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サッカーにはおやつを


 16才の息子が、社会人サッカーチームに正式に入会した。ユニフォームも注文済みだ。背番号は50番。少年サッカーをしていた頃と同じ番号だ。ユニフォーム姿をみるのが楽しみでしかたない。

 年始に、新しいスパイクを購入し、毎日の自主練にも力が入る。前のシューズには、みごとな穴が開いていた。アスファルトの庭先で、スパイクをはくと、削れてしまうようだ。


 ある休日。夫は仕事。13時から5時間ほど、息子のサッカーチームの練習があり、それに付き合う。わたしと別れ、息子はグラウンドに向かう。チームのメンバーさんは、20代から30代の男性。練習試合が多く、試合時にはメンバーのパートナーさんや、ご家族が一緒にみえるらしい。

 少し前のわたしなら、グラウンドまで行って、チームのメンバーさんたちと、お近づきになろうとしただろう。けれど、もうやめた。人と関わろうとしたら、それなりにできるけれど、本当は苦手だ。気を遣い過ぎて、後でぐったりとしてしまう。

 息子は、未だ体調に不安があるから、慣れるまでは近くで待機しようと思っているが、それ以外は、息子が必要と思ったことを、息子自身がすればいい。

 わたしはグラウンドに隣接する図書館にいることにした。一度うちへ戻りたい気持ちもある。でも、息子が慣れるまでは、ひとがんばりしたい。

 読みかけだった「ウニヒピリ」の本を1冊読み終わり、感動をしみじみ味わう。それから、忘れぬよう大事だと思う箇所をノートにメモした。時計を見ると、まだ1時間ほどしか経っていない。

 目が疲れてきたから、外で日向ぼっこをする。日差しがあり、暖かい日だ。今日はコートがいらないな。暑がりなわたしには、ちょうどいい心地よさ。

 グラウンドでは、練習試合が始まったようだ。近くまで行き、息子を探す。みな同じように見える。真新しい水色のスパイク。あっ、息子。がんばれ!と念を送る。

 息子がボールを追いかけて、走っている。速い。体力が戻ってきて、疲れにくくなってきた。それでも、今日帰宅したら、バタンキューだろうなぁ。先に、お風呂を勧めて、その間に夕飯を作らないと。

 冷えてきたから、また図書館へ。無理はしないようにしよう。

 コミックエッセイコーナーへ行く。益田ミリさんの「僕の姉ちゃん」と「スナック キズツキ」と、ねこまきさんの「ねことじいちゃん」を読む。うなづき、考え、笑い、うるっとする。

 お腹が空いてきた。これからは、息子だけではなく、わたしもおやつを持ってこなくては。いや、できたら、ちょっと離れるが、喫茶店にでも行ってきたい。じりじりと、距離を伸ばす作戦。まずは、息子に相談しよう。

 もう一度、外へ。練習試合は続いているようだ。息子はまた走っている。目を凝らして見ていたら、息子にシュートチャンスがやってきた。あっ、息子の目の前にディフェンスはいない。「シュート!」と、思わず、叫ぶ。息子、見事にシュートを決めた!やるじゃん!わたしがガッツポーズ!

 17時になった。長い。そうして、この文を書き始めた。わたしの頭、もう新しいことは入らなさそうだし。でも、アウトプットはいけるかもしれないと思って。

 我が息子ながら、サッカーをよくそんなにできるものだなと思う。体力のいるスポーツだ。5時間の練習…息子、今、どうなってる?外に目をやると、とっぷりと日も暮れている。寒くはないだろうか。

 17時半。
 予定よりはやく、息子が図書館に来た。そんなに疲れは感じない。ホッとした。

 「腹減った…。」

 あなたもおやつ、忘れたのね…



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