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経営組織論と『経営の技法』#324

CHAPTER 12.3.2:古典的組織変革のプロセス ⑧再凍結その2 継続性
 変革を変革時のものだけでなく、日常時のものにするためには、変革が連鎖的に起こること、そして変革が戦略やビジョンのような新しい組織の方向性として確立することが挙げられます。つまり、変革時に起こったいくつかの変革を一時的なものとせずに、次から次へと起こすように組織的なサポートを行うこと、あるいは変革を促す取組みを継続的に行うこと、そして、いくつかの変革がなされた後に、それを束ねるビ ジョンや戦略をトップが立て、それによってミドルの突出が組織における公式的なものとして裏打ちすることが重要になります。
 ダイエットや禁煙がそうであるように、組織は一時的な活動で大きく変わることはありません。最初の瞬発的なエネルギーは必要だとしても、それだけではなく継続的な変革の動きが行われることで、組織に定着していきます。
 多くの組織変革の失敗は、瞬発的な組織変革は行われても、継続的に変革を持続していく取組みが少ないことによります。そのためにはトップの継続的、中長期的な変革へのコミットメントが必要になります。また、ビジョンや戦略として新しい変革の動きを束ねていくことで、試験的だった戦略的な突出が組織としての公式的な活動として裏打ちすることも、変革の状態が新しい組織の均衡状態になることを示す重要なアクションです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』279~280頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 前回に引き続き、変革を定着させることの重要性やその方法が検討されています。
 ここでは、それを繰り返し行うことで定着させよう、という意味でプロセスに重視しています。前回は、変革の内容という静的な側面に重点が置かれていましたが、今回は、それを継続的に行いましょう、という動的な側面に重点が置かれている、と対比できそうです。
 これを、変革と関連付けて見れば上記テキスト本文のように変革プロセスの一部と見ることになります。
 けれども、変革後のフォローも他の業務のフォローと同じように、PDCA等のレビュープロセスの一環であると位置づけることも可能です。もちろん、変革した業務については業務が安定し、定着するまで慎重にフォローする必要がありますが、PDCA等でレビューすべき業務は変革した業務に限りませんから、変革した業務だけに限定してしまわないように、全ての業務に共通する問題として位置付けた方が良いかもしれません。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、変革の機運を高め、流れを作り出し、やり遂げる資質が重要であることは当然ですが、それを定着させるための地味な過程も疎かにしない配慮も重要となります。

3.おわりに
 思い付きや臨時の仕事に終わらせるのではなく、新たな日常の仕事にすることがポイントになります。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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