男子VS女子 呼吸の影響を受けやすい方は?
こんにちは、デイジーです!今回はスウェーデンとアメリカで行われた、実験的研究論文について紹介します。
タイトル
安静時の呼吸と心血管機能の関係:性差による違い
1.イントロダクション
安静時の呼吸と心血管機能の関係は、性差によって異なる可能性があります。本研究の目的は、呼吸頻度が心血管機能(特に交感神経活動、末梢抵抗、心拍出量)にどのような影響を与えるかを調査することです。
2.対象者
19名の健康な男性(平均年齢27±2歳)と17名の健康な女性(平均年齢25±1歳)が参加しました。全ての被験者は非喫煙者で、心血管構造や機能に異常がない者としました。
3.検査方法
呼吸運動の記録: 腹部に巻いたストレインゲージベルトで測定。
交感神経活動: 右腓骨神経からマイクロエレクトロドを用いて測定。
動脈血圧: 上腕動脈にカテーテルを挿入して測定。
心電図(ECG): 3リードの心電図で心拍数を連続測定。
心拍出量: オープンサーキットアセチレン取り込み法で測定。
測定時間: 各測定は3〜5分間行われました。
4.結果
男性:
呼吸頻度は交感神経活動と正の相関があり(r = 0.58, P < 0.01)、末梢抵抗とも正の相関(r = 0.65, P < 0.01)、心拍出量と負の相関(r = -0.80, P < 0.01)が見られました。
心拍数も呼吸頻度と負の相関がありました(r = -0.56, P = 0.01)。
女性:
呼吸頻度と心血管変数の間に有意な相関は見られませんでした。
5.考察
男性では、呼吸と交感神経活動および心血管機能の間に強い関連が見られました。これは、呼吸が交感神経活動を刺激し、末梢抵抗を増加させる一方で、心拍出量を減少させることを示唆しています。女性ではこれらの関連が見られなかった理由として、性ホルモンの影響や体サイズの違いが考えられます。エストロゲンは血管拡張作用を持ち、交感神経の血管収縮作用と競合する可能性がある。
6.まとめ
Q.安静時の呼吸は心血管機能にどのような影響を与えるか、性差による違いはあるか?
A. 男性では呼吸が交感神経活動および心血管機能に強い影響を与えますが、女性ではその影響は見られませんでした。
7.疑問点や今後の課題
呼吸と心血管機能の関係における性差の詳細なメカニズムを解明するためには、さらなる研究が必要。
また、呼吸パターンや他の心血管変数を考慮した研究も求めらる 。
以上が今回の論文紹介になります。
男性の方が呼吸が心血管機能に影響を与えるとの論文でしたね。
もしかしたら、平均寿命が男性の方が低い要因の一つなのかな
と、勝手に妄想を膨らませたりもしていました!
さて、今回の論文で一つ疑問に思った方もいるであろう
「男性の呼吸回数増加は心拍出量と心拍数に負の相関があった」
の意味を解説したいと思います。
そもそも、心拍出量は「心拍数×一回拍出量」で表されます。
呼吸の増加に伴い交感神経活動が増加すると、血管が収縮し、末梢血管抵抗が増加します。抵抗が増加したままの状態で同じ心拍出量を保っていたら、メチャクチャ血圧高くなります。これは心臓が血液を送り出す際の負荷が増加している状況です。
なので、心拍出量が減らすことで、心臓の負担を減らしたいという一種のホメオスタシス(恒常性)が働くと思われます。
結果、心拍数と心拍出量が今回の研究では呼吸と負の相関が見られたのではないかと解釈しました。
呼吸は様々な要因や環境の変化を受けやすいので、一概には言えませんが、男性では相関があり、女性では相関が見られないことは、男女間で基本的な血圧調節に根本的な違いがある可能性がありますね!
いやー、人体で不思議!神秘的だ!!
こういう一つの情報をもつだけで、また色々と臨床の幅も広がりそうですね!
今回も読んでいただき、ありがとうございました!
この論文の詳細な情報や具体的なデータについては、下記を参照してください。