詩「曲線にかたまる挽歌」#9/9
父さん
父さん俺はいま力尽きようとしている
俺にはまだするべきことがあるような気がする
ただ俺はもうどうしようもできなくなっていて
父さん
父さんなら俺に何を言ったのか
俺は
誰にもあこがれなかった
好きな教師なんて一人もいなかった
ただ
父さんが教師だったから
俺も教師になった
誰もが誰かの死を不公平に感じる
俺は何を感じたのか
父さんが水銀とともに俺にぶつけたもの
そこに
俺はいまさらになって
父さんから聞き漏らしたものを探している
父さんの唇の動きを
聞き漏らすために
聞き漏らすために父さんの病室に通っていた
俺はいま力尽きようとしている
父さん
父さんがいれば俺は今どれだけ救われるのだろう
父さんは自分のことを誠実だといった
自分の人生は誠実であったと
俺は
俺はその言葉を聞いて俺の人生に誠実であろうと思った
俺の好きなように
したいことを思うがままに
他人に誠実なのではなく
俺の欲望のおもむくまま誠実を言い訳に生きて
俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺 俺 俺
俺
そして俺は多くを裏切った
多くをなくしてしまった
俺は大きく間違ってしまった
父さん
俺はもう誠実ではなくなってしまった
父さん
俺はもう誠実ではなくなってしまった
父さん
父さんが買ってきたドーナツやハンバーガーを食べなかった俺を許してくれ
俺が喜ぶだろうと土産を買ってきてくれた
そんな父さんの気持ちを誠実を失ってから初めて気づいたんだ
いつだって俺はつまずいている
病室で6月の脳をかきむしる
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