わたしの本棚138夜~「鐘」34号
前回第38回受賞者の石田夏穂さんが、「わが友、スミス」で、今年上半期の芥川賞候補になりました。みんなで喜んで応援していましたが、残念ながら受賞にはいたりませんでした。「文藝春秋3月号」の選評記事を読むと、川上弘美氏、奥泉光氏、吉田修一氏が推してくださっており、次回作が楽しみとの意見もあり、今後ますますのご活躍を楽しみにしています。
第39回も受賞作と佳作が無事に決まりました。(敬称略)
☆「鐘」34号 大阪女性文芸協会・編集発行 820円(税込み)
受賞作「息ができない」 中川朝子 (愛知県長久手市)
佳 作「いつかはモクズ」 キン ミカ (兵庫県西宮市)
応募総数249編
選考委員 中沢けい 町田康
主催 大阪女性文芸協会
協賛 アサヒビール(株) 岩谷産業(株) 大和ハウス工業(株)
丸一鋼管(株) (株)ミライト・テクノロジースラボレムス(株)
後援 朝日新聞大阪本社 産経新聞大阪本社 毎日新聞大阪本社 讀賣新聞大阪本社 (五十音順)
顧問 黒井千次 松尾徹
今年の受賞作は、思春期の少女を主人公に、競泳という特殊なスポーツの世界を描いたものです。佳作は、アクの強い銀次というお爺さんの存在とともに不思議な世界を描いています。複数の言語と文化の中で暮らしており、家の会話は英語だという作者ならではの言語感覚の小説です。受賞作品は今を生きる主人公の女性の多感な心理描写を上手くすくいとった作品で、佳作は不思議な言語感覚の作品でした。