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メディカル・フィジカルパフォーマンス領域の包括的な取り組みとして 「B.LEAGUE SCS推進チーム」発足と始動のお知らせ

1.メディカル・フィジカルパフォーマンス領域への注力背景

先般のW杯での日本代表の活躍は、日本バスケ界におけるフィジカル強化が、一定の成果を出した側面があったと感じています。従前のように大会を通して「フィジカル負け」という指摘がこれまでよりも減少してある認識です。

Bリーグのレベルが年々上がり、インテンシティ(強度)が高くなってきたのも、その底上げとなったと思います。これまでの経緯として、「フィジカル負け」を指摘された前回W杯後のシーズンでは、ディフェンスのプレッシャーが上がり、コンタクトの量が増えたと感じています。もちろんハイレベルな外国籍選手が増え、バスケットの質や戦術自体も変わってきたところもあります。

一方で試合のインテンシティ(強度)が上がると怪我も増える傾向にあります。怪我をいかに予防するか、とフィジカルをいかに強化するかは、車の両輪であり、他のプロスポーツ同様に最重要課題と捉えています。

代表観点はもとより、昨シーズン2022-23シーズンのFINALSは、シーズンを通してコンディション良く戦った琉球が優勝を勝ち取りました。千葉Jもアクシデンタルな負傷はありつつ、予防できる怪我に対してはきっちり対応してきたと聞いています。充実したシーズンを過ごしてきたチームが最後を飾るのは、やはりフィジカルコンディションが戦績に大きな影響をもたらすことを象徴しています。

バスケットボールは、少人数で戦う競技のため、選手の稼働率がとても重要な要素となります。チームの戦績という観点はもとより、クラブ経営上も、いわゆる戦力投資の期待値に見合う「効果」を得られるか、という観点でもとても重要な課題であります。

今回発足する「B.LEAGUE SCS 推進チーム」は、まさにそのど真ん中の取り組みであります。

2.B.LEAGUE SCS推進チームの意義

Bリーグが発足する前身から、現場の第一線で戦ってきたトレーナーやドクター、そして、海外経験豊富なフィジカルの専門家等も加えて、これにリーグ一丸で取り組んでいきます。

B1・B2の全38チームのうち、55%にあたる21チームでは海外で専門資格を取得したメディカルスタッフ(ATC)が従事しており、日本のプロリーグでは最多となっています。(ATC:米国認定アスレティックトレーナー)

直接的には外傷・傷害の発生がわかりやすいリスクではありますが、世界では突然の心停止や頭部外傷による死亡事例もあります。様々なリスクを負う選手が安心してプレーできる環境を構築することは当然のことであると認識しています。

さらに、B.革新の重要要素でもある入場者数増を掲げていく際に、来場するお客様の安全を担保することも同時に進めるべきことです。来場者が増えれば必然的に事故リスクはあがります。盛り上がって貧血になる、具合が悪くなってしまうことは笑い話ではなく、真っ向から向き合うべき話であって、有事の際に適切な対処を行える体制は、構築すべき絶対条件です。

緊急時の対応計画の策定と、その訓練を導入し、運営レベルの向上もすでに着手しはじめています。

そして、選手稼働の最大化という観点でも、年間で集計した、Bリーグ全チームの外傷・障害レポート(ケガの集計レポート)を公開しました。これには、Bリーグ全チームのメディカルスタッフの多大な協力があり、SCS推進チームが監修したものです。

実は、海外リーグでは当たり前ですが、日本のプロリーグでこれを公開するのははじめてであり、とても画期的なことであると自負しています。

怪我の予防をするためには、実態を把握する必要があります。アクシデンタルな怪我のすべてをゼロにすることは現実的ではありません。それぞれのクラブで当然予防的な思想と取組は進められていますが、全体感を踏まえて検証、分析していくのはリーグの役目であると考えます。

それを専門的な知見で取組むことが重要で、ご理解をいただいたメンバーのみなさんとチームを組成できたと思っています。もともと各クラブのアスレティックトレーナーとのミーティングを開催していますが、そこでインプットする情報の質も上がっていくと思います。

つまり、リーグとして専門家を束ねたチームを組成し、全体感を把握し、必要な検証を加え、クラブへそれをフィードバックします。クラブからの情報が滞り無くリーグへ届くよう、SCS推進チームにはクラブ従事者も名を連ねており、相互の情報が円滑にやり取りできる状態を構築しています。

その中で、パフォーマンス向上の観点は、ある程度クラブごとに必要な体制、つまりヒト、モノがあると思っており、その重要性やあるべきアプローチを模索していきたいと思っています。測定を通して選手たちのベンチマークたる数字をつくっていくこともそのひとつです。

これはユース世代を含めた若い子どもたちの目標にもなります。トップに来てからフィジカルに取り組んでももう限界がある。トップの選手たちがそれぞれのパフォーマンスを上げるための取組を充実化させ、それにより子どもたちの基準を明示化していくことで、全体が向上するスキームを構築したいと思います。

パフォーマンス向上は、その言葉の通り「筋出力を上げ」て、スピードやパワーを高めるということですが、これはフィジカルパフォーマンスの向上に直接的に効果をもたらすだけでなく、選手稼働を高める上でも重要な取り組みであり、日本代表強化にも繋がっていく意義深い取り組みであると確信しています。

以下、公表資料となります。

こちらのサイト内でBリーグ全チームの外傷・障害レポート(ケガの集計レポート)を確認いただけます。なんとなく怪我多いのでは?の感覚的なものではなく、リアリティのあるデータをご確認いただけます。


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島田慎二
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