ボナパルト家を取り巻く女性たち - ジョゼフィーヌ編《4》新たな愛人バラス
◆これまでのお話
ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネは、フランス皇帝ナポレオンの最初の妻です。
彼女はナポレオンの前に結婚歴があったのですが、一男一女を抱えて離婚していました。
時は流れて、恐怖政治の最中にあったフランス。当時は猫も杓子も フランス革命に反対するものは皆ギロチン行きでした。
そんな中、ジョゼフィーヌの元夫が司令官を務めていた軍隊が戦いに敗北。
元夫は
「戦いに負けて領地を取られた。逮捕」
と牢獄へ送られます。
ジョゼフィーヌは過去のいざこざも構わず元夫を救おうと権力者に働きかけますが、
「態度が反抗的である。逮捕」
と、夫と同じ牢獄に送られます。
ここからの続きです。
今回で、全8話の折り返しまで来ました。
◆牢獄の中で
さてジョゼフィーヌと元夫が入れられたカルム牢獄とはどんな場所だったのでしょうか。
参考文献として挙げている『ナポレオンとジョゼフィーヌ』(中公文庫)によると、規則などあって無いに等しく、そこかしこでカップルが別れたりくっついたりしていたそうです。
ジョゼフィーヌと元夫はここで再会するも、それぞれ恋人を作り、楽しく(?)やっていたよう。
やる事も限られているでしょうし、中は薄暗かったようなのでまぁそういう事になってしまうのかもしれませんね………
しかしその日は突然訪れます。
1794年7月23日、ジョゼフィーヌの元夫アレクサンドルが、45人の死刑宣告者と共にギロチンにかけられ死亡しました。
◇
次は自分の番と覚悟したジョゼフィーヌ、いつギロチンの刑になっても良いように、髪を短く刈り込みます。
◇
しかしジョゼフィーヌはすんでの所で首が繋がります。
恐怖政治という名のギロチン祭りをリードしていた人物が逆にギロチンに掛けられ、牢獄へ送られた囚人達は解放されたのです。
元夫の死からたった4日後の事でした。
◇
晴れて 娑婆に帰ってきたジョゼフィーヌ。
しかし、離婚時の条件として年金を支払ってくれていた夫は ギロチンの露と消えてもういません。
元々社交術に長けていた彼女ですから、釈放後は友人や愛人の助けで何とかやりくりして暮らしていました。
ただ、この頃ジョゼフィーヌは31歳。
13歳と11歳の子供を抱えていつまでもその日暮らしでは、やはり不安です。
彼女は次第に愛人ではなく安定した相手――新しい夫を探し求める様になりました。
◇
さてそんなジョゼフィーヌがこの後付き合ったのは、ポール・バラスという男。
混乱を極めるフランスの中で、恐怖政治の指導者をクーデターで倒し、その権力を強めていました。
しかしWikipediaには こうあります。
彼は政治的・軍事的には功績を残したのですが、非常に女好きで、いつも何人もの愛人を従えて行動していました。
しかも彼女達の為に身銭を切ることを嫌い、わざと裕福な金融業者などをあてがって 自らの負担を抑えていました。
自分の見栄の為に女性を求めるが、金を与えるのはまっぴらごめん、という訳ですね。
さてそんなバラスを描いた風刺画をひとつご紹介しましょう。
いちばん左の悪そうな男がバラス。
そしてカーテンの後ろで裸踊りをしているのが、ジョゼフィーヌとテレーズ・カバリュスという女性です。
そのカーテンの後ろをそっと覗いている人物がいますね。
実はこれがナポレオン。
一体どういう意味の絵なのでしょう???
◇
元々バラスはジョゼフィーヌと1795年夏ごろから愛人関係になっていました。
これはジョゼフィーヌが脱獄してから1年くらい後の話。
ジョゼフィーヌ的には、権力者に近づいて金銭面などの後ろ盾になってほしいという思惑があったと思います。
しかしそこへ、没落気味だった政治家の夫に愛想を尽かしたカバリュスが接近します。
(先程の風刺画に出てきた女性です)
カバリュスは、ジョゼフィーヌとカルム牢獄時代からの親友で、彼女に負けず劣らず奔放な性格でした。
しかもジョゼフィーヌより10歳若く、大変な美貌の持ち主でもありました。
そしてバラスはカバリュスとも愛人関係を結ぶのです。
カバリュスという評判の美人を手に入れ、もはやジョゼフィーヌの事を疎ましく思うようになったバラス。
その時ふと思い当たるのです。
「そうだ、あの男に押し付ければいい――。」
続きます。
次回、いよいよナポレオンが登場します。
↓
参考
ナポレオンとジョゼフィーヌ (中公文庫)
Wikipedia