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最乗寺から明神ヶ岳(箱根) ♣マイナー登山道を往く♣(0003)

大雄山最乗寺から箱根外輪山の一角である明神ヶ岳を登り、さらに外輪山の尾根歩きを楽しみます。
(本記事/ 文字数:約6400字、読了:約13分

明神ヶ岳山頂からの富士山
明神ヶ岳より富士山を望む

<趣意>
あまりメジャーではないマイナーな登山道。ちょっと気になってはいたもののなかなか行く機会のなかった山道を歩いてみました。


<概要>

「明神ヶ岳」 (みょうじんがだけ)
箱根外輪山の山並み(東側)のピークのひとつ。 標高は約1169m。
山頂からは大涌谷(箱根山)、金時山そして富士山の眺望に恵まれている。
最寄駅は伊豆箱根鉄道・大雄山線「大雄山」駅。登山口になる大雄山最乗寺への駅から路線バスで約10分。

 

<登山コース>

※歩行時間はすべて標準的タイムによる目安です。

道了尊バス停
「道了尊」バス停

最乗寺・門前のバス停「道了尊敬」から出発です。

3_最乗寺参道
最乗寺参道
4_最乗寺登山道
参道の杉並木
5_最乗寺案内図
最乗寺の境内案内図

バスを降りて正面を真っ直ぐ進めば最乗寺の境内へ向かう石段、その手前を左手の橋を渡り道を行くと登山口になります。
高い杉林の中の舗装路を通り抜けていくと登山口にたどり着きます。 登山口は最初は少々崩れかかった石段ですが、やがて土の山道になっています。

6_最乗寺分岐1
最乗寺から上がった尾根
7_大雄山道
趣のある道標
8_砂利林道合流点
林道を横切る
9_林道合流道標
林道向かい側の山道

登り始めて少々きつい登りいったん上がりきると道標が出てきます(上1番目の写真)。 道標が倒れてしまっていますが、左側が登ってきた最乗寺からの登山道、右手が明神ヶ岳へのルートです。 写真正面にも道があり赤テープも巻いてありますが、登山道ではありません(作業道でしょうか)。
明神ヶ岳への道を歩き始めてしばらくすれば、しっかりとした道標も建っています。
登山道を上っていくと、やがて砂利道の林道と交差します。 林道を渡った向かい側に登山道が続いています(上4番目の写真)。

10_杉林
杉林の山道
11_鉄塔
鉄塔
12_舗装林道合流点
舗装された林道を横切る
13_林道合流道標
林道向かい側の山道
14_ちょっと富士山
富士山が一瞥

登山道はこの先しばらく杉林のなかのちょっと暗い静かな道が続きます。
送電線の鉄塔が現れてきます。 塔を左手に見てまっすぐ登っていきます。
ふたたび林道(こんどは舗装路)に交差します。 こちらも林道を渡った向こう側に登山道が続いています(上4番目の写真)。 
やがてすこし視界が開けてきます。 富士山の姿もちらりと見えるようになってきます。

15_見晴し小屋
休憩小屋「明神岳見晴小屋」
16_小屋内部
小屋の内部
17_開けた道
広い尾根道に出る
18_神名水
水場「神明水」 このときは涸れていました

「見晴小屋」に到着です(上1番目の写真)。 小屋のまわりにはベンチも置かれています。 
小屋は屋根はあるものの、写真(上2番目)のとおり中は床が完全に抜け落ちており、壁もだいぶ傷んでおります。 雨風を一時的にしのぐことはできそうですが、状態としてはほとんど廃屋といった感じでしょうか。 強風が吹いたら倒壊しそうでコワイです…。

ふたたび登り始めます。 しだいにこれまで高かった杉の丈が低く小さくなってきて広葉樹も出てくるので、開けて明るさが増してきます。
神明水の場所までやってきました。 地図上はこの神明水とさらに上に明神水の水場が記載されていますが、涸れていたり乏しいこともあるようなので、当てにしない方がいいかと思われます。 写真を撮影したときはどちらも水はありませんでした。

19_相模湾
振り返って相模湾を望む
20_大山
大山の山並み?
22_涸沢
涸れ沢を渡る
23_沢向こうの道
涸れ沢の先の道標
24_沢を振り返る
涸れ沢を振り返る

神明水から少し登ると、背後の展望が開けます。 上1番目の写真は振り返って撮影しました。 相模湾と三浦半島が確認できます。 麓の街並みは小田原から渋沢の間の街かと思われます。
さらに上がると、より視界が開けます。 上2番目の写真の左側のゆるく尖った山は丹沢の大山でしょうか。 
この先は杉も少なくなっていき、明るい道が延びていきます。
土石が流れ込む2つの涸れた沢の合流地点に出ます。 右手へ沢の上流の方の木に赤テープが付いていますが、登山道は沢の合流点を渡った先に続いています(上4番目の写真)。 渡った先に道標もあります。 上5番目の写真は合流点を渡って振り返って撮影したものです。

25_沢からの道
赤土の道
26_明神・明星分岐
明星ヶ岳との分岐
27_山頂直下
もうすぐ山頂(箱根外輪山)
28_外輪山尾根
大涌谷を望む
29_尾根から振り返り
外輪山尾根から相模を振り返る
30_尾根道標
外輪山尾根の道標

沢の合流点から先はしばらく緩い道が続きます。 そして明神ヶ岳と明星ヶ岳の分岐に着きます(上2番目の写真)。 分岐を右手に明神ヶ岳への道を進みます。 道はすぐに傾斜が強くなります。 外輪山の尾根へ向かって一気に登っていきます。 
登り切ると、箱根外輪山の尾根に出ました。 正面の山腹から煙が上がっているところが大涌谷(箱根駒ヶ岳・神山)になります(上4番目の写真)。 登ってきた方を振り返ると相模湾です(上5番目の写真)。
尾根に出ますと、風向きによりますが、硫黄の匂いがすることもあります。
尾根から右手へ10mほど斜面を上がれば、いよいよ明神ヶ岳の山頂です。

31_明神ヶ岳山頂
明神ヶ岳
32_山頂から富士山と金時山
金時山越しの富士山
33_明神ヶ岳案内
明神ヶ岳の説明
34_山頂道標

明神ヶ岳の山頂からは富士山がキレイに見えます。 富士山の手前の丸くぽっこりとしたピークが金時山です。
山頂は休息に適したスペースがあり、ベンチもいくつか設置されています。
明神ヶ岳から金時山の方へ向かって外輪山の尾根を進みます。 

35_尾根道
金時山方面へ向かう
36_尾根道の富士山
外輪山尾根越しの金時山と富士山
37_外輪山トラバース
火打石岳を巻く
38_カヤト道
カヤトの道
39_カヤト道と富士山
カヤトの道と富士山

尾根道は低木、笹やカヤトに囲まれた明るく気持ちのよい道です。 途中でいったん外輪山尾根の外側へ出て、山肌をトラバースする道を進みます。
ふたたび尾根に戻ると、カヤト道に入ります。 カヤが覆い被さるほど高く伸びて道の両側に茂っています。
カヤト道を金時山の方へ向かって何度か登降を繰り返しながら進んでいきます。

40_矢倉沢峠道標1
矢倉沢峠
41_矢倉沢峠道標2
矢倉沢峠の分岐
42_矢倉沢峠道標3
金時山への分岐
43_うぐいす茶屋
矢倉沢峠の「うぐいす茶屋」

やがて矢倉沢峠。金時山と仙石原への分岐にさしかかります。 
分岐のそばに「うぐいす茶屋」があります。 このときは営業しておりましたが、週末や祝祭日なら常に営業しているわけではないようです。 この道は何度も通りましたが、営業していないときもありました。
分岐から金時山の山頂までは40分程度。 今日は仙石原の方へ、バス停に向かって下りていきます。

44_下山道
仙石方面への登山口に下る
45_金時山登山口
仙石方面の登山口
46_登山口案内
金時山ハイキングコース案内図
47_国道
国道138号線へ向かう
48_金時登山口バス停
「金時登山口」バス停

しばらく下っていくとやがて別荘と思われる民家が現れてきます。 その先に舗装道路が現れて仙石から登山口になります。
別荘地の間の舗装された坂道を下っていくと、国道138号線(箱根裏街道)が見えてきました。 138号線に出て左手へ曲がれば、すぐそばに「金時登山口」バス停があります。
今回はここが終点です。

[行程表]

※標準的タイムによる目安です(休憩含まず)。
「道了尊」バス停→ 明神ヶ岳見晴小屋(60分)→ 神明水(30分)→ 明神ヶ岳(60分)→ 火打石岳分岐(50分)→ 矢倉沢峠・うぐいす茶屋(60分)→ 「金時登山口」バス停(30分)
コースタイム: 約5時間
●アクセス補足●
JR東海道本線・小田急小田原線「小田原」駅から伊豆箱根鉄道/大雄山線「小田原」駅に乗換えて終点の「大雄山」駅まで行き、そこから路線バス・伊豆箱根バスで「道了尊」行きバスに乗り継ぎます。
伊豆箱根鉄道と伊豆箱根バスは西武系列の運営になり、小田急系列の運営ではありません。

[国土地理院地図]

最乗寺

[登山コースの補足]

「道了尊」バス停から明神ヶ岳の標高差はおよそ900m(バス停は約280m、明神ヶ岳は約1169m)。
外輪山の上の方は赤土になります。箱根山から噴出した火山灰の性質のためでしょうか、雨が降った後など強くぬかるみます。 滑りやすいですし、ひどいときは靴底にベッタリとへばりつくほどです。 転んで汚れたときのために濡れタオルやウェットティッシュがあった方がいいかと思われます。
大雄山駅から最乗寺まで歩いて行くこともできます。 およそ1時間強(目安)で、バス通りの途中にある仁王門からは車道に並行するように「てんぐのこみち」と名付けられ、最乗寺までの杉林の中の歩道が設けられています。

1_てんぐのこみち
「てんぐのこみち」

最乗寺は曹洞宗の修行道場で、天狗伝説もあり地元では「道了さん」と通称されています。
「金時登山口」バス停を通るバスの運行本数は少ないため、箱根湯本方面へ1つ先のバス停「仙石」(約350m)までいくと、小田原・箱根湯本と桃源台(芦ノ湖)を結ぶバスが通行しており、本数が多くなります。

 

<メインテーマ>

画像48
カヤト道と金時山

カヤトの道が好きです。
このルートで一番の特徴は明神ヶ岳と金時山の間の外輪山尾根道にある後半部分(金時山寄り)のカヤトの道ではないかなと個人的には感じております。

人の背丈をはるかに超し優に2倍はあろうかと思われる高さのカヤトが道を両側から囲んでいます。 独特の景観と雰囲気はまるでおとぎ話の異世界に迷い込んだようにも感じられます。
びっしりと生えそろったカヤトの隙間のどこかに舌切り雀の「すずめのお宿」でもあるんじゃないかと空想してしまいます。

まあ、登降を何度か繰り返さなければならないところが、ちょっとネックですが。 このカヤト道をときどき正面に顔を出す金時山や富士山の方へ向かってゆっくりと歩いて行くとなんだか気持ちをほぐしてくれます。
 
あ、メインテーマがマイナー部分ではなかったですね…。

 

山小屋_3

<補足情報>

[売店等]

大雄山駅近くにコンビニあり(駅前の県道723号線を狩川の方へ200mくらい)。
最乗寺門前(道了尊バス停)に土産店が複数あり。
矢倉沢峠に「うぐいす茶屋」あり。
「仙石」バス停周辺にドラッグストアとコンビニあり。

[お食事処]

「はつ花」 (大雄山駅) 日本蕎麦
「はつ花」 (箱根湯本) 日本蕎麦
「湯葉丼 直吉」(箱根湯本観光協会) (箱根湯本) 湯葉料理 
「小田原おでん本店」 (小田原駅)
「フュージョンダイニング エフ 小田原」 (小田原駅)※富士屋ホテルプロデュースの洋食店

[日帰り温泉など]

「箱根湯寮」 (箱根湯本)駅より送迎バスあり
「かっぱ天国」 (箱根湯本)
「おんり~ゆ~」 大雄山駅から送迎バスあり(予約制)
「小田原お堀端 万葉の湯」 (小田原)

[山小屋などの宿泊施設]

芦ノ湖、箱根湯本、箱根登山鉄道線沿線に旅館、ホテル多数あり。

[周辺スポット]

最乗寺
芦ノ湖
仙石原
公時神社
仙石原周辺に美術館が複数あり

[名産品]

かまぼこ
魚の干物

[付近の山]

金時山
明星ヶ岳
箱根山(神山・駒ヶ岳)

[お天気情報]

金時山/山の天気 (tenki.jp)

 

私的雑感

<私的な雑感>

前半は最乗寺から箱根外輪山尾根までの人の少ないマイナールート、後半は外輪山尾根を金時山の方へ向かうメジャールートといってよいでしょうか。

前半のマイナールートのさらにその前半は、最乗寺という寺院の性格のためでしょうか、大きな杉の森の中を歩きます。 静かでやや暗く、「森閑」という言葉が似合う山の雰囲気を楽しめると思います。
箱根外輪山尾根へいったん出れば、そこは富士山の眺望に恵まれた、いわば黄金ルートになります。

静かな森と明るく開けた尾根歩きの両方が楽しめる。 一粒で二度美味しいルートだと思います。

後半ルートも、金時山とは反対側になりますので、登山客が多いといっても金時山登山客よりは比較的少ないですので、その分、余裕のある山歩きが楽しめるのではないでしょうか。

最乗寺は天狗信仰でも有名な場所です。 高く伸びた杉が多く残っているのは、信仰の森として伐採を免れたためかもしれません。 昼なお薄暗い森は、昔の人が天狗がいると信じていたとしても不思議ではないかなーと感じました。

今回は最乗寺から登りましたが、神社仏閣に興味が深い方や御朱印集めをされている方などは逆ルートで最後に最乗寺に下りてきて、境内をゆっくりと回ってみてもいいんじゃないでしょうか。 夫婦円満のご利益のある天狗の高下駄などの観光スポットもあります。 
個人的には、今度は時間の余裕をもって境内を回ったあとに「てんぐのこみち」を歩いて駅まで帰ってみようかなー思いました。


<山旅のお土産>

「湯もち」外観
「湯もち」本体

●湯もち
箱根でも著名な和菓子のひとつといえると思います。
なめらかできめ細かい食感の餅に刻んだ羊羹が練りこまれています。ほんのり香る柚子の風味が爽やかさを演出します。そのためサッパリとした後味が特徴的です。
大きさは小振りな一口サイズ(私は二口くらいで食べますが)。竹の皮で個別包装されているところが古風な趣です。
いろいろな面で上品な和菓子だなーという印象です。

本店は箱根湯本駅からすこし離れたところになりますが、別途、販売店が駅から徒歩5分ほどのところにもあります。

最近はコーヒーや紅茶と一緒に和菓子を食べ合わせることも多いですが、「湯もち」はやはり日本茶(緑茶)でちょっと濃い目のものと一番合うかなーと感じます。
リンク先: 湯もち本舗ちもと

 

<備考>

●お得な切符
「箱根フリーパス」など数種類あり (箱根ナビ)
「箱根バスフリー」 (伊豆箱根バス)
「箱根フリーパス」は小田急系列、「箱根バスフリー」は西武系列でそれぞれ別の企業グループのサービスですので、利用する路線等を事前に検討のうえご利用されることをお勧めいたします。 
※どのパスでどの交通手段が利用できるかがちょっと分かりにくいです。
●登山規制
2024年1月時点で、箱根の大涌谷周辺は火山活動の影響で入山規制があります。登山を計画されている方はご留意ください。
大涌谷園地 (神奈川県)
火山対策 (箱根町)
火山活動の状況(箱根山) (気象庁)
箱根山の火山情報 (Yahoo! Japan)

 

<参考リンク>

箱根全山 ※公式サイト
箱根のハイキングコース (箱根全山)
箱根ナビ ※公式サイト
伊豆箱根鉄道 ※公式サイト
南足柄市 ハイキングコース (南足柄市)
環境省 箱根ビジターセンター ※公式サイト
山と高原地図「30. 箱根 金時山・駒ヶ岳」 (昭文社)
登山情報 (神奈川県警察)
小田原警察署 ※公式サイト
松田警察署 ※公式サイト


<関連記事>

最乗寺から明神ヶ岳周辺の登山に関する上町嵩広の関連記事です。一部、外部サイトの記事もあります。


[バックナンバー]

バックナンバーはnote内マガジン「マイナー登山道を往く」にまとめております。


注意

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(6) 不定期更新です。 隔月一回を目安に更新を予定しております。
(7) カバー写真と、今回ご紹介した山とは、関係はありません。
(8) 情報は掲載日時点の内容です。
(9) 登山道等の状況については、適宜、現地の観光協会、ビジターセンターや山小屋などの各関係機関にあらかじめご確認くださいますようお願いいたします。
(10) 今般の新型感染症の影響で各種施設等の利用については制限などが行われている可能性があります。ご利用の際には詳細について事前に各種施設等へご確認などをお願いいたします。

(2022/01/18 上町嵩広  改訂:2024/01/03)