人生ってそんなもの、深夜食堂。のんびり見聞録 - 6
このシリーズは、イントロの音楽が好きなんです。絶対にスキップしたくないイントロって、あまり出会わないのですが、これは大好きです。
もともとはアイルランドのバラードだったのだとか。
イントロで映される東京の明るい夜の風景を見ながら聞くと、心がキュッとします。
このシリーズを知ったのは数か月前のことで、『孤独のグルメ』で食べ物にまつわるショートドラマが気に入った夫のリクエストで、2人で見始めました。いくつかシーズンがあるようです。
どのエピソードも、だいたい「人生っていろいろあるよね」という風に終わるので、ポジティブでもネガティブでもない、ドイツ語で言うと「So ist halt das Leben」、日本語ではおおよそ「人生ってそういうものか」といったような感想をもって、毎回しみじみした気持ちでテレビを消します。
他人の人生を覗き見て、だから勇気がもらえるとか、そういうのじゃないんですよね。人の数だけ、人生があるのだから、わたしはわたしの人生を歩むし、わたし以外のみんなもそれぞれの道を生きている。だから、干渉しすぎてほしくないし、他人の人生に土足で踏み入るようなことはしたくない。それでも、関わり合いたいと思う存在が少しでもいるなら、それは美しい。そういう曖昧な気持ちで、毎エピソードを鑑賞しています。
わたしは「自己責任」とか「自業自得」という言葉があまり好きではありません。だって、自分ではどうしようもないことは起こり得るじゃないですか。
こういう言葉が使われるのは、その人が何かに苦しんでいたり悩んでいたりするときです。全く自分に非がなかったとしても、おそらく本人は「あのときああしていれば」「自分がもっとああだったら」と思っているのです。そして、そのことをいちいち他人に話すかどうかは当事者が決めることですから、第三者には見えない面ばかりです。
たしかに、寒いのに薄着で過ごして風邪を引いたら、「自業自得だよ」と言いたくなる気持ちは分かります。十分に準備をせずに試験を受けて、あまり納得のいく点数が取れずに落ち込んでいる人がいれば「きみの責任だろ」と言いたくなります。でも、こういう言葉は、少なくとも友だちや家族など、大切にしたい存在に投げかける言葉ではないと思っています。
「自己責任」だとか「自業自得」というとき、その人は「自分はすべてを知った気になって、他者をジャッジ」しているんです。
よほどの信頼関係があるとか、教育の場であれば、ジャッジをしてあげることが必要になる場面もあるとは思いますが、一般的な人間関係で「他人を裁く」ことは、あまり良い結果をもたらさないはずです。
深夜食堂を見ていると、噂好きの人や思い込みが激しい人、(一般的に)道徳的に良くないとされている人など、いろいろと口を出したくなる人が出てくるのですが、食堂の大将は、どんな人であっても、他人の人生に土足で踏み込まないし、他人の選択を裁かないのです。
大将のそういう態度が、安心してこのドラマを見られる理由なのだと思います。