![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/122484559/rectangle_large_type_2_e54d986cc760304e6e222a3df4e5dbee.jpeg?width=1200)
【家庭で出来る簡単科学実験🎵】100均アイテムで「無線電信機」を作る!
この記事では、100円ショップのアイテムだけで行える「家庭で出来る簡単科学実験」を取り上げます。
今回は、「コヒーラ無線電信機」を作りモールス信号で通信実験を行います。
★YouTubeで本テーマの実験動画を上げています。
ぜひご覧になってください↓↓
はじめに…
Wi-Fi、Bluetooth、プラチナバンド…
現代の生活には、電波は欠かせないものとなりました。
その電波を人類が利用し始めたのは今から約130年ほど前になります。
当時は有線式の電信が普及した頃であり、電磁気学は目覚ましい発展を遂げつつありました。イギリスのマクスウェルさん(1831-1879)はアンペールの法則及びファラデーの法則から、電波(電磁波)の存在を予言します。
![](https://assets.st-note.com/img/1700729300303-qAR9R2GS5M.jpg?width=1200)
その電波(電磁波)の存在を実験で証明したのが、ドイツのヘルツさん(1857-1894)です。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/122485147/picture_pc_630f32e74ba5ea1b005ad94c6f316ddc.gif?width=1200)
火花放電により電波を発生させ、ループコイルで受信
※電気の歴史 イラスト館より引用
ヘルツさんは電気による火花放電を生じさせると近くのループ状のリングに小さな隙間からも火花が生じることを確認し、これにより「火花放電による電気的な振動が空間を伝わってループ状のリングに到達した」ことが科学的に実証され、電波(電磁波)の存在が証明されました。(この功績から周波数を表す単位はヘルツ:Hzが使われています。)
余談ですが、甥のカール・ヘルツさんは医用超音波検査(エコー)の生みの親であり、超音波検査士の私は親しみを感じます(勝手に)
ヘルツさんの実験より電波の存在は確認されましたが、ループ状のリングによる受信距離は実験室内の域を出ることはなく、人類が電波を利用するには感度の良い受信機の開発が必要でした。
同時期、フランスのブランリーさん(1844-1940)は金属粉末の電気抵抗を調べている最中、近くで電気火花が生じると金属粉末の電気抵抗が急激に下がることを発見しこれを電波の検出器(検波器)に応用できるのではないかと考え、「ラジオコンダクタ」と名付けました。(この「radio」はお馴染みのラジオの語源です)
この現象は当時、金属粉末同士が電波により「cohere:密着」することで生じると考えられていたため、コヒーラとも呼ばれるようになりました。
![](https://assets.st-note.com/img/1700729608799-8Lpg4hau0r.jpg?width=1200)
※TDK社より引用
そのコヒーラを電波の検出器として改良、応用したのが、イギリスのロッジさん(1851-1940)です。これにより電波の検出感度は飛躍的に向上し無線通信の可能性が出てきましたが、コヒーラ検波器は一旦電波を受信すると通電したままであり、そのままでは通信に使うことはできませんでした。
そんな中、ロシアのホポフさん(1859-1906)とイタリアのマルコーニさん(1874-1937)はロッジさんのコヒーラ検波器を電磁石の回路に組み込み、ベルのように叩かせることによって通電状態のコヒーラ検波器を再びリセットする「デコヒーラ機構」を考案、電波を利用した実用的な無線通信の道が開けます。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/122485421/picture_pc_662bd8e306c601928870bf6ac20039ea.gif)
※電気の歴史 イラスト館より引用
その後、デコヒーラ機構を搭載した受信機は日本海軍にも導入され、1905年の日本海海戦では「三六式無線電信機」の活用によって勝利することになります。電波の利用は遂に戦局をも左右することになりました。
一方マルコーニさんは1901年、大西洋横断無線通信を成功させノーベル物理学賞を受賞しています。
マルコーニさんは無線の商業化に成功し、「タイタニック」にも彼の開発した無線電信機が搭載されていました。船舶無線の重要性が認識されたのもこの時期です。
以後数年の間に「鉱石検波器(ダイオード)」や「真空管」が発明され、無線電信にしか使用できず特性不安定なコヒーラ検波器は急速に取って代わられます。
以上、コヒーラ検波器の歴史でした。
本実験は、100円ショップのアイテムのみを使って初期の無線技術である「コヒーラ検波器」と「火花送信機」を制作し、実際にモールス符号を送受信します!
【材料】
・電子ライター(長いタイプ)
・カードスタンド
・スマホ充電ケーブル(電子工作用のリード線があれば不要)
・調味料ケース(フタ付き、小型のもの)
・防犯ブザー(ライト付き)
・食品保存タッパー
合計¥660です✨
※その他必要品(家にあるもの)
・アルミホイル
・接着剤
・両面テープ
・グリップ
・輪ゴム
【制作】(※詳細は動画をご参照ください)
1 送信機の製作
(1) 電子ライターを分解し、圧電素子だけの状態にして再びカバーを戻します。
![](https://assets.st-note.com/img/1700729829421-4LGRa3cE7N.jpg?width=1200)
(2) 1円玉を複数用意し、隙間1㎜程度の火花間隙を作製します。
![](https://assets.st-note.com/img/1700729883750-1I8MLXC7Tn.jpg?width=1200)
(3) 火花間隙をカードスタンドに挟み込み、電子ライター側の配線と接続しアンテナを取り付けます。
![](https://assets.st-note.com/img/1700729940455-1bk17R1t1a.jpg?width=1200)
圧電素子、火花間隙、アンテナより構成される
2 受信機の作製
(1) 防犯ブザーのカバーをあけ、電池のマイナス側にリード線を取り付けます。
![](https://assets.st-note.com/img/1700730065076-ipoMak6aA0.jpg?width=1200)
(2) 調味料容器にアルミホイルで電極を作り、アルミホイルを丸めた玉を15~20個ほど入れてコヒーラ検波器を作ります。これが電波を感知します。
![](https://assets.st-note.com/img/1700730146234-XBQiSL753N.jpg?width=1200)
電波を受信する主要部品となる
(3) コヒーラ検波器に防犯ブザーのリード線を取り付け(回路に組み込む)、コヒーラの下にスピーカーを取り付けます。(デコヒーラ機構)
![](https://assets.st-note.com/img/1700730235431-El9LasQUZe.jpg?width=1200)
リセットする「デコヒーラ機構」
(4) タッパーに固定し、アンテナを取り付けます。
![](https://assets.st-note.com/img/1700730333904-vPTmP70UCu.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1700730428809-2TsNh2h1Bj.jpg?width=1200)
製作費用は¥660
【動作原理】
①ライターの圧電素子により電気火花が生じ、発生した電波はアンテナを介して空中に発射されます。
②電波は受信側のアンテナで電流に変換され、コヒーラ検波器に伝わります。
③アンテナからの電流によりコヒーラ検波器のアルミホイル玉の酸化皮膜が破壊され、抵抗値が下がり防犯ブザーの回路が通電、LEDが光ると同時に防犯ブザーのスピーカーによりコヒーラ検波器が機械的な振動を受け「デコヒーラ」しリセットされます。
※電波が到来している間は①~③を繰り返すことでモールス信号の「・」と「ー」を区別します。(今回は送信機に圧電素子を使用しており、連続火花の発生はできない関係性1回の放電で「・」2回続けての放電で「ー」としました)
部屋の端から端まで(約10m)は難なく通信できます。
かつてマルコーニさんがノーベル物理学賞を受賞した研究内容ですが、身近な材料で簡単にできますのでどうぞご家庭で実験していただき、無線の原理を体感してください。
【追記】
家中では広さの問題で最大通信距離が確認できませんでしたが、広さのある施設内にて再度実験したところ最大通信距離はおおよそ50mでした。アンテナを伸ばし適切な接地をすれば(送受信機ともにモノポールアンテナのため)通信距離を飛躍的に伸ばすことも可能と考えますが、屋外へ電波が漏れることを防ぐためここまでとします。)
手作りでも、意外と広範囲で通信可能なことが分かりました。