民藝旅 Episode:0/日本民藝館「柳宗悦の直観」と 21_21「Another Kind of Art」 (4)
4. ふたたび日本民藝館へ
せっかく東京にいったのに、展覧会の論考を持って帰るのを忘れたり、行きたかった展覧会は休館日だったり、あちゃーなオトボケを連発した前回。
しなしなレタスのような平日をすごしていたある日、Twitterで繋がっていた武田さんから、「テーブルウェア・フェスティバル」へのお誘いをいただいたのです。開催日は、その週末。湧き水をあびて心がシャキシャキ。すぐさま、土曜日に日帰りで東京へ行くことを決めました。
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せっかく東京に行くのですから、前回の忘れ物を回収することにしました。
計画はこうです。朝一番のバスに乗り東京に到着し、東京駅から駒場東大前駅へ。日本民藝館で「柳宗悦の直観」展の論考を入手。水道橋駅へ向かい、武田さんと合流。テーブルウェアフェスティバルで日本の工芸品を見て、六本木の「民藝 -Another Kind of Art」展へ向かう。ハードスケジュール!
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当日の天気は雪。高速バスは2時間ほどで、茨城の田んぼから東京駅に到着しました。日本民藝館までの道のりは、1週間前に行ったばかりなので、すいすい。開館1時間前に、駒場東大前駅に到着しました。時刻は9時。お腹が減ったので、駅前のマクドナルドで朝ごはんを食べることにしました。数年ぶりのマクドナルド。店内はスーツを着た人、近所の学生。15人ほどがのんびりと朝の時間を過ごしていました。となりに座った女の子が、雰囲気のある素敵な子だったので思わずスケッチ。
雪がひらりひらりと、格子ガラスの向こうで散る様子をじっとみる。時間がゆっくりと過ぎていました。
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開館時間になったので、日本民藝館へ。すでに何人かの人が建物の前に到着しています。時間になったので、重厚な木の引き戸を開けて館内へ。パタパタと忙しく動くスタッフさんに、先週の来館チケットを見せながら「論考を忘れてしまったので、持って帰ってもいいですか?」と尋ねると、「もちろん、どうぞ!」と明るい声が返ってきました。ついに、ゲット、柳先生の書いた論考 “直観について” です。(脳内で“ゼルダの伝説”のアイテムゲットメロディーが響く。)
論考を手に入れたら、次はテーブルウェアフェスティバル。武田さんとの待ち合わせがありますので、急いで水道橋へ向かいました。
5. テーブルウェア・フェスティバルと漆器
10時40分、待ち合わせのカフェスペースで武田さんと合流。Twitterでお話ししていた時は、頼りになるお兄さんといった雰囲気でしたが、実際にお会いすると優しくて頼りになるお兄さんでした。はじめまして、ということもあり、お互いの経験や、どうして民藝や工芸に興味を持ったのかを話しました。(武田さんは、民藝旅の先輩。昔、工芸の工房を訪ねて、日本各地を旅していたそうです。その時に出会った、手仕事に関わる人々とお仕事をされています。)そして、コーヒーを飲み終えたタイミング(1時間半経過)で、テーブルウェアフェスティバルの会場へ向かいました。
会場の東京ドームいっぱいに、テナントが並ぶ景色は圧巻。これは、1日では回りきれません。見たいものを厳選せねば…
まず、武田さんは漆器の中田漆木さんのところへ。実は東堂、はじめて漆器に触れました。中田さんは香川県からの出展。漆の箸置きを参考に、漆は時が経つと透明になり、色が明るくなることを教えて下さいました。お触りしても大丈夫と許可をいただいたので、漆器にファーストタッチ。ワインを煮詰めたような飴色。とろりとした表面を光にかざすと、刷毛跡の光輪が飴細工のようにきらめきました。心がぎゅっと、幸せを感じます。
テレビや雑誌で見たことのある漆は、朱や黒。漆器を知らない東堂は、漆の色は木の色なのかと想像していましたが、じつは漆は半透明だったのです。いやはや、驚いきました。(きっと常識ですね。)漆に色を加えて、豊かな色彩を生み出しているそうです。
中田さんは博識で、色々なことを教えてくださいました。その昔、漆は税として献上していたこと。漆器は工程ごとに職人さんがいること。山中というところに木を削る職人・木地師という人たちがいて、そこで挽いた木の器に、香川で漆の職人さんが漆を塗っていること。日本全国をつなぐ分業の漆器職人ネットワークがあることに驚きました。
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中田さんのブースを後にして、会場内をあるきまわりました。すると、一番目立つコーナーに、とても安い漆器が山のように積まれ、人が集まっていました。漆器として売られている器は、目がチカチカするほど鮮やかな赤色。なぜ、この漆器はこんなにも安く売られているのか、まだその理由はわたしにはわかりませんでした。
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新しい漆器の表現として、浅田漆器工芸さんのブースを拝見しました。みてください、このワイングラス…!
今までの常識を覆す、メタリックな漆器。伝統的な色だけでなく、現代の生活様式に合わせて研究開発をしている工房があることを知り、感嘆のため息が漏れます。
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また、1番高額な漆器を売っているブースにも連れていっていただきました。漆が厚く重ねられた黒色のお椀は、まるで黒真珠のような輝きです。お椀1つ、おいくらでしょうか?わたしの月収よりも高かったです。お目玉がぽーんと飛び出しました。それよりも驚いたことがあります。隣で話をしていたご婦人が「あら、これすてきね。2ついただくわ。」と、ローソンでからあげクンを買うように、さり気なくそのお椀をお買い上げされたのです。わたしが生きてきた世界との違いに、落っこちた目玉を拾うのに苦労しました。
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テーブルウェアフェスティバルは、漆器にはじめて触れる機会となりました。学んで、触れて、漆器にも色々な品があることを肌で感じました。この日、貴重な機会を下さった武田さん。お話をしてくださった中田漆木の中田さん、陶芸家の福田さん、浅田漆器工芸の浅田さん、惣次郎窯の大串さん、育陶園のけいこさん、皆さま貴重なお時間をくださりありがとうございました。
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あれ、まだAnother Kind of Art展に辿り着けません。そうなんです、この日は濃密な時間だったのです。ここで、記念に、黒柳徹子さんのトークショーのお写真タイムに撮った写真を貼り付けます。生トットちゃん、お茶目で、おしゃれで、本当に可愛らしかったです。
長くなりそうなので、この回は一旦ここまで。(すみません)
次回、民藝旅 Episode 0 最終回。「民藝 -Another Kind of Art」展へをお届けします。しばしお待ちを…!
▷ 2019.3.3 11:15 内容を一部訂正しました。
\最終回が書きあがりました/
東堂