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【翻訳】政治イデオロギーにおけるジェンダーギャップはなぜ広がっているのか(2022年8月19日)

エリック・カウフマン氏による政治的なジェンダーギャップに関するエントリの要約・解説記事になります。

[以下要約]

〜文化戦争の問題について、男女の意見が割れつつある〜

この女性のボーイフレンドはウォークしぐさとして写真には写っていない。(photo by Gav Goulder/In Pictures via Getty Images)

先日、中道派の評論家マシュー・イグレシアスが、18歳から29歳までのアメリカ人の政治的イデオロギーに関するギャラップ調査の変遷をツイートした。

このグラフでは、男女間のイデオロギーに関するギャップが拡大していることが示されており、男性ではなく女性の間で「リベラル」の割合が急増している。二極化が進むにつれて、中道や「わからない」といったイデオロギーを選択する若者は減少しているものの、女性だけは極端に左傾化しているのだ。

イグレシアス氏にリプライした人の中には、この傾向は大学に進学する女性の割合が増えたことに起因すると考える人もいた。事実、学生に占める女性の割合は1970年以降42%から60%に上昇している。

しかし、大学生における女性比率の高まりだけではこの現象を説明することはできない。高等教育研究機関(Higher Education Research Institute:HERI)が新入学生を対象に行った大規模な調査のデータを参照してみよう。この調査ではアメリカの184の大学から約100,000の学生をサンプリングし、高等教育のあらゆるレベルを代表するよう重み付けされている。灰色と青色の棒グラフを比較すると、70年代には女性は男性よりもリベラルではなかったが、2004年のブッシュ政権以来着実に男性よりもリベラルになってきていることがわかる。

2016年までに自身をリベラルと認識した女性は過去最高の42%であり、対して男性は28%だった。これ以降の年度におけるHERIの生データにはアクセスできないが、「教育における個人の権利財団(Foundation for Individual Rights in Education:FIRE)」が2020年と2021年に上位150の大学の学部性55,000人を対象に行った調査では、61%の女性がリベラルに傾倒していたのに対し、男性では44%と、なんと17ポイントものジェンダーギャップが存在した。

出所:HERI Research Brief(2017年5月)。2016年にはN=184の大学に通う新入生、およびフルタイム学生137,456人が代表として重み付けされている。1970年から2016年の系列全体で、サンプルサイズは1,500万以上のデータ数になる。

もし大学進学率の違いでないとすれば、若者の意識にこれほどまでのジェンダーギャップが生じている原因は何であろうか?基本的には、ウォーク文化(Wokeness)のギャップに起因していると考えられる。先のFIREの調査結果において、BLMや中絶、トランスジェンダーの人権について物議を醸すような人物をキャンパス内に入れることに反対する意見【1】を考慮すると、イデオロギーにおける「ジェンダー」の統計効果は13倍にも膨れ上がる。

下のグラフは、YouGov Profilesによるイギリスの18歳から30歳までの約25,000人をサンプルとした2020年度のデータで、「ポリティカル・コレクトネスについて、概ね支持する(差別を解消すると思う)か、それとも反対(言論の自由を損なうと思う)か」という質問に対する解答を男女別に分類したものである。各年代ごと数千の回答があり、18歳から23歳では30ー40ポイントのジェンダーギャップがあるのに対し、23歳から30歳ではギャップが血じまっていることが示されている。

出所:YouGov Profiles(2020年6月18日アクセス)

今年(2022年)に私自らが行った945人を対象にした英国
Prolificの調査においても、上記の質問に対して30歳未満の女性64%がポリティカル・コレクトネスを支持したのに対し、30歳未満の男性では48%だった。この16ポイントのジェンダーギャップは、50代以上の年代に見られた4ポイントのギャップを凌駕している。米国Qualtricsが行った同様の調査では、30歳以下のジェンダーギャップが14ポイントだったのに対し、50代以上ではわずか1ポイントだった。いずれも、若年層のジェンダーギャップが顕著であることを示している。

しかし、このジェンダーにまつわる議論を大袈裟にするべきではない。イデオロギーと同様に、文化戦争における態度のばらつきの90%以上は、"ジェンダー間" ではなく "ジェンダー内" に生じている。また年を重ね成熟するにつれ、そのギャップが縮小する可能性もある。とはいえ、今なおジェンダーは若者の間でますます重大な政治的亀裂になりつつあり、英米の有権者層をミレニアル世代とZ世代が席巻する中でさらに政治的な重要性を帯びていくことだろう。

(訳:未厨伯)

訳者注記:
【1】:このような反対意見を考慮するのは、ウォークの運動におけるキャンセルしぐさを反映しているためであるといえる。
(参考:https://econ101.jp/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%BB%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%92%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%80%8C%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%AF%E6%AD%A3%E7%BE%A9%E3%81%AB%E7%9B%AE%E8%A6%9A%E3%82%81%E3%81%9F%E4%B8%80%E9%83%A8/ )

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