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イチジクジャムはたっぷりと


 休日のある日。

 起きなくてもいいのに朝はやく目が覚めてしまった。やけにおなかがすいている。

 そうだ、ホットケーキをやこう。家族だれも起きてこないうちに、やきたてを食べるんだ。なんだかウキウキしてきた。

 いつもより時間をかけて準備をする。材料をていねいに混ぜて合わせ、フライパンを熱する。ぬれふきんの上にフライパンを置いて、少し熱をとってからやき始めた。特大サイズのホットケーキ。

 幼かった子どもたちに読み聞かせた絵本「しろくまちゃんのほっとけーき※」の一場面を思い出す。しろくまちゃんがおかあさんといっしょにほっとけーきをやくところ。

 「ぽたあん。どろどろ。ぴちぴちぴち。ぷつぷつ。やけたかな。まあだまだ……」

 つぶやきながら、ホットケーキをみつめる。ふわりと裏返し、いいあんばいのやき具合ににんまりする。ふたをして2分。はい、できあがり。ほかほかのホットケーキ。

 大あわてでバターとメイプルシロップを並べる。イチジクジャムも。

 お皿にまるいままホットケーキをのせて、出来たてをいただく。ほぉうとため息がでる。ふんわりと柔らか、バターの風味とシロップの甘さが絶妙だ。これなら何枚でも食べられそう。あっという間に1枚まるまる平らげた。

 あっ。イチジクジャムを忘れてた!

 おなかはだいぶ満たされたけれど、イチジクジャムのホットケーキも食べたいな。2枚目を焼いちゃおう。来週は年に1度の健康診断だ。4分の1枚だけにしておこう。それでも、イチジクジャムはたっぷりと。

 イチジクのつぶつぶとろりとした甘さが、ホットケーキのふわふわ感を引きたてる。この度はちびちびじっくり味わった。イチジクジャムを作っておいてよかったなぁ。


「しろくまちゃんのほっとけーき」
こぐまちゃんえほんシリーズ
わかやま けん 作
株式会社 こぐま社


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