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労働判例を読む#425

【ブレカリアートユニオン(拠出金返還等請求)事件】
(東京地判R4.5.24労判1268.13)

※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法)
※ 司法試験考査委員(労働法)
※ YouTubeで3分解説!
https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK

 この事案は、労働組合Yに勤務していた会社(2社)とのトラブル対応を依頼していた元組合員Xが、Yに対して、意に反する和解を勝手に行った、Yで働いていたのに違法に懲戒解雇された、Yは会社から得た和解金の一部を根拠なく(拠出金名目で)、しかも弁護士法に違反して違法に取得した、等と主張した事案です。
 裁判所は、Xの請求をいずれも否定しました。

1.事実認定の問題
 ここで、和解がXの意に反するものかどうか、XがYに雇用された労働者かどうか、という点は、いずれも事実認定の問題として位置付けられ、結果的にXの主張がいずれも否定されています。
 和解に関して言えば、Xも和解書に押印しているなど、納得していたことが認定されており、労働者性に関して言えば、Yの活動の手伝いをXの任意の時間に行っており、指揮命令がなかった、と認定されています。
 これらの論点については、Xの主張に無理があったように見えるのですが、高裁でどのように判断されるのか、注目されるところです。

2.実務上のポイント
 労働組合が個別の労働事件に介入するだけでなく、報酬に相当するような金銭を取得することが、弁護士法に違反しない、という判断が、明確に示されたのは、もしかしたらこの裁判例が最初かもしれません。弁護士法に違反する、という判断を避けるために、組合の「活動費」などの名目で、和解金の一部を受け取る場合が多いようです。けれども、もはやこのような運用が社会的に定着しているようにも見える状況で、この判決によって実務が影響を受ける、ということは無さそうです。現状を追認するような内容だからです。
 したがって、会社に組合がない場合でも、外部のユニオンに加入して団体交渉を要求してくる、という交渉方法について、交渉方法自体に問題があると争うことは、現在、非常に難しい状況にある、と評価できます。

※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!


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