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「荒井注のカラオケボックス」のような状況

 ザ・ドリフターズの初期メンバーだった荒井注さんは、晩年に副業としてカラオケボックスを経営しようと思い立ち、静岡県伊東市に大規模な専用の施設を建てた。

 ところが、完成した建物は各部屋の入口が狭く、「部屋の中にカラオケ用の機材を搬入することができない」という致命的な欠陥を抱えていたのだ。

 設計をした業者は逃げ出してしまい、結局、このカラオケボックスは一度も使用されることなく廃墟と化してしまった。

 この事件はテレビのワイドショーでも何度か取り上げられ、インタビューに応じた荒井注さんは、
「何だバカヤロウ!!」
 と、往年のギャグを交えて答えていた。


 昨年12月に、学習指導要領の改訂に向けた検討が中央教育審議会に諮問された。生成AIの発展などを踏まえ、知識の集積だけでなく、深い意味の理解を促す学びのあり方などが検討課題になっている。

 一方、今の学校現場には、多様な児童生徒への対応、教職員の長時間労働の問題をはじめとする課題が山積している。新しいことを受け入れるための「入口」は、かなり狭くなっていると考えたほうがいいだろう。

 無理やり詰め込もうとしても、「荒井注のカラオケボックス」のようになってしまうに違いない。

 学習指導要領の改訂に際しては、こうした「入口」の狭さのことを念頭に置いておかないと、学校現場には伝わらないものになってしまうのだ。

 そうなったときに、
「何だバカヤロウ!!」
 と、学校を非難してもダメなのである。

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