我が家にぬかどこが届きました。
七夕の日。
あいにくの雨。
夜にはやんだものの、空は厚い雲に覆われたまま。
私には見えないけど、この雲の上にあるはずの天の川で、
ひこぼしとおりひめが、楽しいひと時を過ごせていますように。
なんて、しおらしいことを思っていると、宅急便が届いた。
友人からの荷物である。
なんやろう。
誕生日でもないし、なにかのお祝い事もないし。
包装紙を開けると熨斗があり、「暑中お見舞い」とあった。
そういえば、昨年、夏バテがひどく、それなのに、クーラーも苦手で、
あとは、熱中症になって新聞に載るだけなんて状態になっていた私。
主治医にも、看護師さんにも叱られてた。
カルテにも、
家でクーラーを使っていない
と、入力されていた。
そういえば、
美容院の私のカルテに、ものすごく大きい文字で、
マッサージが好き♡
と書かれていたのを思い出す。
ちょっとちがうけど。
それを覚えていてくれたのか、ここのところ、ちょっとくさっていた私を見かねたのか、とにかく私を心配して贈り物をしてくれたらしい。
心配をかけんとこうって思ってるのに、
ぽろぽろと愚痴を言ってしまってるのかもしれないなあ。
いかんいかん。
そんな鬱陶しいことをしてるようでは。
と、反省をしつつ、「暑中お見舞い」の品を開けていく。
ぷ~ん。
包装紙からは、ちょっと懐かしい香りが。
香りというよりは、匂いがする。
すっぱいような。
くさいような。
でも、不快じゃない。
さらに、ばりばり開けていくと、中から、ケースに入ったぬか床が出てきた。
ぬか床の中には、すでに、ナスとキュウリとニンジンが漬かっている。
有名老舗漬物店のお品だ。
老舗漬物店も、こんな糠漬けキットを販売してるんやなあ。
ぬか床か・・・。
子どもの頃は、母親がつけた糠漬けが、当たり前に食卓に並んでいた。
ぬかみそをかき混ぜたり、塩をもみこんだ野菜をぬかの中に漬けこんだり、食べる直前に取り出したり、そんな作業を見ているのが好きだった。
ぬかを洗い落とした漬物を切りながら、母は必ず一口ぱくっと食べていた。
私にもちょうだい!
と言うと、塩分採りすぎになるからあかん!!って言われたもんやった。
見てるだけじゃなく、もちろん、食べるのも好きだった。
漬かりすぎたものは苦手だったけど、母がそれを好んで食べていた。
父は、母に小言を言われながらも、糠漬けにさらにお醤油をどぼどぼにかけて食べていた。
すごい勢いでご飯を食べていたから、美味しかったんやろう。
結婚して家を出ると、お漬物はもう買うものとなってしまった。
しかも、必需品ではないので、めったに買わなくなり、
食べることがめっきり減ってしまった。
二人の妹は、それぞれ、家を出る時に、実家のぬか床を分けてもらったらしい。
いくら美味しいからと言っても、あのかきまぜる手間を思うと、私にはそんな発想はなかった。
えらいなあ~。
と、私とはちがって食べることを大切にしている妹たちに、感心するだけの私。
そんな私に、ぬか床が届いた。
果たして、できるのか?
説明書を読んでみると、ケースもこじんまりとしているので、それほど手間ではなさそう。
そういえば、実家の漬物樽は、ものすごく大きかった。
直径30センチ、深さ40センチくらいやったかなあ。
腕を思いっきりつっこんで、かき混ぜている母の姿が思い出される。
ふむふむ。
アボカドや、チーズも美味しいらしい。
キャベツもいけるのか。
パプリカも。
へ~~。
ズッキーニやトマトもokなんか。
はいからはいから。
やっぱり、キュウリは欠かせないよなあ。
なんだか、やる気になってきた。
ぬか床が水っぽくなってきた時のために、取り換え用のぬかも入っている。
いたせりつくせりである。
さすが老舗漬物店。
これで、やらんと、どうするねんといった状況である。
さて、まずは買い物に出陣。
アボカドと、チーズは必須やな。
チーズは、プロセスチーズってやつやろうなあ。
カマンベールでもいいんかなあ。
なんか、こんな私の姿を、友達は想像してたんやろうか。
きっと、漬物を送ってくれただけでなく、生活の中の楽しいことを送ってくれたんやな。
ほんま、ありがとう。