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人蟲(改訂版)

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陰陽師中津川シリーズとして2012年に執筆。 そもそもは江戸時代と現代を行き来しながらストーリーが進む展開だったが、改定版では現代編だけにフォーカスして改訂を行う。
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記事一覧

人蟲(改訂版4)

人蟲(改訂版4)

中津川家の朝は早い。

執事のオバラは庭の手入れを済ませ、朝食の準備に取り掛かっている。

麹町にある広大な中津川家の邸宅には、オバラの他に数人の使用人がいるが、庭の手入れと朝食の支度だけは他の者にさせることなくオバラが自ら行なっている。

執事だ、使用人だと時代錯誤のようだが、この広い中津川家の邸宅だけは時代が昭和初期から止まっているようだ。それはこの中津川家の特殊な事情による。

中津川家は平

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人蟲(改訂版3)

人蟲(改訂版3)

「駅はすぐそこですから行きましょう。」

「彼女」はそう言って伊一郎を促した。

伊一郎は「彼女」の勢いに押される形で、激しい雨の中、「彼女」と相合傘で駅に向かって歩き出した。

「彼女」はまるで恋人のように身体を伊一郎に寄せてくる。女物の傘だ。長身の伊一郎とふたりで入るにはこうでもしないときつい。
身長差があるため「彼女」は軽く背伸びしながらそのか細い腕を一生懸命伸ばしている。
その

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小説 人蟲(改訂版)2

小説 人蟲(改訂版)2

左門町にかかった辺りだった。

真っ黒な雨雲から水滴が一粒ふた粒落ちてきたと思うと瞬く間に豪雨となった。

いわゆるゲリラ豪雨というやつである。

ここ数年、日本の気候は熱帯雨林にでもなったかのごとく常識外れの豪雨をもたらす。異常気象なのだが、慣れとは恐ろしいもので10年に一度の豪雨が二度も三度もおとずれると最近では誰もそのことを普通のこととして受け入れてしまう。

「間に合わなかったか。。」

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人蟲(改訂版)1

人蟲(改訂版)1

2012年9月。

この年はひときわ残暑が厳しい秋であった。

アスファルトから照り返す地熱は、湿気と熱気を伴い、立っているだけでも全身から汗が吹き出す。

民谷伊一郎は流れ出る汗を何度もハンカチで拭った。

「雨降りそうだな…。」

伊一郎は空を見上げて小さく呟いた。

天気予報では夕刻から雨の予報が出ていた。

午前中の晴天に気を許して折りたたみ傘を持ってくるのを忘れてしまっていたことを今更な

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人蟲(改訂版)プロローグ

人蟲(改訂版)プロローグ

2012年7月。

四ツ谷左門町の古いアパートの一室で白骨遺体が見つかった。

死後、数年を経過していたものと見られ、遺留品も少なく身元不明。

検死結果から、20代の女性と判明、死因は不明。

事件性はないとみられる。