ビジュアル博物館の思い出
コロナ禍のために気軽に美術館や博物館に行くことができなくなって、もう半年ほど経つだろうか。あの静かな空間を懐かしんでいた時、ふとビジュアル博物館を思い出した。
ビジュアル博物館をご存知だろうか?爬虫類、魚類、骨、昆虫など様々なテーマについて、古今東西の知識を紹介する映像作品である。大きな目玉マークがロゴとなっており、「タンタタタターン、タンタタタターン〜♪」というテーマソングが癖になる。「博物館」と名がついているように、真っ白な廊下に様々な動画が陳列?されており、視聴者はナレーションと共にそれらを巡る形式となっている。映像作品とは別に書籍も刊行されており、そちらはより多くのテーマを取り扱っていた。
自分は小学生の頃に、このビジュアル博物館をいたく気に入っており、市立図書館で借りて、何度も繰り返し観たものである(ちなみに当時はVHS現役である)。教育映像であることは間違いないが、編集や動画のチョイス、ナレーションはコミカルにも仕上げてあり、小学生でも飽きさせない造りであった。
印象に残っているのは骨格(死、だったかもしれない)をテーマにした回である。博物館の中を回るのは人体骨格だ。彼は自分の姿が骨であることには気がついておらず、骨が骨の博物館をうろうろするシチュエーションがシュールではないだろうか。あるワンシーンでは、扉を開けると全面鏡ばりの部屋となっており、彼は自分の姿を正面から見ることになる。彼はその姿に怯え、走り去る。ここでのナレーションは骨がもたらす死への恐怖を説明していたはずだ。そして、最後のナレーションは「死は誰しも平等にやってくるのだから!」。メメント・モリ。
そこで得た知識は色々あったろうが、正直ほとんど覚えてはいない。たとえ覚えていたとしても、もはや古い情報となっているだろう。しかし、小学生時分に刷り込まれた博物学への興味関心は今も自分の中で脈々と息づき、枝葉を伸ばしている。
少し冒頭のコロナ禍に引っ掛けた話をすると、リアルのデジタル化が盛んになっているが、単にデジタルに置き換えるだけでは意味がない、ように思う。もちろん、関係者の苦労も知らずに好き勝手を言うのであるが、デジテルならでは付加価値をぜひ付けていただきたい。まず何事も存在を知ってもらうことから始まる。その点ビジュアル博物館は知識量は決して多くはなかっただろうが、人を惹きつける工夫が非常に凝らしてあった。
と、まあ、これ以上は素人考えでボロが出るだけなので控えるが、何が言いたいかと言えば、ビジュアル博物館は面白かったというただそれだけである。オチも何もない。今はもう貸し出しや販売などしていないのだろうか?ブルーレイになっていたら買って観てみたいものである。
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