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【一粒の思考】2022年、DEIを推進する

2022年が明けました。本年もよろしくお願いいたします。

さて、今年の私の目標はいくつかあるのですが、その中で「DEI推進」について書きます。

⛵「DEI」とは

DEI」(デイ)とは、「Diversity, Equity and Inclusion」の略です。「Diversity」は「多様性」と訳されることで定着しているように思います。しかし、「Equity」と「Inclusion」の和訳は難しい。「Inclusion」は、「包括」とか「包摂」と訳されたり、訳することを諦めて「インクルージョン」というカタカナ表記も多く見かけます。日本語でしっくりとくる単語が無いのですよね。

Equity」については、個人的には「衡平」(こうへい)が正しい和訳だと思うのですが、「衡平」は馴染みない単語なので「公平」を用いることにしましょう。「Diversity, Equity and Inclusion」は、「多様性、公平さ、インクルージョン」と訳している例を見ましたが、現時点ではこれが一番よいのかもしれないと暫定的に思っています。

ただ、「D&I」(Diversity & Inclusion)の訳が固定化しないまま「D&I」という単語が定着したように、「DEI」(デイ)についても「DEI」という単語そのものが定着したら良いなと思います。

DEI」(デイ)は、「D&I」に「E」を加えることで、もう一歩前に進めようとするものです。「E」(Equity)の意味については以前、別稿で書きましたのでそちらをご参照ください。

⛵「ジェンダー平等」よりも「ジェンダー・エクイティ」を

ジェンダー平等」(Gender Equality、男女平等)という言葉があります。確かに、男女が平等であることは最終的に目指す姿です。しかし、最終目標をお題目のように唱えても、それが実現するわけではありません。大切なのは、それをどのように実現するのかということです。

Equity」(エクイティ、公平さ)は、それをどう実現するのか、考えます。「Equity」は、「Equality」を実現するための手段なのです。

出典:Gender Equity Vs. Gender Equality: What’s the Distinction?

田原総一朗さんと長野智子さんが実現に向けて取り組む国会議員のクォータ制も、ジェンダー平等を実現するための手段の話であり、まさにジェンダー・エクイティです。

このようなエクイティな活動に対し、「むしろ男女不平等で、逆差別だ」という反対論が起きます。しかし、私は「平等」という結果を達成するために、公平な手段を用いることはむしろ好ましいと思うのです。

もう一度書きますが、「男女平等な社会を」という目標を唱えているだけではジェンダー平等は実現しません。大切なのは、「平等」を実現するための手段を考え、それを実践することです。

⛵DEIな社会とは

私たちは、すべての人が平等に扱われていない現実を直視し、それを解消するために頑張る必要があると思うのです。そして、これはジェンダーギャップ(男女格差)だけでなく、あらゆる「個人」の問題です。

すべての人が抱えている「格差」や「社会から取り残されていること」、「生きづらさ」に向き合い、その原因に向き合いましょう。そして、それらを解消できるように、前向きに取り組みましょう。

【DEIな社会とは】
全ての個人が、個人として尊重され、公平・公正に扱われる。
あらゆる人にとって、社会参加の障壁がない。差別がない。
ひとりひとりの人生が豊かである。個人がいきいきと活躍できる。
個人が他者の存在と価値観を尊重(リスペクト)し、互いに刺激する。
多様な個人が繋がることにより、新しい社会の新しい価値を創造する。

これは、私が現時点で考えている、「DEIな社会」の姿です。

⛵DEI推進とは、SDGs実現である

ジェンダー平等は「流行語大賞2021」にもノミネートされましたが、同じくノミネートされたSDGs(Sustainable Development Goals)の目標5(ジェンダー平等を実現しよう)でもあります。そして、DEIは目標5(ジェンダー平等)だけでなく、目標4(質の高い教育をみんなに)や、目標8(働きがいも経済成長も)、目標10(人や国の不平等をなくそう)にも関係します。

目標4.3:2030年までに、すべての女性及び男性が、手頃な価格で質の高い技術教育、職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。
目標4.4:2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
目標5.1:あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
目標5.5:政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
目標8.5:2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一価値の労働についての同一賃金を達成する。
目標10.2:2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々のエンパワーメント及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
目標10.3:差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。

持続可能な開発のための2030アジェンダ(仮訳)

いま、多くの企業や団体、個人がSDGsの実現に向けて努力しているところだと思います。DEIを推進することは、SDGsを実現しようとすることそのものです。ですから、私たちは、SDGsのど真ん中だと思って、自信を持ってDEIを推進したら良いのです。

なぜ、これを強調しておくかと言うと、社会の一部において、「脱炭素・脱プラスチック・環境保護に取り組んでおけばSDGsに取り組んでいることになる」という言い訳(エクスキューズ)を使って、足元の格差や排除の問題(DEI)を疎かにしている動きを感じるからです。メディアも、気候変動(地球温暖化)や環境保護という人類全体の分かりやすい危機にばかり飛びついて、格差・排除問題(DEI)の議論から逃げてはいないでしょうか。

DEIをSDGsのど真ん中に位置付けて、社会全体が取り組む必要があります。

⛵日本中のあらゆる組織でDEIを推進しよう

私の目標は、日本中のあらゆる組織でDEI(デイ)を推進することです。私が所属する日本オリンピック委員会や日本セーリング連盟のようなスポーツ界だけでなく、あらゆる社会や業界、企業や団体、政府や自治体においてDEIを推進し、社会全体が真の「平等」を実現できるようにしたいと思います。

すでにDEI推進に取り組んでいる企業も出てきていることは嬉しいことです。

ぜひ、皆の力を合わせて、社会全体でDEI推進に取り組みましょう。

2022年は、その第一歩にしたいと思います。

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