)は、情感たっぷりの歌唱で、引き込まれた。

saraさん

8月の「ファントム」で拝見する予定だったけれど、降板されてしまったので、こうして元気な姿を見ることができて何より。

まだ持ち役が少ないので、”All That Jazz””I Got Rhythm”などのスタンダードナンバーを中心に歌われていた。
アンサンブルを率いて、歌い踊る姿がカッコよかった。(加えて、英語の発音がとても綺麗!)

東啓介さん

2023年はミュージカルだけでなく、ストレートプレイでも拝見した東さん。

コンサートのトップを飾った"Oh, what a night"(ジャージー・ボーイズ)。
本公演で観た時より、さらに歌唱力と存在感がアップしていた気がする…!

"The Wells Fargo Wagon"(ザ・ミュージック・マン)の可愛らしい振付もとても似合っていた。

平間壮一さん

平間さんも今回が初めまして。

とにかくホスピタリティ溢れる本人の人柄が素敵!
他の共演者と積極的にコミュニケーションを取り、トークゾーンでは常に場を明るくする存在で、ファンの方は誇らしいだろうなと思った。

歌唱曲では”In the Heights”(イン・ザ・ハイツ)がとくに良かった。残念ながら、本公演は観られていないけれど、今回の立ち振る舞いを見て、ウスナビ役が似合いそうだなと思った。

三浦宏規さん

トークゾーンでは、共演者からいじられたり、オチ担当にされていて、そういうキャラクターなんだなと思った笑

平間さんと歌い踊っていた”You Can't Stop the Beat”(ヘアスプレー)はコンサートのハイライトだった。
間奏部分では、トリプルアクセルみたいな大技を繰り出していて、会場も大盛り上がりだった。

森崎ウィンさん

”Corner of the Sky”(ピピン)のような持ち歌も良かったけれど、個人的には”Neverland”(ファインディング・ネバーランド)が一番好きだった。
あまり声を張り上げない優しい歌い方と楽曲がマッチしていて、素敵だった。

今後の抱負として、「日本のオリジナルミュージカル映画を作りたい」という発言があり、ぜひ実現してほしいなと思った。

屋比久知奈さん

改めて歌が上手い…!
どの曲も声がビンビンと飛んでくる。
特に、”Dream Girls”(ドリーム・ガールズ)や”Lady Marmalade”(ムーラン・ルージュ)などの英語歌唱がカッコよくて痺れた。

トークでは、音楽監督の大貫さんと「サウナいいですよね〜」とフワフワした会話をしているのが癒しだった笑

海宝直人さん

今回はメインMCまで担当されていた。
カウントダウンコンサートという性質上、タイムキープが非常に重要なので、すごく気を遣われていた印象。
その様子を見て、真面目な方なんだろうなと思った笑

歌は聴く度にさらに上手くなり、「一体どこまで進化するんだ!」と思う。
特に圧巻だったのは、「日差しの中へ」(ノートルダムの鐘)。
ミュージカル歌唱のお手本のような歌い方で、他の追随を許さないレベルまで来ている気がする。


始まる前はどういうコンサートになるんだろうと思っていたけれど、とても満足度の高いコンサートだった。
特に、最後の「2023年メドレー」という2023年に上演されたミュージカルのメドレーは、一年の振り返りにもなり、とても楽しかった。

来年以降もこのようなコンサートを実施してほしいなと思う。




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