詩「曲線にかたまる挽歌」#5/9
父さんの日常は凡てが乏しくなっていった
立つこと叶わず曲線にかたまっていった
筋肉という筋肉が弱り何もできずに精神の地獄に陥る
体がどれほどいうことをきかなくても
表情を表す筋肉まで動かなくなっても
頭は冴えているらしい
体も動かず
声も出せず
誰にもその脳の躍動を伝えることができない
ただ聞くしかない
だた考えるしかない
嘆きを
苦痛を
愛を
訴えることすらできない生き地獄
もう絶対に治らない
誰にも開けることができない精神の牢獄
最後に呼吸する筋肉が弱り
死ぬ
さもなくば
人工の呼吸器をつけることで
精神のみの塊は生きながらえることができる
曲線にかたまる
芋虫
いや芋虫よりも動くことができず
表現は自由ではない
父さんは表現ができなくなっていく
二度とジョークも言えなくなっていく
呼吸器をつけて地獄を続けるのか
呼吸器をつけずに先に逝くのか
俺ならどちらを選ぶのだろう
君ならどちらを選ぶんだい