読書の記録 1月
読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。
1月
①村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」1部
②村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」2部
① 2023年1冊目は「ねじまき鳥クロニクル」第1部。久々の読書と多忙で読むのにはいささか時間を食った。昨夏以来に読んだ村上春樹作品は文庫本の中に閉じ込められて出てこられなくなる感覚を思い出させてくれた。本を開けばそこには僕が生きている現実世界の流れを全く気にすることのない世界が僕の力の一切及ばない領域で進行している。本を閉じて少しの間は現実世界の流れに身を任せるのが居心地悪いものであったりするほどだ。主人公が妻の不倫に気付いていく様は今観ている韓国ドラマ「マイディアーマイミスター〜私のおじさん〜」の主人公とダブるところがあって強めに感情移入してしまった。何を考えようにも頭が働かないことやワンピースのチャックをあげた時に見た妻の背中とオードコロンの匂いとの描写が繰り返される点にはリアリティがあった。長い年月を重ねた夫婦にもふとした時に互いに異性を意識することがあり、文学的には"ある日突然何気なく意識すること"が二人の安定した生活を乱す何かの暗示になっているのかもしれないと思った。
モンゴル軍たちが山本(?)の皮を削ぐシーンは目も覆いたくなるほどに鮮明に想像できて読むのが苦しかった。映像作品のグロテスクなシーンは目を塞ぐことで作品は進行させつつ自分を切り離すことが可能になるが、文章作品は自分が少しでも主体性を失うと途端に物語が遮断されてしまう。読みたくないが読まずにはいられない、文庫本の中に閉じ込められる経験というのはまさにこういうことだと思い出した!ま、第二部は図書館に無いのでkindleで読むけど!
② 続編を読む。第一部で暗示されていたことがだんだん明らかになっていく。大きな裏切りは無かった。物語の展開としては単調で、文学的リアリティの元にそう描かれて然るべき道の上をゆっくりと手押し車で進んでいくような印象だった。だからこそレトリックはまばゆい光を放ち続けた。
好きな描写があまりに多かった。読みながらにしてここはもう、完璧だ、と息をつく描写が何度も眼前で波のごとくうねった。『人間失格』を読んだ以来の衝撃だった。思考回路を一度通過したことのあるもので未だ言葉になっていなかったものたちに次々に明晰な筆致で言葉が与えられていくさま。快感のあまり身震いがした。畏れにも似たゾクゾクが幾度も訪れて誰かに教えたくなった。でも感じたものをそっくりそのまま教えられるものでは到底なかった。そういう経験が文章によってもたらされるのは泣くよりも哀しくて笑うよりも嬉しいことだった。どのように力を注いでも誰とも分かち合えなくて、だけどそのまま誰とも分かち合えなくたっていいことがある。笠原メイは言った。「私はそれが私の中で勝手に膨らんだり縮んだりして私を揺さぶるときの感じをなんとか人に伝えたいのよ。でもそれはわかってもらえない。もちろん私の言い方が悪いということではあるんだけど、でもみんなは私の言うことなんてロクに聞いてないのよ。」
特に好きだった描写は「暗闇の描写」「クミコと愛を育む過程で岡田亨が感じたこと」「クミコの手紙」「午後七時半の野球場」などなど。Kindleのいいところはマーカーを引いて残したりすぐに戻れるところ!三部は図書館で借りて来たけど。読む!
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