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なんでもない日

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なんでもない日のつぶやき
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#エッセイ

季節と記憶と匂い

季節と記憶と匂い

夏を代表する匂いとは何だろうと、ふと考えた。

春は野菜の実りに向けて鋤き起こした土と肥料の匂い、秋は金木犀の甘い匂い、冬はつめたく乾燥した外気の匂い。

これは夏特有だと感じる匂いは、そういえばぱっと思い当たらない。

夏は匂いより視覚、触覚の要素の印象が強い。目に沁みいるような鮮やかな木々の葉の緑、じりじりと肌を焼く強い陽射し、衣服の内側で肌を伝う汗、熱を反射するアスファルト、乾いた喉を心地よ

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ふゆのあさに-2021.1/20

ふゆのあさに-2021.1/20

時刻は午前6時20分。

どうせ出勤前に着替えるのだからと、寝間着の上から厚手のもこもこしたコートを羽織り、手袋を嵌め、2つのごみ袋を手にゴミ捨て場へ向かう。

ここ数日は降雪及び積雪はおさまり、その代わりとでも云わんばかりに朝夕の冷え込みが厳しい。

朝方ちらついた雪で白くなっているアスファルトに足を取られかけ、かろうじて踏みとどまる。

アスファルトを薄っすら白く染めている真新しい雪の下は、凍

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喉鼓の秋

この時期の新潟の空の主役といえば、雲。

冷たい雨や霙を傘で受け止め、薄暗い空を横目に、ハンガーにぶら下がる洗濯物の群にため息をこぼす日々。

気分転換にお気に入りの本を開いたり、イヤホンを耳に押し込んだり。

そしてもう一つの楽しみ、食事。

仕事帰りのきょうだいがスーパーで買ってきた、割引シール付の総菜やお寿司が戦利品のごとく、ダイニングテーブルに次から次へ並べられていく。

空腹の状態でスー

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