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子供の頃に読んだ本 『ウドンゲのなぞをとく』

 私が、科学好きになった、たぶん原点の本。『ファーブル昆虫記』などは、この後に読んでいる。この本は、全国読書感想文コンクールの課題図書でもあった。
 全国学校図書協議会のサイトをみると、全国読書感想文コンクールの第18回、1972年の課題図書に、『ウドンゲのなぞをとく』が載っている。これまで私が子供の頃に読んだ本として取り上げたものでは、第9回の1963年に『地球は青かった(20世紀の記録)』が載っている。これは知らなかった。
 『ウドンゲのなぞをとく』が課題図書だった、第18回では、『モチモチの木』も同じく小学生の課題図書となっている。こちらを知っている人は多いだろう。小学校の国語の教科書にも採用されているようで、世代を超えた認知度があるようだ。

 『ウドンゲのなぞをとく』を読んで読書感想文を書いたかどうだか実は覚えていない。理系の図書で感想文を書く生徒は少なかったので、私は何度か読書感想文のコンクールに学校から出たことがあるが、この本もそうだったかはもう覚えていない。何かの賞を貰った記憶もあるが、このコンクールでは無かったかもしれない。賞状は実家を離れたあと、私が家に残した多くの本や漫画と一緒に処分されたので、もう確認しようがない。
 課題図書だった本を、この本含めて何度か親に買ってほしいとねだったことは記憶に残っている。図書館にあるんなら、買わなくていいだろう、と一蹴されたが。そんなこともあって、自分が欲しい本は、小遣いをためて自分で買う、という習慣になった。

 この本の著者は、千国安之輔、絵は月田孝吉。著者の子供の頃のことから話は始まる。
 家の電灯の笠に、糸の先に丸い球がついているような、奇妙なものが幾つもくっついているのを見つけた著者が、これは何なのか、と興味を持つところから始まる。
 祖母にこれは何かと尋ねると、これはウドンゲというもので、縁起の悪いものだから、知らなかったことにするのがいい、と言われる。父からは、そんなことは迷信で、ウドンゲというのは、仏教で三千年に一度花が咲くという植物のことだ、と教えられる。
 その後、中学になって、理科でウドンゲというのは、クサカゲロウという昆虫の卵だと知って、この虫の観察を始め、クサカゲロウの生態を明らかにしていく。

クサカゲロウ

 ページ数は35ページ、小学校低学年向けの本だが、あとがきに、
「この本が、多くの子どもたちの、自然に対する科学的な見方や考え方をやしなうことに役立つならば、わたしにとって、これにまさる幸せはありません」
 と、著者は書いている。
 私はこの通りに、この本が科学的な見方や考え方を学ぶ最初の一歩になった。その後多くの自然科学の本を読んだり、動植物の観察や天体観測などもするようになったが、科学者にはならなかった。紆余曲折あって、コンピュータ関連企業で働いたりしているのは、多少なりとも科学について学んだことが糧となっているような気もする。
 小学校の低学年でこの本と出合ったのは、今となって思えば、幸運だったと言えるのかもしれない。

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