ベッドタイムアイズ 山田詠美
時として名を持たない関係がある。少なくとも僕はそう思う。
そもそも関係に名前なんて必要なのだろうか。
恋人、愛人、友人、親友、セックスフレンド。
名のついた関係の中で、両者はその役目を演じてはいないか。
人が本当に出会い、体で会話する。
心なんて後からどうにでもなるのではないだろうか。
人間だってセックス動物の一種。
打算や見返りや、約束のない恋愛。
そういったものは現代社会では非難されやすい。
しかしそれこそが魂の交わりなのではないか。
小説という体を取りながらも、全てが詩のような言葉の配列。
計算と衝動のバランスは性行為さながらである。
人生の中で一度でも魂の交わりを持つことができれば、
動物としての勘を取り戻せるのかもしれない。