経営組織論と『経営の技法』#312
CHAPTER 12.2:組織のライフサイクル ⑩まとめ
組織は、放っておいても大きくなるわけではありません。製品やサービスが市場で受け入れられれば、事業の規模は拡大していくことになりますが、それに伴い、それぞれの段階での危機にうまく対処しなければ、特定の段階で停滞することになります。
また、もし危機への対処を間違えれば組織は活力を失い、衰退していくかもしれません。組織の規模が拡大することで、組織は新しい段階へと進む、つまり組織は変化していくことになりますが、そのためには、 それぞれの段階の危機にうまく対処する必要があるのです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』273~274頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】
この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。
1.内部統制(下の正三角形)の問題
上記本文では、組織は大きい方が良いとも言えるような議論がされています。小さくても幸せな会社は沢山ありますから、それこそ会社のオーナーや経営者の好みの問題の面もあります。
けれども、大きな会社には大きな会社なりのメリットが沢山あります。何よりも、小さな船より大きな船の方がしけに強く、社会の荒波や時代の変化を乗り越えられる可能性が高くなります。経営者として多くの従業員やその家族の生活を預かる立場になると、責任感から会社を少しでも安定させたい、と考えるようになります。そうすると、やはり会社を大きくしたい、と考えるのです。
なので、会社を大きくして安定度を増したい、したがってそれに伴う「危機」やデメリットを克服する、という発想です。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、経営者に期待していることは必ずしも会社を大きくすることではないはずです。もちろん、安定的に配当してほしいと願う株主も多いでしょうから、安定的に経営ができ、安定的に利益を上げ、安定的に配当できるような会社に育てていくことは、経営者として評価されるべきことです。
けれども、近時は大きければ良いというわけではなく、大きい方が小回りが利かず、危険を避けきれずにもろに損害を被るようなこともあります。それだけ社会の変化が激しくなっているからです。
そうすると、下手に現状を固定するような安定や、ただ会社が大きいから安定を感じるだけではなく、むしろ適切な大きさのまま利益率を高めていくような経営をすることも重要な選択肢になります。安心したい気持ちから闇雲に会社を大きくするのではなく、それを我慢して、常に利益と会社の安定のための情報のアンテナを張り巡らせて、緊張感をもって経営するタイプの経営者ということになります。
3.おわりに
組織の衰退にも言及されています。この衰退は何によって図るのか、というと組織の大きさよりも組織の活力ではないでしょうか。組織の大きさは、適正なものが良いのであって、ただ大きければいいわけではないからです。
※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。