民藝旅 vol.1 山陰・愛媛編 \8日目/【愛媛県 内子町】
4月14日 月曜日 快晴。
朝日がぼんやり川面を照らす。鯉の干物がペロンとしていた。
(お昼頃、太陽が風を連れてきて、鯉はふくふく、空を泳いだ。)
本日は、内子町で伝統的な製法で和紙を作る「天神産紙」さんにお約束。
その前に、コインランドリーで洗濯物を洗いながら、川原で朝ごはんをむしゃり。
腹の虫が静かになった。さて、内子町へと参ろうか。
と、目力ギラギラにハンドルを握ったのに、迷子になった。
人のせいにしたくはない。でも、あえて告白しよう。レンタカーのナビが住所を詳細登録できない、さわやか性能だったのだ。いや、正直に言おう、ポンコツだった。
* * *
町内にいるのに、ナビをあてにできないため、ぐるぐる、ぐるぐる。
田んぼを抜けて「こっちか?」と曲がった先は、さらに田んぼの中。
絶対にこっちじゃない。引き返そうと思っていた矢先、小さな商店の軒先にキラッと光るものが見えた。
あまりの可愛さに急ブレーキ。
聞けば、お店の奥様が作っているとか。花模様に見える柄にハートを射抜かれて、お父さんに聞く、これはどこの国の柄ですか?すると、お父さんは呆れたように答えた。
「こりゃ、日本の竹かごの柄だぁ!」
持ち手は、カゴの本体にひし形に編み込まれているから、絶対に外れない。上に向かって広がるバケツ型だから、ものもたくさん入る。丈夫でかっこいい。これは、光る。
作り手の奥様に話を聞きたかったのだけど、ちょうど出かけていて今日は忙しい日だとか。残念。財布を開けたら、現金は1,000円しか入っていなかった。大きいカゴが1,000円ぴったりだったので、購入。
こう言う、日本の家仕事にフォーカスして、紹介していく活動もしたいな。
だって、高い技術とセンスがあるんだから、「お母さんの趣味」以上の価値がある。
(今はまだ、詳しいことは秘密のお店です。準備を整えてから、改めてお知らせします。)
* * *
迷子はまだ続きます。
町中をぐるぐるしていると、漆作家のほだかさんに教えていただいたスポットがちらほら。
下調べなしで来てびっくり。鳥取県の倉吉とはまた違うデザインの蔵たち…!カメラのシャッターが唸ります。カメラのシャッターが唸ります。
心臓がどくどく。カッコ良い。
内子町も倉吉市とおなじく、旧城下町で町人の町。
児童館が、とってもおしゃれ。
迷ってよかったのかも。ポンコツと言ってごめんね。
ナビを褒めたいような、でもやっぱりコンニャロ、と指ではねた。
* * *
シニアカーに乗ったおじいちゃんや、ジョギング中のご婦人、コンビニエンスストアで聞いて、ようやく目的地の「天神産紙」さんに到着。時刻は14時くらい。
大州藩に納める紙を作っていたことから、この辺りで作る和紙は「大州和紙」と呼ばれる。
お店のおかみさんが嫁いできた頃は、何軒もあった和紙工場。
今では、天神産紙さんが最後の1軒。
※2019/5/8追記
「個人で和紙づくりをされているかたもいる」という情報をいただきました。ほだかさん、ご教示ありがとうございます!天神産紙さんへのインタビューで伺った「最後の一軒」という言葉は、「工場として大規模な製作をしているのは天神和紙、一軒のみ」という意味だったのかもしれません。失礼いたしました。
以下に大洲和紙の産地紹介ソースを添付いたします。
全国手漉き和紙連合会「大洲和紙」
天神産紙さんに到着。まずは、お店でお買い物。
ハンドメイド作家さんよだれものの、染め和紙の詰め合わせ。1袋 350円。
大州和紙とフランスの伝統的な金属箔技法「ギルティング」を組み合わせた、新しい商品。
ギルディング和紙のパスポートケース。かっこよすぎて、逆に空港の入国審査で止められそう。
名刺入れもありました。しっかり硬い和紙なので、丈夫。
結局、友人に絵手紙を送る用のポストカードサイズの和紙と、名刺紙100枚入りを購入。産地別の和紙名刺を作って、出会った人に好みの和紙を持ち帰ってもらうのさ。むふふ。
* * *
お買い物のあと、おかみさんと話が弾む。
本州から愛媛まで、船でなんども海を越え、瀬戸大橋を渡って嫁いだラブストーリー。
せっかくだから、とおかみさんは工房を案内してくれた。
和紙の原料である楮(コウゾ)を屋外で日光と井戸水に晒した後、屋根の下でもう一度井戸水にさらす。
一つ一つ。ゴミを丁寧に、手で取り除く。
漉いた紙を水抜きするプレス機。
蒸気の熱で乾燥させる機械。温度調節が難しい、職人技。
おかみさんは言った。
「一枚の紙が出来上がるまで、約10日。昔ながらの方法で作ってるの。」
少し高くなっちゃうのは仕方がない。そう言いながら、目を落とすおかみさん。職人さんの技術、出来上がった品、決して高い値段じゃないと思う。
昔は、障子紙の需要が高く、職人さんは10人いても足りなかったそう。
今は、高齢と若手の職人さん2人だけ。
メディアで、日本の伝統工芸がかっこいいとか、海外で賞賛されているとか、耳障りのいい言葉が聞こえてくるけれど、実際に使っている日本人はどれくらいいるんだろう。
工芸品は日用品。私たちが買って、使い続けないと、この伝統文化も消えてしまう。
私たちの国には、すてきな手仕事がまだ残ってる。でも、いま、守らないと、永遠に消えてしまうものもある。
無理なく、たのしく。
どんな製品なら、現代の生活にするんと馴染むだろう。
海外製品ばっかりのこの国で、どうやったら母国の手仕事が蘇るんだろう。
伝統的な品を作り続けることは大切な道のひとつだけれど、大州和紙のギルディングとのコラボレーションのように、手仕事は常に発展して、変容していく道もあるということを学んだ。
* * *
こむずかしいことを考えて容量パンパンの脳みそには、
ジューシーなお肉とホワホワご飯が必要。
サンシャイン池崎さんの子供英会話ラジオを聴きながら、愛媛の先っちょ、今治市へ。
グルメ漫画2作品に登場したことのある、実力の飯テロ店「白楽天」。
気絶しない方がおかしい。
意識を失うほど脳髄にしみる、甘じょっぱいタレと、ぷるとろ焼豚。卵は半熟。
え〜!すごく多いですね!食べられるかな〜と、店のお母さんにかわい子ぶったのに。
“千と千尋の神隠し” の豚みたいな勢いで、飯を吸い込んで、気がついたらお皿には米粒ひとつ残っていなかった。
* * *
瀬戸内海の海岸沿いのキャンプ場で、ひと休み。
隣のテントは自転車旅のバイカーさんが1名。
キャンプ用のガスバーナーで、美味しそうな何かを炙り、ランプの光とラジオと潮騒。
完璧すぎる、スナフキンライフ。次は、私もラジオを聴こう。
足を伸ばして、草の匂いを感じながら。温かい寝袋にくるまって、夢の世界へ。
明日は、しまなみ街道を渡って島根県へ、旅は続く。だんだん!
もじゃ!
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