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「ギャラリー カント」:彼の哲学をわかりやすい絵にしてみました ーその1 


「カントの哲学」について

 まず、カントの哲学について書いておきます。

 カントの哲学は、「人間の認識の限界とは何か?」「道徳とはどのように成り立つのか?」といった問題を考えたものです。彼は「理性」を重視しながらも、人間には認識できる範囲があることを示し、さらに、道徳は「自由な意志」によって成立すると考えました。

1. 「人間の認識には限界がある」——純粋理性批判

 カントの哲学の出発点は、「人間は世界を正しく認識できているのか?」という問いでした。たとえば、私たちは目で見たり、耳で聞いたりして世界を知ることができます。しかし、それが「世界そのもの」なのかと聞かれると、実はそうではありません。

 カントによれば、人間は「現象」しか認識できず、「物自体(ものそのもの)」は認識できません。たとえば、私たちは「りんご」を見たり、触ったり、味わったりできます。でも、それは「私たちの五感を通じたりんご」であって、「りんごそのもの」がどんなものかはわかりません。これは、私たちの認識が「感覚」と「概念」によって成り立っているからです。

 カントは、人間の認識には「フィルター」のようなものがあると考えました。このフィルターを通してしか世界を知ることができないため、「物そのもの」は絶対に分かりません。つまり、「世界は私たちの頭の中で作られている部分がある」ということです。

2. 「理性にはできることとできないことがある」——理性の限界

 人間の理性はとても優れたものですが、万能ではありません。カントは「理性にはできることと、できないことがある」と考えました。たとえば、「この世界はいつ始まったのか?」「神はいるのか?」といった問いは、理性では決して答えられません。なぜなら、私たちの経験や感覚を超えた問題だからです。こうしたことを「超越論的」な問いといいます。カントは、「そういう問いに答えようとするのは無駄だ」と考えました。

3. 「人間は自由な意志を持つ」——実践理性批判

 カントは「人間の行動」にも関心を持っていました。人間はなぜ「正しいことをしよう」とするのでしょうか?

 カントは、「道徳は自分の理性によって決まる」と考えました。たとえば、「嘘をついてはいけない」という道徳的なルールがあります。でも、なぜ嘘をついてはいけないのでしょうか?「人に嫌われるから」でしょうか? それとも「罰を受けるから」でしょうか? カントはそうではなく、「理性がそれを命じるから」だと言います。

 彼は「定言命法(ていげんめいほう)」という考え方を示しました。これは、「○○ならば××せよ」という条件付きの命令(例えば、「お金が欲しいなら働け」)ではなく、「無条件に正しいこと」のことです。たとえば、「嘘をついてはいけない」は、どんな場合でも成り立つべきルールです。もし「嘘をついてもいい」となれば、世の中は嘘だらけになり、誰も信用できなくなります。そのため、嘘をつかないことが正しいと理性は判断するのです。

 このように、カントは「人間は理性によって道徳を作ることができる」と考えました。

4. 「人間は目的として扱われるべき」——道徳の根本原則

 カントは、人間を「目的として扱うべき」と考えました。つまり、「人を手段として利用してはいけない」ということです。たとえば、「友達を利用して自分の利益だけを得る」といった行為は、人を道具として扱っていることになります。カントにとって、それは間違った行動です。人間はみんな「尊厳」を持っており、決して道具のように使われてはいけません。

 この考え方は、現代の「人権」や「平等」といった価値観の基礎になっています。

5. まとめ

 カントの哲学を簡単にまとめると、以下のようになります。

  1. 人間の認識には限界がある → 「物そのもの」は認識できず、私たちは「現象」しか知ることができない。

  2. 理性にはできることとできないことがある → 神や宇宙の始まりなど、経験を超えた問いには答えられない。

  3. 道徳は理性によって成り立つ → 「嘘をつかない」などの道徳は、理性によって無条件に正しいとされる。

  4. 人間は目的として扱われるべき → 人を手段として利用するのではなく、尊厳を持った存在として大切にする。

 カントの哲学は難しいですが、「人間の理性の限界を知ること」「自分の頭で道徳を考えること」「人を大切にすること」といった考え方は、私たちの社会にとってとても重要です。彼の思想は、現代の倫理学や法律にも影響を与えています。

 ここでは、そのような彼の哲学を「比喩で表し、わかりやすい絵」にしてみました。
 哲学という難解なものを、視覚で直感的に理解し、イメージとして脳に永く保存することができます。
 以下でご覧ください。

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「ギャラリー カント」

1. 認識の限界と人間の思考(『純粋理性批判』)

〈比喩〉人間の理性は、灯台の光のようなものだ。遠くまで照らすが、海の果てを映し出すことはできない。

〈意味〉カントは『純粋理性批判』で、人間の理性には認識の限界があることを示しました。私たちは物事を合理的に理解しようとするが、それでも世界の本質(物自体)を完全に捉えることはできません。この比喩は、人間の知性が広大な真理の一部しか照らせないことを表しています。


2. 道徳と自由意志(『実践理性批判』)

〈比喩〉道徳の法則は、暗闇の中の羅針盤のようなものだ。嵐の中でも方向を示すが、それに従うかどうかは船長次第である

〈意味〉カントは『実践理性批判』で、「道徳法則(定言命法)」を説きました。つまり、道徳は普遍的なものであり、それに従うことが倫理的な行為の基準となります。ただし、人間には自由意志があり、道徳を選ぶかどうかは個人の判断に委ねられています。この比喩は、道徳が確固たる指針であるものの、実行するかどうかは個々の選択であることを示しています。

3. 美と崇高の経験(『判断力批判』)

〈比喩〉美は、湖面に映る月のようなものだ。手を伸ばせば消えてしまうが、その光は心を満たしてくれる。

〈意味〉『判断力批判』では、美と崇高について論じられています。美は主観的な経験であり、対象を所有することではなく、その瞬間の感動に意味があります。この比喩は、美が手に入れるものではなく、感じ取るものであることを示しています。

 ★ 続編があります。後日記載します。


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