車なしで秋田県象潟、青森県大鰐の旅③
これまでの様子は①、②に書いています
3日目 秋田→大鰐
9:44秋田発の奥羽本線で大館、乗り換えて大鰐温泉駅へ。
さてなぜ大鰐に行きたかったかといえば、「大鰐」という名前のため。Brothers Quayという双子の映像作家が製作した、ストップモーションアニメ「street of crocodile」が好きだった。これには原作があって、ポーランドの作家ブルーノ・シュルツの小説「大鰐通り」という作品からできている。当然、青森の話でなくたまたま名前が被っているのみで、正直全然関係がない。気分の話である。
奥羽本線では猛烈に眠く、水に溺れるように寝、一瞬起きてはまた寝ていた。
2つの駅はほとんどくっついているが、JRは「大鰐温泉駅」、弘南鉄道は「大鰐駅」である。JRで降りて、温泉と昼食をとったら弘南鉄道に乗る。
鰐come(日帰り温泉)
大鰐温泉駅から歩いてすぐ、道の駅的な施設「鰐come」がある。地元の野菜や加工品が買えるので、海苔など軽めのものを購入した。本当はリンゴジュースやジャムも欲しかったけど重いので我慢。
温泉は一般で一人500円と、スーパーじゃない銭湯料金でありがたい。せっかくなので「大鰐もやし」の絵が描いてあるタオルを購入した。お湯は透明でやわらかくて気持ちが良い。下の写真は公式サイトより、冬の写真だけど雪もよさそう。私が入った日はそれほど暑くなくて、露天風呂のベンチで風に吹かれるのが心地良かった。
風呂から上がると、カフェスペース+座敷といった形でレストランが営業していた。名産の大鰐もやしが入っている冷やし中華を食べた。銭湯のご飯なので大きな期待をしていなかったが、思っていた以上に冷やし中華自体がおいしい。めあての大鰐もやしも良かった。普通のゆでもやしは匂いがあったり、水っぽかったりすることが多いが、大鰐もやしは白くて長くて艶々で、細くシャキシャキとした歯ごたえと、瑞々しい味がした。すてきな、すがすがしい野菜を食べたな、と思う。
食後、ジェラートも売っていたので追加で食べることにした。ジェラートの盛り付けを待つ私の横で、小さい子供が親御さんにジェラートをねだっていた。結局その子は買ってもらえず、私のジェラートを見つめていたので、若干気まずかった。そそくさと離れて食べることにした。味はミルクとりんご、さっぱりとソルベぽくて美味しかった。満足したので、少し早いが大鰐駅に向かう。
弘南鉄道 大鰐線で大鰐駅→中央弘前駅へ
さすがに「大鰐通り」は見当たらなかった。道々にある大体のものが日に焼けていた。地図でみると温泉宿は他にもあったが、いわゆる「温泉街」のようではなく、町にぽつぽつと宿があるようだった。川が近くにあるので、雪の時期は景色が良いと思う。
大鰐駅の入り口を見逃してしまい、少し迷った。喫茶店の抜け殻を横道にはいって少し歩くと大鰐鉄道職員の駐車場があり、その横に駐車場そっくりの駅の入り口があった。
南口より、いくらか今っぽい北口の駅舎。事前の調べでは北口に自動券売機(そばやの券売機のような機械)があったが、土日は販売していなかった。どうすればよいのか迷ったが、閉まっている受付の窓枠に「無札乗車証明書」なるものがあり、これをもって乗車して降車駅で清算するようだ。
弘南鉄道では、2024年7月1日~8月31日まで「金魚ねぶた列車」で運行していて、社内がかわいらしく装飾されていた。夜間はねぶたが光るそうで、見てみたかったが、昼でも十分素敵だ。停車中も天井の扇風機が動いていたので、金魚は泳ぐように揺れていた。早めについたためしばらく私一人で、端まで歩いて楽しんだ。
9月1日~11月30日には「りんごねぶた列車」もやっているそうなので、それも是非見てみたい。雪の時期やリンゴが赤くなる時期もきれいだと思う。
とりあえず記念に大鰐通りと撮っておいた。
発車時刻が近づくと、人が増えてきた。1列に2~3人座る具合になる。
大鰐線は大鰐駅から中央弘前駅を結ぶ14駅で、通して乗ると35分くらいだった。車窓からは田んぼ、川と、徐々にリンゴ畑が見えた。窓が開いているので、風が入って気持ちが良かった。電車は左右にゆったりと揺れて、ドンブラコッコという感じ、乗り心地ものどかな印象である。リンゴ畑の実はまだ緑色で、夏草のにおいとともに吹き込んでくる風はこの時期ならではの爽やかさだろう。
まだまだ乗っていたかったが、すぐに終点についてしまった。改札に駅員さんが立っていて、無札乗車証明書を渡して現金精算をして出る。中央弘前駅は大きく、表からはリンゴの絵が描いてあるので、ぱっと見は青果市場に見えた。大鰐駅と違って、JRからの距離は遠い。
大阪屋で「竹流し」を買いたい
買いたいのである。
竹流しは生姜風味の薄〜いお菓子で、以前SNSで見かけて是非食べてみたいと思った。売っているのは大阪屋さん、中央弘前から徒歩12分程度の所にある。
こんにちは、と声をかけると奥から人が来て接客してくれた。店員さんの背後には、びっしりと螺鈿細工が施された箪笥が置いてあった。下の画像にあるリンクから見られるのでぜひ見てほしい。
肝心の竹流しは売り切れていた。
これを目当てに弘前に来て、他に用事はなかった。残念だが、他の何かを買って帰ろう。「チョコレート羊羹」が珍しいのと、「錦玉羹」は梔子の実を使った夏のお菓子、という事で買って帰ることにした。なんだか、普通の羊羹よりずっしり重たい。
さて、帰りはJR弘前駅から新幹線に乗る。3日分の荷物、お土産、ずっしり羊羹を携えて、弘前駅まで30分以上歩く必要があった。私は暑くないように電車の旅に出たはずなのに、大鰐でさっぱりしたのに、もうべっとりだ。しかし、帰りの新幹線はグランクラスを予約したので遅れるわけにはいかない。
Google mapで予測された33分ぴったりで駅に着いた。
弘前駅は新幹線が止まる大きい駅で、市場のような中央弘前とは違った。軽食が出るというグランクラスに期待は膨らんでいたが、すでに大鰐線のゆらゆらとした乗り心地が恋しいと思ってしまう。ねぶたは、大鰐駅ではジャパニーズホラーの様子を呈していたが、弘前駅では淡く光ってかわいらしい。
グランクラス!
駅構内の出店で、のしたスルメイカを2匹買い、ホームに向かった。
グランクラスは一番後ろの車両で、全18席。アテンダントの人がついてくれて、軽食や飲み物のサービスを提供してくれる。結構いいお値段がするのだが、体験してみたかった。
座席は片側2列、片側1列で、前の人が座席を倒しても後ろの座席に影響しないつくりになっていて、気を使わなくてよい。席の上部にハッチつきの荷物棚(旅客機と同じ感じ)があって、照明は暖色系、全体に木目調とアイボリーでまとめた色合いだった。座席のリクライニングはボタンが多くて面白かった。これをたくさん調整して、サイコーの座り心地にするってことらしい。
席に着いてまもなく、アテンダントの方が袋をくれた。水とサラミとメニュー表だ。軽食は洋食・和食のどちらかから選んで、飲み物はいつでも好きなものを頼めるとのこと。接客が丁寧でとても感じがよく、それだけで気分が良かった。
和食と、飲み物は白ワインを頼んだ。お盆が滑りにくくなっているので安心であった。オレンジの縞々の一品が、マンゴーチーズを寄せたもので美味しかった。また、芋茎(ずいき)については初めて食べた。金瓶梅という漫画で出てきたことがあって、内容的に「これが….」と思うものだったが、シャクシャクとした食感で美味しかった。
ワインは小さいけど酔ってしまったので、ハーブティーを頼んでおかわりした。香りが強くて美味しい!ケーキも忘れずオーダーした。
帰りは一時台風の影響があるエリアだったのか雨が降っていた。少し寝て、起きた時には晴れていたが田んぼの景色は消えて、月が昇っていた。
結局、台風には追いつかれず無事に旅行を終えることができた。帰ってきたら、また東北に行きたくなっている。私は旅した場所に帰りたくなり、何度も同じ場所に行ってしまう。雪の青森もまた見たい。とりあえず、10月にはまた岩手に行こうと思う。
おわり