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かやかや


 わたしの幼いころのはなし。

 ある日の夕方。
 母方の祖父母のうちからの帰り道。

 いとこたちと楽しく過ごした時間が名残り惜しく、わたしはさみしい気持ちになっていた。

 もっと1日が長かったらいいのに。また、あの公園にみんなで行きたい。いとこ2人とわたしたち姉妹3人。段ボールを敷いて、またあの山みたいな長い滑り台を滑るんだ。

 とってもスピードが出て、怖いけれど、楽しいの。今度は、後ろ向き滑りにもチャレンジしよう。5人で連なって、滑りっこもしたいなぁ。次は、いつ行けるかなぁ。


 車の中、妹たちは疲れて眠りこけ、わたしもぼんやりとしていた。車の窓におでこをくっつけて、流れてゆく景色を見る。眠い。

 突然、家々の間から、ひょいっとお月さまが出てきた。うわぁ!明るい!大きい!すごく近くにいるみたい。


 車が走る。
 お月さまも一緒についてくる。

 どこかでついてこなくなるはずだと思って、ずっとお月さまを見ていた。でも、ずっとついてくる。不思議だなぁ。お月さま、わたしを好きなのかな。いや、うちの家族が好きなんだ。わたしの家に、遊びに来たいのかもしれない。



 うちに帰ってからも、なんとなく気になって、寝る前に外に出てみた。お月さまは、空の上の方に登っていって、ずいぶんと小さくなったように見える。

 雲がなく明るい夜だ。月明かりで影ができる。ちょっと、踊ってみる。わたしの影も一緒に踊る。なんだか、おもしろい。さみしい気持ちがやわらいだ。


 また、空を見上げる。
 かやかや。※

 ありがとねぇ、お月さま。
 おやすみなさい。





※ 煌々として明るいさまを表す名古屋弁。



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