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「ないものねだり」から「あるもの探し」へ
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今から7年前の2016年5月に、ある小学校の授業を参観したときのことだ。その学校の研究テーマは「ICTの効果的な活用」だった。
まだ「1人1台端末」など夢の話で、デジタル教科書もそれほど普及していなかった時期である。参観したクラスの授業で活躍していたのは、実物投影機と大型テレビだった。
まず、実物の教科書の上に透明なシートを被せ、その上にマジックで書き込みをする。それを実物投影機を使って大型テレビに映し出すという方法で、「擬似デジタル教科書」にして活用をしていた。
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別のクラスでは、授業の最後にまとめをする際に、大型テレビの画面に粘着性のある紙を貼り付けていた。これもデジタルとアナログの融合である。
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参観する教職員は、学校に数台しかないタブレット端末のほかに、デジカメを使って授業の様子を撮影していた。
放課後の検討会では、タブレット端末の画像とともに、デジカメからプリントアウトした写真をもとにしながら話し合いが進められた。
「あれがない」「これもない」
ICTに関しては、文句を言い出したらキリがないだろう。
GIGAスクール構想によって「1人1台端末」が実現した今でも、アプリのこと、ネットワークのこと、機器のこと等々、「○○がない」という状態は続いている。
しかし、ICTを上手く活用をしている学校は、「ないものねだり」ではなく「あるもの探し」をしているのだと思う。
そして、「ないものねだり」をしている学校に本当は何が「ない」のかと言えば、それは「あるもの」を探そうとする姿勢や工夫なのだろう。