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【本要約】一人でもできる映画の撮り方


第1章 基本カメラワーク編

1.カメラ・ポジション決定法
カメラポジションとはカメラの位置のことであり、普通に立った時の眼の高さの位置を「アイレベル」、それより高い位置を「ハイポジション」、低い位置を「ローポジション」という。
ハイポジションは俯瞰が一般的。その特徴は画面サイズによって変わってくる。人間が入るくらいの狭いサイズで狙った場合は、人を見下したような冷たさを感じさせる。それに対し広いサイズの風景ショットは、ゆったりした優越感と客観性を感じさせる。
ローポジションはあおりとも呼ばれる。迫力が出てドラマチックな画面になる。
映像作品の面白さは色々なポジションで撮られたショットの組み合わせ、つまりは編集にある。撮影する時は一つのポジションに拘らず、いろんな視点から捉えてみよう。

2.フレームサイズ決定法
フレームサイズには大きく分けて4種類ある。「ロングショット(遠景)」、「フルショット(中景)」、「バストショット(近景)」、「クローズアップ(接写)」(名称や撮影範囲は人によって様々とのこと)
サイズに関しては狙う被写体が大きければ大きいほど、それが持つドラマチックな意味合いも大きくなる。そして映像の場合、集中度の強い画は疲れるので、継続時間は集中度が強い分だけ短くなる。これが大原則。
・ロングショット
いわば風景ショットであり、状況説明ショットである。それを観ただけでそのシーンがどんなところで繰り広げられているか理解できる。カットの切り替わりなどで多用される。
・フルショット
大きさから言えば人間の全身から七分身が写るくらいのショット。動きに主体を置きたい時のサイズである。より自然な演技を撮りたい時はフルショットになるよう望遠レンズで遠くから被写体を撮る。そうすると人物がカメラを意識せず自然な動きを捉えることができる。
・バストショット
頭から胸の下ぐらいまで納めたショットのこと。このショットの特徴は安定感。映像作品ではセリフを語るときなどによく使われる。安定感のあるショットなので使いやすいが連続すると飽きが出てくるので要所で俯瞰やあおりのショットも付け足しながら違いを出せるといい。
・クローズアップ
眼や指など被写体を超アップで撮るショット。ドラマチックに見せたいときや演出として含みを持たせたいときによく使われる。画面にリズムを持たせるために長い時間よりは短い時間で見せると効果的になる。

3.パン活用術
画面を固定して撮影することをFIXと呼び、カメラの位置を動かさず左右に振ることを右パン(左から右にカメラが動く)、左パン(右から左へカメラが動く)と呼ぶ。上下移動のことをパンアップ、パンダウンと呼ぶ。
パンさせる目的としては舞台の紹介、動いている被写体を追いかける、意外性を作り出すなどがある。カメラを振るだけなので特別な技術を用いず誰でも使える技術だが、使用するときはパンする前の被写体よりもパンした後の被写体をどう見せたいかについて考えることが重要。映像作品全体でパンが多いと画面酔いの原因になるので注意。

4.ズーム撮影術
普通のレンズは固有の焦点距離と視野角度を持っている。ズームレンズはそれを構成するレンズのいくつかの位置を同時に前後に動かして、焦点距離を長くも短くも変えてしまう。つまり、これによって画面の視野の広さと倍率を変え、対象物を大きくしたり、小さくしたりすることができる。ズームによる引きのことをズームアウト、寄りのことをズームインという。
ズームアウトすることで舞台全体の紹介ができ、印象としては開放感を与えることができる。逆にズームインでは視点を一点に誘導することができ、印象として緊張感を与えることができる。

5.移動撮影術
カメラの位置が固定のパンやズームとは異なり、移動撮影はカメラを動かして撮影する方法だ。移動撮影には被写体を側面から狙ってみる横移動。被写体に向かって前進したり、徐々に離れていく縦移動。縦移動の前進移動のことをトラックアップ、後退移動のことをトラックバックと呼ぶ。次に上昇したり下降したりして被写体を捉える垂直移動、上昇をクレーンアップ、下降をクレーンダウンと呼ぶ。最後に被写体の周りを回る回転移動などがある。

第2章 究極の撮影アイディア

1.カットの長さ
映画やビデオが写真と根本的に違うのは「時間」を持っている点にある。動きがあればそこには長い、短いの時間が深く関わってくる。
知覚できるくらいの短いカットをパッパッパと連続して繋ぎ合わせる手法をフラッシュバック効果という。この繋ぎ方は映像作品のリズムを生み出す。
長いカットはサスペンスやアクションよりは対象をじっくり見つめるドキュメンタリーに適している。ワンシーンをカットで割らずにじっくり見ていく、そうすることで見るものを対象に没入させることが出来る。

2.編集のつなぎを考えた撮影法
二つのカットをつなぎ合わせるときは被写体の位置、動き、目線の三つを一致させなければならない。万が一繋がらなかった場合にはインサートカットを挟む。被写体の部分に寄ったポン寄りと呼ばれるカットでつなぐ繋ぎ方をマッチカットという。
動きのある被写体を撮る場合、一つの方向から狙ったらその方向をむやみに変えてはいけない。ある一つの想定線、すなわち「イマジナリーライン」を決め、カメラはそのラインを超えず内側からだけ撮るようにする。

3.主観ショット活用法
主観ショットとは主人公の眼になりきって周りの風景を写しているショットのことをいう、別名一人称視点。この場合カメラポジションはアイレベルにする。
主観ショットに変化を出すときはパンやズーム、トラックアップ、俯瞰などの技法と組み合わせると良い。
主観ショットを挟みこむだけでその場の臨場感が見るものに生々しく伝わり、場合によっては当事者の心理までをも的確に表現することが出来る。

4.静止画活用術
映像にアクセントをつける撮影方法。ある一部分を静止画を使うことで作品自体にメリハリをつけることが可能。
静止画の素材として、写真、ポスター、カタログ、新聞、手紙、地図などがある。静止画を挟む場合はカットの長短で尺を変えたり、ズームやパンなどで変化を出すとより効果的。編集するときにフェーディングで繋ぐことで静止画の変わり目に表情をつけることが出来る。

第3章 レンズ・フォーカス技法

1.レンズの特性
ヒトの肉眼に最も近いとされている視野角度は縦が21度、横が28度である。これを標準レンズと考え、これより視野の狭いレンズを望遠レンズ、広いレンズを広角レンズと呼ぶ。
レンズから明瞭な像を結ぶ焦点の位置、フィルムやCCD撮像板までの距離を焦点距離という。望遠レンズの場合は焦点距離が長くなり、広角の場合は短くなる。
ピントが合って鮮明に見える範囲のことを焦点深度と呼び、望遠レンズは被写体が浅く、広角レンズは深くなる。

2.望遠レンズ活用法
・近寄れない対象を撮影する
・背景をぼかして人物を鮮明にしたいとき
→望遠は焦点深度が小さい。被写体にピントを合わせたときその前後がボケる。
・遠近感のない画作りをしたいとき
→手前と奥に対象物がある(縦構図)の場合、望遠レンズを使うとピントは全体に合いながら奥行きや遠近感がなくなる。
・空間を狭い感じに表現したいとき
・パンして臨場感を強調したいとき
→視野角度の狭い望遠レンズでパンすると、標準レンズの時に比べ背景の動きは少なくなる。スピード感はないが横の動きが強調されて臨場感を演出できる。

3.広角レンズ活用法
・広い視野を得たいとき
→広角レンズは周辺部の直線が曲線になってしまうという欠点もあるのでその点は注意
・遠近感を現実以上に強調したい時
→広角レンズではパースペクティブ(遠近感、奥行き)を現実以上に誇張する。ミニチュア撮影など距離感や立体感を強調したい場合に使用されることが多い。
・パンや移動でスピード感を強調したい時
望遠レンズとは逆で広角でパンした時は背景が早く動く。臨場感よりスピード感を出したい時は広角レンズで撮る。

4.パン・フォーカス術
パン・フォーカスとは縦構図の物体の手前にも奥にもピントが合っている状態のこと。パン・フォーカスにするときは広角レンズを使ったり、光量を絞りで調整することで実現させることが出来る。
モンタージュは何かしら手を入れた作り物や嘘臭さがつきまとう。それに対しパン・フォーカスやワンシーン、ワンカットのアンチモンタージュは手を加える余地がないだけに現実をシャープに捉えることが出来る。また複数の動きを同時に見せたいときなどに使ったりする。

5.ソフト・フォーカス術
ボケの効果を積極的に活かそうとする方法がソフト・フォーカス。
特定の人物をスターのように撮りたいときや現実を誤魔化したい時に使う。

第4章 照明・色彩術

1.照明術
カメラの性能が良くなって誰もが簡単に映像を撮れるようになった今、プロとアマの差が出るとすれば照明の使い方にある。撮影する時の順序として「一に被写体、二に照明、三にカメラ」と呼ばれるくらいである。
照明の役割とは影を作らないようにするのではなく、影を創ること。光の濃淡をつけることで被写体を平面や立体、美しく見せたりする。
基本ライティングの三灯照明にキーライト(主光線)、フィルライト(補助光線)、タッチライト(逆光線)がある。

2.7つのライトポジション
フロントライト(正面光)、プレーンライト(斜前光)、サイドライト(側面光)、レンブライトライト(反逆光)、バックライト(逆光)、トップライト(上方光)、フットライト(下方光)

3.光の影の演出法
不気味さを演出する時はシャドーを取り入れ、ロマンチックなムードを出したい時はシルエットが最適。

4.色彩術
画面全体を支配する色のトーン、すなわち色調によって作品の雰囲気はまるで違ってくる。
例えばオレンジの色調であれば暖かさの象徴、青い色調であれば冷たさクールな印象を与えることができる。フィルターをかけて撮るなど色調をコントロールする撮影方法はあるが、最近では編集ソフトで色のトーンを変更できるので、その時に色彩について意識してみると良い。

第5章 録音術

1.マイクの色々
・無指向性マイク
カメラの内蔵マイクに多い万能タイプ。現場の雰囲気を伝える。
・単一指向性マイク
向けた方向の音を収録するタイプ。ハンドマイクは音を選択するのに便利。
・超指向性マイク
指向性マイクをより強力にしたタイプ。ガンマイクは騒音の中から目的の音を拾い出す。
・ピンマイク
動く人物の声をクリアに録るタイプ。ワイヤレスマイクならば動きが自由。
・集音マイク
遠くの音を効率的に集めるパラボラ集音器。

2.録音の方法
・同時録音
・アフレコ(アフターレコーディング)
・プレスコ(プレスコリング)

第6章 編集理論編

1.編集の基礎知識
何のために編集をするのか
→余分なカットを切るため/イメージを強調するため/テンポとリズムを作るため/ストーリーを作るため

2.カット・バック編集術
編集の繋げ方
・直列編集
出来事が起こった順番にA→B→C→Dと繋げていく
・回想編集
時間軸を前後させて編集。例えばA→B→A→C→Aなど
・並列編集
全く異なったシーケンスを繰り返す編集方法
Aa→Ab→Ac→Ad/Ba→Bb→Bc→Bd
異なるシーケンスで、Aa→Ba→Ab→Ac→Bb→Bc→Ad→Bdのように繋ぐ

第7章 編集実践編

1.場面転換の方法
・スーパー処理
字幕スーパーで場面転換する方法。分かりやすいという利点がある分、安易なイメージを与えてしまうことは否めない。
・フェードインとフェードアウト
黒の画面から映像が徐々に現れてくることをフェードイン、普通の画面が徐々に暗くなっていくことをフェードアウトと呼ぶ。フェーディングはカットの余韻を残したい時、話を一時休止したい時などに利用する
・フォーカスインとフォーカスアウト
ぼんやりとした画面から徐々にピントが合うことをフォーカスイン、普通の画面から徐々にぼんやりさせていくことをフォーカスアウトと呼ぶ。
フォーカスインは登場感を強調させることが出来る。フォーカスアウトは演者が失神したときなどの演出で使われることが多い。
・アイリスインとアイリスアウト
黒画面の黒部分が徐々に開いていくことをアイリスイン、画面両端から閉まるように黒画面になることをアイリスアウトと呼ぶ。レトロな映画ではよく使われていた。
・ワイプ
画面の一端からワイパーのような一本の線が出てきて、サッと画面を横切っていく。その線を境界線として次の画面が現れ前の画面を消し去っていく技法。

2.オーバーラップ
消えていく画面に重なって、次の画面が出てくる手法。フランス語ではディゾルブと呼ばれる。O.Lは画面のつながりをスムーズにし、ゆったりとしたリズムを与える。時間の経過や場所の変化、回想への導入などによく使われる。

3.時間操作
スローモーション/早回し/ストップモーション

第8章 ダビング術

1.音の種類
セリフ/ナレーション/効果音/現実音/音楽/無音

2.無音の生かし方
心の空白状態を表す/緊張感を盛り上げる/不安を与える/静寂な空間を感じさせる

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